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56 仮縫い

 翌日からは伯爵家の現状を把握するべく、執務室へ向かった。


(お父様はどれほど伯爵家のお金を使い込んだのかしら? あれだけ贅沢三昧をしていれば、いつ破綻しても可笑しくないのではないかしら?) 


 ビアンカはそう危惧しながら、伯爵家の財産を管理してくれている会計士を呼んだ。


 会計士から帳簿を受け取り、説明を聞きながら確認したが、何も問題はないようだ。


 ホッと胸を撫で下ろしていると、ハンナがおずおずと切り出した。


「ビアンカ様。今まで飾られていた絵画や調度品はいかがいたしましょう? それとパメラ様達が置いていかれた荷物等もあるのですが…」 


 屋敷の者達にはダリオ達はただ単に出て行った、という事にしてある。


 もっともアベラルド王太子がマルセロを捕縛するのを手伝っているので、ダリオ達がどうなったのかは薄々感づいているだろう。


「そうね。売れる物は売ってお金に換えましょう。その中から屋敷の皆に金一封をあげなくてはね」


「まぁ! よろしいんですか?」 


 ハンナが嬉しそうな声をあげる。


「勿論よ。皆のおかげで屋敷の中も以前のままになったんだもの」


 すぐに買い取り業者を呼んで、不要な家具やドレス等を買い取って貰った。


 パメラとデボラが使っていた宝石は、宝飾店を呼んで買い取って貰い、代わりにビアンカが身に付けるネックレスとイヤリングを一点ずつ購入した。


「ビアンカ様、それだけでよろしいのですか?」


 見かねたハンナが「もう少し買われては?」と促すが、ビアンカは買おうとはしなかった。


「今度のパーティーのドレスも作るのだから、これ以上贅沢は出来ないわ」


 そう固辞するビアンカにハンナはポツリと零す。


「…まぁ、そのうちアベラルド様が嫌と言うほど宝石を贈られそうですけどね…」


「何か言ったかしら?」 


「いえ、何でもございません」


 ビアンカはちょっと首を傾げつつも、新しく首にかけたネックレスを鏡に映してご満悦だった。


 



 ドレスの注文から一週間がたち、仮縫いをしたいとファレス商会から連絡がきた。


 翌日、ドロレスが針子を連れてビアンカの元を訪ねてきた。


「ビアンカ様、お待たせ致しました。仮のドレスが出来ましたので試着をお願いいたします。ドレスの生地も試着用ですので、一段劣りますがご了承くださいませ」


 そう告げられて出されたドレスは試着用とは思えないほど、上質な生地だった。


(これが試着用? それならば実際のドレスはどれほど上等な生地なのかしら?)


 不安になったがアベラルド王太子のパートナーである以上、それなりの物でなくてはならないだろう。


(このドレス一枚で破産したりしないわよね…)


 一抹の不安を覚えつつも、なんとか仮縫いを終わらせた。


「お疲れ様でした。この次は実際の生地での仮縫いをいたします。準備が出来ましたらご連絡を差し上げますね」


「はい、よろしくお願いします」


 ドロレス達が帰っていくとビアンカはふうっとため息をついた。


(まさか、2回も仮縫いがあるなんて思わなかったわ)


 今まで作ってきたドレスは、一度目の仮縫いで実際に使う生地で作られていた。


 それなのに今回は仮のドレスで仮縫いをするなんて…。


 出来上がりが楽しみでもあるが、恐ろしくもある。


 だが、今さら辞めるとは言えるわけがない。


(仕方がないわ。アベラルド様のパートナーを引き受けたのは私だもの。もう腹をくくるしかないわね)


 それから一週間後。


 ビアンカはドロレスが持ってきたドレスの生地に目を見張った。


(こ、このようなドレスを私が着ていいの!?)


 生地の光沢も手触りも、今まで着たことのないくらい豪華なドレスが出来ていた。


(服に着せられているように見えないかしら?) 


 そう思いながらドレスに袖を通す。


「ビアンカ様、お似合いですわ」


「そ、そう?」


 ハンナに褒められ恐る恐る鏡を覗いたビアンカは、目を瞬いた。


「きれい…」


 デザイン画で見るよりも数倍、華やかな仕上がりになっている。


 着せられているような感じもなく、ビアンカにぴったりだった。


「それではこのまま仕上げに入りますね」


 ドレスをチェックしていたドロレスに微笑まれ、ビアンカはコクリと頷いた。


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