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45 お茶会

 王妃アレクサンドラは焦っていた。


(まったくもう! アベラルドはいつになったら婚約者候補を連れてくるのかしら?)


 アレクサンドラが今の国王であるセシリオと出会ったのは、貴族子女の交流会が最初だった。


 その時はまだお互いに幼く、顔見知り程度の付き合いに留まっていた。


 その後、学校に入学して交流を深めていくうちに、恋仲へと発展していった。


 アレクサンドラの家は侯爵家だったので、特に反対される事もなくセシリオの婚約者となった。


 婚約者に内定するとすぐに王太子妃教育が始まり、終わると同時に結婚式を挙げた。


 いや、正確には結婚式の日取りが先に決まり、それに合わせて王太子妃教育のスケジュールが組まれたのだ。


 元々、高位貴族としての教育を受けていたため、さほど苦労する事はなかったが、それでもなかなかに大変だった。


(アベラルドも早く婚約者を決めないといけない歳になっているのに、未だに誰とも付き合っていないなんて…) 


 アベラルドには『自分で相手を見つけて来い』とは伝えてある。


 条件はただ一つ。


『王妃に相応しいと思われる令嬢』


 そんな漠然とした条件で婚約者を探さなくてはいけないのだ。


 学生の間に相手を見つけてくるかと思えば、そんな気配もなく卒業してしまった。


 その後も一向に積極的に相手を探そうとしない。


 業を煮やしたアレクサンドラは隣国デラトルレ王国の王女であるクラウディアを代表とした使節団と交流を持たせたが、それすらも空振りに終わったようだ。


(このままじゃいけないわね。どうにかしなくちゃ…)


 アレクサンドラはセシリオの妹であり、友人でもあるカサンドラを王宮に招いた。


「アレクサンドラ様。この度はご招待いただきありがとうございます」 


 深々とお辞儀をするカサンドラを向かいの席に座らせて、アレクサンドラは盗聴防止の魔導具を起動させた。


「急に呼び出したりしてどうしたの?」


 魔導具を起動させた途端、カサンドラの口調が砕けたものになる。


 元々王女でこの王宮に住んでいたのだから、そんなにかしこまる事でもないのだが、やはりけじめというものは必要だ。


「ごめんなさいね。アベラルドがいつまでも婚約者を連れて来ないから、どうしたら良いかと思って…」


 アレクサンドラがそう切り出すと、カサンドラは盛大なため息をついた。


「そんなの私が聞きたいわよ。うちのレオナルドだって、未だに浮いた話の一つもないんだもの。こんな事ならさっさとこちらで見繕って婚約させれば良かったかしら?」


「そうは言ってもね。親が決めた婚約者を蔑ろにして『真実の愛を見つけた』とか言って婚約破棄されたらと思うと、自分で探すのが一番かなって思うのよ」


 貴族の中には家どうしの結びつきを図るため、幼い頃から婚約者を決めている人もいる。


 大概は大人しくそれに従うのだが、中には反発する者も少なくない。


「確かにね。マドリガル家のダリオ様もそう言って家を出たと聞いたわね。結局、戻って来てバルデス伯爵家のクリスティナ様と結婚したらしいけれど…」 


「もう一度、クラウディア様とアベラルドを会わせてみようかしら? 前回は使節団として来られたけれど、普通に賓客としてお招きしたら、アベラルドも少しは意識してくれるんじゃないかと思うのよ」


「クラウディア様だけだと、アベラルド様は警戒するんじゃない? うちのレオナルドや他のご子息やご令嬢を招いてパーティーを開いたら、他にも何組かまとまるかもしれないわよ」


「…とか言って。本当はレオナルドにも早く婚約者を決めてもらいたいんでしょ?」


 アレクサンドラの指摘にカサンドラは答えず肩をすくめてみせた。


 その後、二人ともこらえきれずに笑い出す。


「決まりね。早速クラウディア様に招待状を送るわ。それと伯爵家以上のご子息とご令嬢にも招待状を出すように伝えましょう」


「これで決まってくれればいいわね」


「本当に…」 


 二人は揃って深いため息をついたのだった。

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