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28 報告

 ビアンカが連れて行かれた先は、ゆったりとしたソファーが置いてある応接室だった。


 ビアンカがソファーに腰を下ろすと、その向かい側にアベラルド王太子とレオナルドが並んで座る。


 ワゴンを押してきたメイドがそれぞれの前にカップを置くと、少し離れた場所に待機した。


 メイドが離れたのを確認したアベラルド王太子はテーブルの上に小さな箱のような物を置いた。


「これは盗聴防止の機械です。あまり他人に聞かれたくはないでしょうからね」


 どうやらビアンカの事を気遣って盗聴防止の機械を置いてくれたようだ。


(…確かに、強制労働所に送られる途中で行方不明になったとか、保護された先の孤児院院長に人身売買のオークションにかけられたとか、おおっぴらに話す事ではないわね) 


 そう考えたビアンカはアベラルド王太子にコクリと頷き返す。


 アベラルド王太子はレオナルドから渡された書類に軽く目を通すと、おもむろに口を開いた。


「まずは先ほどのメイドの件を謝罪させてください。ビアンカ嬢、申し訳ありませんでした」


 アベラルド王太子に頭を下げられて、ビアンカは焦る。


 既にイリスから謝罪されているので、ビアンカにとっては終わった話だ。


「アベラルド様、既にイリスさんから謝罪をいただきました。ガブリエラさんが私を襲ってくるなんて誰にも予測がつかなかったのですから、ただのアクシデントです」


 ビアンカの必死の声にアベラルド王太子はようやく頭を上げる。


「たとえアクシデントでも、王宮で雇っている人物が起こした事ですから、謝罪するのは当然の事です。ビアンカ嬢を困らせたいわけではありませんので、この話はここで終わりにしましょう」


 アベラルド王太子が居住まいを正したので、ビアンカもビシッと背筋を伸ばした。


「まだ、調査中ではありますが、とりあえずわかっている事を報告しますね。まず、あそこでオークションにかけられた人達は全員保護いたしました。その中にはビアンカ嬢と同じ孤児院にいたモニカさんも含まれます」


 モニカが保護されたと聞いてビアンカはホッと胸を撫で下ろした。


 オークションにかけられていた人々は、皆何処かに連れて行かれてしまっていた。


 モニカも買い手が決まると何処かに連れて行かれたので、もう会えないと諦めていたのだ。


「彼等はそれぞれ話を聞いてから、元いた場所へ送り届ける事になっています。ビアンカ嬢がいた孤児院は院長のロサリオも逮捕されました。したがって孤児院には捜査員が派遣されます。今いる子供達に関しては、世話をしてくれる者を手配します。このような事件が明るみに出た事で、今後孤児院は国で管理するように提案するつもりです」


 どの街にも孤児院はあるが、そのほとんどは個人が経営していた。


 中には町ぐるみで経営している場所もあるらしいが、それでも負担は相当なものだろう。


 運営にお金がかかるから人身売買をしていたのか、ただ単に金儲けの為だけだったのかは分からないが、今後は身売りされる子供が出ない事を願うばかりだ。


「そうですか。ありがとうございます。ロサリオ院長の事はともかく、孤児院の子供達の行き場がなくならないのは良かったです」


 ロサリオ院長が逮捕された事で、あの孤児院が無くなってしまうかもと心配していたが、そうはならないと知ってビアンカはホッとした。


「まだ、取り調べが始まったばかりで、いつから始まったのか、黒幕がいるとしたら誰なのかはわかっていません。けれど、それよりもビアンカ嬢の事件について話をしましょう」


 アベラルド王太子に改まった口調で継げられ、ビアンカはドキリとする。


 馬車の中でレオナルドに『証拠を探せ』と命令していたけれど、何か見つかったのだろうか?


 ビアンカはドキドキしながらアベラルド王太子の言葉を待った。

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