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48 アベラルドからの報告

 昨日、アベラルド王太子が訪ねて来なかった事で、ビアンカは未だこの離宮に滞在している。


(いつまでもこの離宮に滞在させてもらうわけにもいかないけれど、お父様達の事はどうなったのかしら? 伯爵家に戻るにしても、お父様達の事が片付いていなければ、私には行く宛がないわ…)


 イリスに頼んでアベラルド王太子に連絡を取ってもらおうかと考えていた矢先、ようやくアベラルド王太子がビアンカの所にやって来た。


「ビアンカ嬢、昨日はこちらに来られずに申し訳ありません」


 アベラルド王太子は部屋に入るなり、ビアンカに頭を下げた。


「まあ、アベラルド様。頭を上げてくださいませ。ご公務でお忙しい中、私の家の問題まで押し付けてしまって…。謝らなければいけないのは私の方ですのに…」


 ビアンカは弾かれたように立ち上がったものの、アベラルド王太子の元に近寄るべきかどうか迷っている。


 それを見かねたレオナルドが、アベラルド王太子を促してビアンカの前に座らせる。


 ビアンカの前に腰を下ろしたアベラルド王太子は、真っ直ぐにビアンカを見つめる。


 ビアンカもそんなアベラルド王太子の態度にただならぬものを感じたのか、不安そうな視線を寄越す。


「ビアンカ嬢。あなたの父親であるダリオは前伯爵とあなたの母親を毒殺した罪で逮捕しました。実際に毒を入れたのは執事であるマルセロでしたが、こちらも既に逮捕しています」


「えっ? マルセロが…?」


 アベラルド王太子の報告はビアンカにとっては衝撃的だったようだ。


「マルセロは賭け事でこしらえた借金を返済するために、ダリオに協力したと言っています。残念ながら二人は殺人の罪で処刑される事が決定しました」


 一気に告げるアベラルド王太子にビアンカはガクリと項垂れた。


 信頼していた執事が加担していたのがショックだったのか、実の父親が祖父と母親を手にかけたのがショックだったのか…。


 どちらもだろうと、アベラルド王太子はビアンカに同情した。


「それと、パメラ達三人については強制労働所送りが確定しています」


「…そうですか」 


 ひと呼吸遅れてビアンカはようやく返事を絞り出す。


 ある程度覚悟していたと言え、一緒に生活していた人達が罪に問われるのは何とも言えない気持ちにさせられる。


「ビアンカ嬢、大丈夫ですか?」


 ビアンカが視線を落としていると、向かいに座るアベラルド王太子が心配そうな声で話しかけてくる。


「大丈夫です。それよりも、家の事が片付いたのであれば、いつまでも私がここにいてはいけませんね」


 この離宮にいつまでも滞在していてはアベラルド王太子の負担になると分かっていても、いざ出ていくとなると去り難くなる。


「ビアンカ嬢、マルセロが逮捕された以上、マドリガル伯爵家の使用人を取り仕切る人物が必要でしょう。差し支えなければ、私の方から誰か人を寄越しましょうか?」


「よろしいんですか?」 


 アベラルド王太子の申し出はビアンカにとっては渡りに船だった。


 ダリオ達が居なくなった以上、ビアンカに対して悪意を持って接する事はないにしても、やはり誰か使用人をまとめてくれる人物が必要だ。


 アベラルド王太子もそう思うからこそ、ビアンカにそう申し出てくれたのだろう。


「構いませんよ」


「ありがとうございます。それでは早速伯爵家に戻る準備をいたしますね」


 ここを去り難いと思う気持ちに蓋をして、ビアンカはすぐにここを辞する事を告げる。


 そうでなければいつまでもアベラルド王太子の好意に甘えてしまうからだ。


「ビアンカ嬢、あの…」 


 アベラルド王太子はそう切り出したものの、そこから先を言い淀んでいる。


 ビアンカは首を傾げつつも、アベラルド王太子の次の言葉を待った。

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