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31 依頼

 ビアンカがイリスに連れられて部屋に下がると、アベラルド王太子はレオナルドに向き合った。


「ビアンカの祖父と母親はやはり殺されたと見るべきかな?」


「そう考えるのが妥当だろうね。いくら体調を崩していたと言っても、同じ日に亡くなるなんて出来過ぎだからな」


 確かにレオナルドの言うとおりだとアベラルド王太子は思案する。


 二人が同時に亡くなれば、世間からあらぬ憶測を生むとは考えなかったのだろうか?


 だが、実際には多少不審がる人達がいたものの、結局大した騒ぎにはならなかった。


 それはひとえに誰もが、ダリオが次期伯爵当主だと思い込んでいたからだ。


 いずれ転がり込んでくる当主の座を得るために、実の父親を殺すなど愚かな事をするはずがないと誰もが考えていた。


 だが、実際はビアンカが次期当主となっていた。


 それを知ったダリオがどう動くかは、察して余りある。


 おそらくビアンカの祖父は次期伯爵当主がビアンカだと公表する前に殺されたのだろう。


「ダリオ殿は別邸で生活していたんだろう? だとすると、祖父と母親に毒を盛ったのはおそらく別の人間だろう。可能性が高いのはビアンカ嬢達の近くにいた使用人だろうね。それじゃ、レオナルド。マドリガル伯爵家の使用人について調べてくれ」


 アベラルド王太子はニコリと笑ってレオナルドに命じると、レオナルドは露骨に嫌な顔をする。


「うへぇ、やっぱりかよ」


「仕方がないだろう。表立って私が動くわけにはいかないからね」


 レオナルドは肩を竦めると立ち上がってアベラルド王太子に向かってお辞儀をする。


「承知いたしました。それでは早速行ってまいります」  


「ああ、頼んだよ」 


 レオナルドはアベラルド王太子に見送られながら部屋を出ると、キョロキョロと辺りを見回して誰もいないのを確認した。


「おい」


 低く声をかけると、何処からともなくスッと黒い影がレオナルドの前に現れる。


「聞いていただろう? マドリガル伯爵家の使用人について調べてくれ」


 黒装束に身を包んだ男は短く「はっ」と了承すると、すぐに姿を消した。


 レオナルドはそれを見送ると、法務局の事務室へと向かった。


(こっちでも何かないか探ってみよう。ネタは多ければ多いほど、追い詰めやすくなるからな)


 レオナルドは現在は法務局の事務官をしているが、ファリノス公爵家の嫡男である。


 母親は現国王の妹で、アベラルド王太子とは従兄弟同士である。


 母親同士が元々友人だったため、幼い頃から交流があり、兄弟のように育った。


 また、勉強や剣術においても良きライバルとして切磋琢磨してきたのだ。


 王族と公爵という身分でありながら、アベラルド王太子もレオナルドも、特に婚約者を決められる事はなかった。


『自分の嫁くらい自分で探せ。ただし、相応しくないと判断したら嫁とは認めない。それでもその人物と添い遂げたいならば、家を出て行け』 


 好きでもない娘を押し付けられずに良かったと思う反面、お眼鏡に適う娘を見つけられなかった場合は家を追い出されるというわけだ。


『まったく、私達の親は甘いのか厳しいのかよく分からないな』


『相思相愛になっても認められなければ、家を追い出されるって、跡継ぎはどうするんだよ』


 そう愚痴っていたアベラルド王太子とレオナルドだった。


 婚約者が決まっていないため、二人に言い寄ってくる令嬢は山程いたが、そういう令嬢は片っ端から嫁候補から除外していた。


 そんなアベラルド王太子が唯一、学校で気にかけていたのがビアンカだった。


 だが、既にビアンカには婚約者が決まっていて、アベラルド王太子は声をかける事もなく学校を卒業した。


 そんなビアンカが今、婚約者がいない状態でアベラルド王太子の前に現れたのだ。


(アベラルドの為にも何とかビアンカ嬢の問題を解決してやらないとな)


 レオナルドは固く決意すると、足取りも早く執務室に向かった。

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