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47 最後通告

 バシッ、という鋭い音にアベラルド王太子とレオナルドは反射的に背筋を伸ばす。


 アレクサンドラは扇を広げると優雅な動きで口元を隠し、ホホホと笑う。


 その扇が少し曲がっているように見えるのは、先ほどテーブルに打ち付けたせいだろうか?

 

「何を譲り合っているのです? 心配せずとも二人から話を聞くまでは解放しませんから安心なさい」


(そう言われて安心する人などいないと思うのですが…) 


 アベラルド王太子とレオナルドは心の中で反論するが、勿論口に出したりはしない。


 諦めてアベラルド王太子は重い口を開く。


「結婚したいと思う女性はおりますが、まだ伝えてはおりません。少々込み入った事情がありまして、それが解決次第、話をしたいと思っています」


「それは、現在離宮に滞在しているご令嬢の事かしら?」


 直球で母親に指摘されてアベラルド王太子はウッと言葉に詰まる。


 王宮内の管理状況については父親である国王の元に報告が行くのだから、王妃である母親が知っているのも当然だ。


「…はい」


 おずおずと返事をしたが、アレクサンドラはそれ以上は何も言わなかった。


『何処の誰で、いつまで滞在させるのか』などと根掘り葉掘り聞かれるかと身構えていたアベラルド王太子だったが、あっさりとした母親の態度にホッと胸を撫で下ろす。


 アベラルド王太子とアレクサンドラの会話が終わったと判断したカサンドラが、レオナルドに向かって問う。


「では、レオナルド。あなたはどうなのかしら」 


 カサンドラの冷えた声に問われていないはずのアベラルド王太子までもが、背筋に冷たい物が走るのを感じていた。


「僕も想いを伝えたい女性はいます」


 レオナルドの発言に隣に座るアベラルド王太子も弾かれたようにレオナルドを見つめる。


「レオナルド、いつの間に…?」


 アベラルド王太子の呟きにレオナルドは真っ直ぐ前を向いたまま、答えようとしない。


「そう。二人とも想いを寄せる女性がいるのは分かりました。けれど、まだ婚約者に確定したわけではありませんね? それならば、来月、伯爵家以上の子女を集めてパーティーを開催いたします。そこで新たな出会いを見つけるのも良し、その女性と親睦を深めるのも良し。よろしいですね」


 突然のパーティー開催宣言に、アベラルド王太子は慌てる。


 参加者が伯爵家以上の子女と言うことは、現在離宮に滞在しているのがマドリガル伯爵家の娘だとしっているのだろう。


 慌てるアベラルド王太子にアレクサンドラは更に言い放つ。


「このパーティーにはデラトルレ王国のクラウディア様も招待いたします」


「え!?」


 アレクサンドラの宣言に真っ先に反応したのはレオナルドだった。


「どうした、レオナルド?」


 アベラルド王太子だけでなく、アレクサンドラとカサンドラも目をパチクリとさせてレオナルドを見ている。


「失礼いたしました。お話を続けてください」


 レオナルドが居住まいを正すと、アレクサンドラは何事もなかったかのように話を続ける。


「クラウディア様には既に参加するとのお返事をいただいております。アベラルドにレオナルド。このパーティーで婚約者を見つけられなければ、こちらで指名した令嬢と婚約をさせます。よろしいですね?」


 有無を言わさぬアレクサンドラの圧力にアベラルド王太子とレオナルドは黙って首を縦に振るしかなかった。


 ようやく母親達から解放されたアベラルド王太子とレオナルドは、部屋の外に出るなり盛大なため息をついた。


「はあぁ。まさか母上があそこまで言うとは…」


 力無く壁に寄りかかるアベラルド王太子にレオナルドが更に追い討ちをかける。


「お前がさっさと婚約者を決めないから、俺にまで飛び火したじゃないか」


「何を言ってる。お前が先に婚約者を決めていたら、こちらまで言われる事は無かったたはずだぞ?」


 不毛な言い争いに発展しかけたが、二人は扉の前に立っている護衛騎士の視線を受けて、そそくさとその場を立ち去った。


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