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67 決着

 エリシアの右手に青白い光の玉が光る。


 それを振り下ろすよりも先にレオナルドが飛び出し、懐に隠していたナイフをエリシアの胸に突き立てた。


「ガハッ!」


 エリシアは自分の胸に突き立てられたナイフに目を見開いている。


「…あ、…あと少し… …だったのに…」


 コポリと口から血を垂らして、エリシアはその場に崩れ落ちた。


 エリシアの胸にはナイフが突き刺さったままになっている。


 レオナルドは手についたエリシアの血を魔法で洗い流すとアベラルド王太子を振り返った。


「すみません、アベラルド様。急所を外すつもりだったのですが…」 


 エリシアの目は徐々に光を失っていき、やがて何も映さなくなった。


「仕方がない。王族に手を出した時点で処刑されるのはわかりきっているんだ。それがほんの少し早くなっただけの事だ」


 アベラルド王太子は後ろに庇ったビアンカを振り返る。


「ビアンカ嬢、お怪我はありませんか? まさかエリシアが攻撃魔法を使って来るとは思ってもみませんでした。そうとわかっていれば、ビアンカ嬢をここには連れてこなかったのに…」


「私は大丈夫です。それに私がここに来なかったらエリシアは直接出向いて来たかもしれません。何しろ私の命を奪う事を目的にしていたようですから…」


 ビアンカは倒れているエリシアに目をやった。


 結婚して子供が出来ない事を悩んでいる時に突然、他の女に産ませた子供を育てろと言われたエリシアがどんな思いを抱いていたか。


 ビアンカはそれを想像すると、エリシアに同情してしまう。


 だからといって他人の命を奪っていいわけでは無い。


 エリシアに呪われなければ父親であるダリオも、もっと違う形でクリスティナとビアンカに接してくれたのではないだろうか?


 そう考えるとビアンカはたまらなく悲しくなってくるのだった。


「アベラルド様、ちょっと」


 ベッドに寝ている人物を覗き込んでいたレオナルドが、アベラルド王太子を呼んだ。


 アベラルド王太子とビアンカがレオナルドの元に近付くと、ベッドには腐敗した死体があった。


「これは、エリシアの夫のセシリオか? 随分と前に亡くなっていたみたいだな。そういえば、クリスティナの兄はどうしたんだろう? 先ほどのエリシアの話には出てこなかったが?」 


(確かにお母様より三歳上のニコラスと言っていたわね。『死んだ』とも『殺した』とも言わなかったわ)


 レオナルドがエリシアの亡骸を見おろしながら考え込む。


「確かに『女は殺した』とは言っていましたが、息子の話は出ませんでしたね。もしかしたら、この屋敷の中の何処かにいるんじゃないですか?」


「この女の態度からみると、何かしらの危害を加えていそうだな。セシリオが生きている間は手を出さなかったにしても、亡くなった途端、何かしたのかもしれない。この遺体の腐敗具合からすると、かなり時間が経っていそうだな。早く見つけ出せないと手遅れになる場合もありそうだ」


 探すにしてもこの広い屋敷の中を三人で探すのは時間がかかりそうだ。


 隠し部屋などがあったりした場合、見つけ出せないかもしれない。


 するとレオナルドが何もない空間に向かって「おい、いるか?」と声をかけた。


 すると、スッと黒い影がレオナルドの前に現れた。


 突然の事にビアンカは声も出せずに驚く。


(だ、誰?)


 ビアンカの驚きを感じ取ったらしく、アベラルド王太子がそっとビアンカの耳元で囁く。


「あれはファリノス公爵家で使っている影です。彼にこの屋敷の捜索を手伝わせるんでしょう」


 そうこうしているうちにレオナルドが命令を伝えたらしく、影はスッと音もなく消えた。


「アベラルド様。僕達も屋敷の中を探しましょう」


 そう言いながらレオナルドはエリシアの胸に刺さっているナイフに手を伸ばす。


「これはもう、抜いても大丈夫ですね」


 レオナルドはエリシアの身体からナイフを引き抜くと、見開いたままの瞼を閉じさせた。


 

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