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49 面会依頼

 なかなか次の言葉が出て来ないアベラルド王太子にビアンカがじれてきた頃、ようやく声が発せられた。


「ビアンカ嬢はダリオの面会に行かれますか?」


 その言葉がビアンカの中の耳に届いた途端、ビアンカは大きく目を見開いてアベラルド王太子を見つめた。


 まさか、そんな事を問われるとは思っていなかったからだ。


「面会…ですか?」


「はい。どうされますか?」


 アベラルド王太子と会話をしながら、ビアンカはアベラルド王太子の背後に立つレオナルドの表情を見ていた。


 アベラルド王太子が「面会に…」と言った途端、何故か僅かに顔をしかめたからだ。


(変ね? レオナルド様はどうしてあんな顔をなさったのかしら? いえ、今はそれよりもお父様と面会するかどうかよね)


 処刑が決まったとなれば、生きているダリオに、会えるのは恐らくこれが最後だろう。


 しばらく考えたのち、ビアンカは重い口を開く。


「父と…面会したいと思います」


 ビアンカの返事にアベラルド王太子は大きく頷いた。


「わかりました。それでは面会出来るように手配してきましょう」


 立ち上がるアベラルド王太子の後ろでレオナルドが口をはくはくと開け閉めしているが、アベラルド王太子はそちらには見向きもしない。


「それでは準備が出来ましたらお迎えに上がります。それまでこちらでゆっくりなさってください」


「わかりました。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします」


 ビアンカも立ち上がってアベラルド王太子に頭を下げる。


 ビアンカが頭を上げるとアベラルド王太子は軽く手を上げて部屋を出て行った。


 扉がバタンと閉まるとビアンカはドサリとソファーに腰を下ろした。


(お父様と最後の面会ね。何を言えば良いのかしら?)


 会うと決めはしたものの、この先処刑されるとわかっている父親になんと声をかければいいのだろうか?


 ビアンカは悩みながら再びアベラルド王太子が訪ねてくる時を待った。




 ー ー ー ー ー



 部屋を出てしばらく歩いた所でレオナルドは盛大なため息をついた。


「はあぁ! まったく何をやってるんだよ! ビアンカ嬢に想いを告げるんじゃ無かったのか?」


 それには仏頂面でアベラルド王太子も応戦する。


「うるさい! 今はそれよりもダリオと会わせる方が先だ! 多分これが最後になるだろうからな」


 ダリオは逮捕されると同時に処刑される事が決定した。


 ダリオが殺したのは伯爵家当主と次期当主の母親という貴族だったからだ。


 ダリオは既に伯爵家から除籍された平民だったので、貴族を殺した平民として処刑されるのだ。


 もし、ダリオが除籍されておらず貴族という身分を持っていたら、マドリガル伯爵家はお取り潰しになっていただろう。


 もっとも、ダリオが貴族であったなら、こんな事件は起こらなかったかもしれないが…。


 アベラルド王太子はそんな事を考えながら自分の執務室に向かった。


 執務室に入るなり、一直線に机に向かうと面会依頼の書類を作成する。


「いつもそれくらい早く仕事を進めればいいのに…」 


 レオナルドの嫌味を無視してアベラルド王太子は書類を書き上げた。


「無駄口を叩いていないでさっさとこれを届けてくれ。お前が返事をもらってきたらすぐにビアンカ嬢の所に向かうからな」


「かしこまりました、アベラルド様」


 レオナルドは書類を受け取って一礼すると執務室を出て行った。


 レオナルドを見送るとアベラルド王太子はドサリと椅子の背もたれに寄りかかる。


「面会が終わったら、その後は…」


 ポツリと呟きながら、アベラルド王太子はビアンカにどう伝えるべきか考えを巡らせるのだった。


 

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