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68 探索

 レオナルドはベッドからシーツを一枚抜き取ると、床に横たわるエリシアの上に被せた。


 ビアンカは胸の前で指を組むと目を閉じてエリシアに向かって祈りを捧げる。


「ビアンカ嬢。あなたに不幸をもたらしたエリシアに祈りを捧げる事はありませんよ」


 アベラルド王太子がやんわりとビアンカを嗜めるが、ビアンカは軽く首を横に振る。


「確かにこの方に呪われたせいで、私や母も祖父もそして父達までもが不幸な目に遭いました。けれど、亡くなられた方の冥福を祈らないわけにはまいりません」


 ビアンカのきっぱりとした物言いにアベラルド王太子も納得したように頷いた。


「そうですね。死者の霊は弔わなくてはなりません」


 アベラルド王太子とレオナルドもエリシアの遺体に向かって祈りを捧げた。


 それからニコラスを探すべく、部屋を出て、先ずは隣の部屋から見て行く事にした。


 隣の部屋は執務室らしく机と椅子が並べられ、筆記用具や書類等が机の上に置いてある。


「ここにはいないみたいだな。他の部屋も見てみよう」


 それから他の部屋も見て回るが、ニコラスどころか使用人すら見当たらない。


「これだけの大きな屋敷に使用人すらいないなんて…。すべて解雇されてしまったのか?」


 一階にある部屋をすべて見終わったところでアベラルド王太子が独り言ちると、レオナルドの横にスッと影が降りた。


「レオナルド様。地下に続く階段を見つけました。それから使用人達は全員、向こうにある使用人棟に閉じ込められているようです」


「わかった。ご苦労」 


 レオナルドが頷くと影はまた音もなく消えて行く。


 ビアンカは影が現れたり消えたりする度に、驚いて声を上げそうになるのを抑えるのがやっとだった。


「アベラルド様。お聞きになったとおりです。どちらから先に行きますか?」


 アベラルド王太子は少しばかり逡巡したが、「地下に向かう」と告げた。


 影から場所を聞いたレオナルドが先頭に立って進んで行った先は最初に入った執務室だった。


「ここに地下への階段があるのか?」


 アベラルド王太子が疑問に思っていると、レオナルドは壁に設えてある本棚に近寄った。


 そこにある大きな本を抜くと、ボタンが現れた。


 レオナルドがそのボタンを押すと、横の本棚が回転してぽっかりと地下へ向かう階段が現れた。


「まさか、こんな仕掛けがあるとは…。もしかしたら王宮にも何か仕掛けがあるかもしれないな」


 どことなくワクワクしたようなアベラルド王太子の言葉にビアンカはちょっと笑みを浮かべる。


 それに気付いたアベラルド王太子は、わざと軽く咳払いをする。


「失礼。レオナルド、先に行ってくれ」


 レオナルドはおどけたように肩を竦めると、先に地下へと続く階段を降りていく。


 二人で並ぶのがやっとくらいの幅の階段をビアンカはアベラルド王太子に手を引かれながら降りて行った。


 所々に小さな明かりが灯るだけの薄暗い中を降りて行くと長い通路へと変わった。


 それを更に進むと壁に突き当たり、二手に分かれている。


「どちらも突き当たりを曲がるようになっていますね。どちらから行きますか?」


 レオナルドが左右を見回した後、アベラルド王太子に尋ねた。


「地図も何もないからな。この先、また分岐点がないとも限らない。とりあえずここに印を付けておこう」


 アベラルド王太子に言われてレオナルドは懐からナイフを取り出すと壁に傷を付ける。


「これで良いですか? では、次に参りましょう」


 レオナルドはナイフを仕舞うとアベラルド王太子の指示に従い、左へと足を進める。


 すぐに行き止まり、そこを右に折れて進んで行くと突き当たりに扉が見えた。


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