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61 会話

 クラウディアに引っ張られて行くビアンカを皆がチラチラと視線を走らせては小声で囁きあっている。


 クラウディアは誰もいないホールの片隅に到着すると、ようやく足を止めた。


 そこには休憩用に椅子とテーブルがセッティングしてある。


「どうぞ、おかけになって」


 クラウディアはビアンカに椅子を勧めながら、自分も腰を下ろした。


 ビアンカが椅子に座るとクラウディアは何処からか盗聴防止の魔導具を取り出してテーブルの上に置いた。


 手のひらにすっぽりと収まるくらいの大きさで、どうやらクラウディアのドレスのポケットに入っていたようだ。


 あまりの小ささにビアンカは目を丸くしていたが、クラウディアはそれに気付かず魔導具のボタンを押した。


「これで誰にも話を聞かれる心配はないわ」


 そう言いながらもクラウディアは扇を取り出すと、人々の視線から口元を隠した。


(盗聴防止の魔導具があっても更に唇の動きを読まれないようにするなんて…。ここまで危機管理が徹底しているなんて流石だわ)


 ビアンカが感心しているとクラウディアが口を開く。


「あなた、レオナルド様とはどういったご関係なのかしら?」


 いきなりクラウディアからレオナルドの名前が出てきてビアンカは「え?」と目を瞬いた。


「だって、あなたがあの男性に絡まれた途端、レオナルド様はわたくしを置いてあなたの方に向かったのよ。おまけにあなたのドレスの汚れを魔法で綺麗にしてあげるなんて…。それにあなたのドレスの色はレオナルド様の髪と瞳の色ではなくて? まさか、レオナルド様に贈って頂いたドレスなの!?」


 クラウディアにまくし立てられ、ビアンカは啞然としたまま言葉が出て来ない。


 レオナルドがビアンカの元に来たのはアベラルド王太子の後を追っての事だと思うし、ドレスの色に関してはアベラルド王太子の髪と瞳の色も一緒だ。


 そもそも金髪に青い瞳など他にも大勢いるのに、どうしてそこでレオナルドの名前が出てくるのだろう。


 ドレスの汚れを落としてくれたのだって、ビアンカがアベラルド王太子のパートナーだからに決まっている。


 そう考えたところで、クラウディアは後から会場に入って来たから、ビアンカがアベラルド王太子と一緒にいた所を見ていないのだと気付いた。


「あの、クラウディア様。私は今日はアベラルド様のパートナーとしてこのパーティーに参加しています。それにドレスの色にしてもアベラルド様や他の方にもこの色の組み合わせの方はいらっしゃいますよ」


 これで納得してもらえるかわからないまま、ビアンカは必死でクラウディアに説明をする。


「え? あなたがアベラルド様のパートナーだったの? それでわたくしの所にレオナルド様がいらしたのね。わたくしはてっきりレオナルド様がご自分の意志でわたくしのパートナーをしてくださったのかと思っていましたのに…」


 最後の方は消え入りそうな声になり、なんだか落ち込んでいるようなクラウディアの様子にビアンカはどう声をかけていいのかわからない。


 しばらく顔をうつむかせていたクラウディアだったが、突然何かを思い立ったかのように立ち上がった。


「わかりました。ここでウジウジしているのはわたくしらしくありませんわ! ここですっぱりと覚悟を決めますわ! あなた、わたくしに付いていらっしゃい!」


 クラウディアは盗聴防止の魔導具のボタンを押すとさっとドレスのポケットにしまい、再びビアンカの手を取った。


 クラウディアにまたもや引っ張られる形でビアンカは立ち上がる。


 先ほどと同じように衆人の目に晒されながら、クラウディアとビアンカはアベラルド王太子とレオナルドの元へと戻る。


 アベラルド王太子とレオナルドは相変わらず令嬢達に囲まれていたが、彼女達はクラウディアが近付いて来たのを見てサッと脇に避けた。


 クラウディアはレオナルドの前に立つと高らかな声をあげる。


「レオナルド様、わたくしと結婚してくださいませ!」

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