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57 着替え

 ドレスも無事に出来上がり、ファレス商会からビアンカの元に届けられた。


「…本当にこれを私が着るのかしら?」


 ビアンカは自室の中でトルソーにかけられたドレスを眺めてはため息をつく。


「ビアンカ様、そう仰るのは何度目ですか?」

 

 ハンナが呆れたような顔でビアンカの髪を整えている。


 パーティー当日になり、朝早くから身支度を整えている。


 薄く化粧も施され、ドレスを着せられた。


 ブルーの生地に金色の糸で刺繍を施されたドレスは、シルバーブロンドの髪を持つビアンカによく映えた。


 先日購入したイヤリングとネックレスを付けようとした所で、部屋の扉がノックされた。


「あら? 誰かしら?」 


 メイドの一人が扉を開けてそこにいる人物と会話を交わした後、ビアンカの元にやって来た。


「ビアンカ様。エルネスト様がいらしておりますが入室を許可してもよろしいでしょうか?」


「ええ、入ってもらって大丈夫よ」


 ビアンカが許可を与えるとメイドはまた扉の方へとって返した。


 扉が大きく開かれ、エルネストが入室してくる。


「ビアンカ様、お支度中、申し訳ございません。先ほどアベラルド様からお使いが参りましてこちらを持ってきました」


 ビアンカの側にエルネストが近付いて来て箱を差し出してきた。


「まぁ、何かしら?」 


 そう言ってビアンカは箱を見てギョッとした。


 いかにも宝飾品が入っていると言わんばかりのベルベットで出来た箱がそこにあった。


 ビアンカはこわごわとその箱を受け取り、恐る恐る開いてみる。


 そこにはビアンカが購入したのよりも何倍も豪華なイヤリングとネックレスが光り輝いていた。


「本日のパーティーではこちらを付けて参加していただきたいそうです」


 エルネストにニコリと微笑まれ、ビアンカは「そ、そう…」と返すのが精一杯だった。


 確かにビアンカが購入した物よりも数倍も着ているドレスに似合っている。


(アベラルド様は私がどんなドレスを着るのかご存知だったのかしら?)


 そう考えた所でファレス商会が王族御用達の商会である事を思い出した。


(きっとドロレスさんから伝わっているのね。アベラルド様のパートナーとして参加するのだから当然なんだろうけれど…)


 だからといってこんな高価な宝飾品を身に付けるのは恐れ多い。


 そんなビアンカの胸中を意に介す事もなく、ハンナが弾んだ声をあげる。


「流石はアベラルド様ですね。ビアンカ様に似合う物をよくご存知ですわ」


 ハンナはビアンカから箱を受け取り、嬉々としてイヤリングとネックレスをビアンカに付けていく。


 少し派手過ぎるかと思われたイヤリングとネックレスだったが、こうしてドレスを着た上に付けてみると、まるで違和感がない。


 鏡に映った自分の姿を見ていたビアンカは、ふとネックレスの中央に使われている宝石に目をやった。


(これってアベラルド様の瞳の色みたいだわ)


 ネックレスの中央にはサファイアブルーが輝きを放っている。


(…まさか、ドレスの生地がブルーなのもアベラルド様の瞳の色に合わせてあるのかしら? 刺繍の糸が金色なのはアベラルド様の髪の色?) 


 今さらながら、ドレスの色の意味に気付いてビアンカは焦る。


 ブルーと言ってもそれほど濃い青ではなく、どちらかと言えば水色に近かったので今まで気づかなかったのだ。


 だが、今さらドレスの変更など出来るはずもなく、ビアンカにはどうしようもない。


(どちらにしてもアベラルド様のパートナーというだけで目立ってしまうのだから腹を括るしかないわね)


 イヤリングとネックレスを付け終わり、ハンナが最終チェックをする。


 そこへ再び扉がノックされ、エルネストの声が響いた。


「ビアンカ様、アベラルド様が到着されました」


「わかりました。すぐに向かいます」


 ハンナがビアンカの手を取って玄関口まで導いてくれる。


 ビアンカはそこに立っているアベラルド王太子の姿を見てピキリと固まった。


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