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65 バルデス侯家家

 バルデス侯爵家に向かう馬車の中、ビアンカはアベラルド王太子とレオナルドと共に馬車に揺られていた。


 王妃との面会の後、アベラルド王太子にマドリガル伯爵家まで送ってもらった。


 屋敷に戻ってハンナにバルデス侯爵の事を聞いてみたが、めぼしい情報は得られなかった。


「奥様はバルデス侯爵家との交流がない事には何もおっしゃられませんでした」


 マルセロならば何か知っていたかもしれないが、彼は既にビアンカの祖父と母親を毒殺した罪で処刑されている。


 それに王妃が言っていたようにここ最近、登城していないと言う事が気にかかる。


 馬車はやがて王都の郊外にあるバルデス侯爵家の屋敷へと辿り着いた。


 あらかじめ、バルデス侯爵家には本日訪問すると伝えてあるのだが、それに関しては何の返事も返って来なかった。


(返事もないのに訪問しても良かったのかしら?) 


 ビアンカは躊躇ったが、アベラルド王太子とレオナルドにはスケジュールが詰まっているので仕方がない。


(あらかじめ伝えてあるのだから、返事を出さない方が悪いのよ)


 ビアンカは自分にそう言い聞かせる事で無理矢理納得させた。


 レオナルドは書類を見ながら眉間にしわを寄せている。


「う~ん。前侯爵がビアンカ嬢のお祖父様に当たる方ですよね。体調を崩したとかで代替わりされたとあるんですが、それがご子息ではなくて奥様、つまりビアンカ嬢のお祖母様に爵位が譲られているんですよね。一体どうなっているんだか…」


 バルデス侯爵家の門は固く閉ざされていて門番すらいない。


「参ったな。どうやって中に入るんだ?」


 アベラルド王太子がそう呟いた途端、ギギッと音がして門が内側へと開いていく。


 馬車はその中に吸い込まれるように進んで行き、玄関のアプローチの前で停まった。


「先に降りて見てきます」


 レオナルドが馬車から降り立ち、玄関の扉に近付くと、カチャリと扉が中に開く。


 だが、誰も出てくる気配はない。


「人が近付いたら開くような魔導具でも使っているのか?」


 アベラルド王太子はそう呟くが、そんな魔導具が開発されたとは聞いた事もない。


「誰かが魔法を使って開けているのではありませんか?」


 ビアンカの言葉にアベラルド王太子は「う~ん」と考え込む。


 そのうちにレオナルドが戻って来た。


「とりあえず危険はないようですが、どうされますか?」


「ここまで来たんだ。中に入ってみよう」


 アベラルド王太子に手を取られ、ビアンカは馬車から降りた。


 開かれた玄関から中に入ると、妙に薄暗い玄関ホールが続いている。


 中に入ったものの、この先どちらへ向かえばいいのかわからない。


 三人が玄関ホールに入ると、バタンと玄関の扉が閉まった。


「レオナルド、どうして扉を閉めるんだ?」


「いや、僕は扉に触ってもいませんよ」


 アベラルド王太子とビアンカの後ろに立っていたレオナルドが両手を挙げて首を横に振る。


「まさか、閉じ込められたわけじゃないよな?」


 アベラルド王太子の呟きにビアンカはフルリと身体を震わせる。


 そんなビアンカを安心させるようにアベラルド王太子はビアンカの身体を抱き寄せる。


「大丈夫です。何があっても僕がビアンカ嬢を守ります」


 アベラルド王太子の頼もしい言葉にビアンカが頬を染めていると、その後ろでレオナルドが小声でボヤく。


「ちぇっ! 両思いになった途端、見せつけやがって! 僕だってクラウディア様と一緒に来たかったのに…」


 クラウディアはあのパーティーの翌日、レオナルドとの結婚話を進めるために自国へと戻って行った。


 元々王位継承権の低い第二王女であるため、すんなり話は通るだろう。


 レオナルドが目の前の二人のいちゃつきをボヤいていると、前方の廊下にポッと明かりが灯った。


「どうやらこちらに来いと言っているみたいだな」


 三人はゆっくりとその廊下を進んで行った。

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