表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/72

21 オークション

 ビアンカが孤児院に来てから二週間が過ぎた。


 その日もいつものように子供達に勉強を教えて、昼食を終えた時だった。


 後片付けをしていると、ロサリオ院長に呼ばれた。


「カリナとモニカ。ちょっと私と一緒に来てもらえないか」


「はい」 


「わかりました」


 ロサリオ院長に用事を言いつけられるのは、時々あったのでビアンカは特に何も思わなかったが、モニカと一緒なのは始めてだった。


 後片付けを別の女の子に任せて、ビアンカとモニカはロサリオ院長の所へ行く。


「出かける用事が出来てね。二人にもついてきてもらいたいんだ」


 ビアンカとモニカはそのままロサリオ院長の後をついて、孤児院の外に出た。


 門の所に馬車が待っていた。


「さぁ、乗りなさい」


 ロサリオ院長に促されるまま、馬車に乗り込むと、そこには既に三人の男性が座っていた。


「…え?」


 ビアンカが馬車の入り口で固まっていると、手前にいた男性にぐいと腕を引っ張られて、別の男性との間に挟まれる形で座らされた。


 モニカもロサリオ院長に押し込められるように馬車に乗せられ、ビアンカの向かいに、ロサリオ院長ともう一人の男性に挟まれて座らせられる。


「あ、あの…。院長先生、これは?」


 ビアンカがロサリオ院長に説明を求めようとしたが、ロサリオ院長は今まで見せた事がないような黒い笑顔を向けた。


「これから、楽しい場所に出かけるんだよ」


(…楽しい場所って…。絶対にそんなはずはないわ。私とモニカを逃さないようにしているとしか思えないもの) 


 モニカも不安そうな表情でビアンカを見つめてくるが、ビアンカには何も言うべき言葉は無かった。


(私とモニカは一体何処へ連れて行かれるのかしら…)


 馬車は町中を走っているようだが、土地勘のないビアンカには何処に向かっているのかまったく分からなかった。


 やがて馬車は何処かの屋敷の門の中へと入って行った。


 馬車が止まると扉が開かれ、ロサリオ院長が最初に降りた。


 続いてモニカが隣の男性に腕を掴まれたまま、馬車から降ろされる。


「ほら、お前も降りるぞ」


 ビアンカも左右の男性に腕を取られて馬車を降ろされる。


 そのまま、男性達に引っ立てられるように玄関から屋敷の中へと連れ込めれた。


「ロサリオ院長、お待ちしてましたよ。これはこれは…。なかなかの上玉ですな」


 ロサリオ院長を出迎えた初老の男性が、好色そうな目をビアンカとモニカに向けてくる。


(誰、この人? もしかして私とモニカはこの人の所に売られたのかしら?)


 孤児院の院長にしてはやけに肥えていると思っていたけれど、こんな風に誰かに売り飛ばしていたからなのだと妙に納得した。


(まさか、私も売られるなんて…。だから手枷を付けられた私を助けてくれたんだわ…) 


 孤児院を経営しているから慈悲深い人物だと思っていたが、どうやら違ったようだ。


 ビアンカとモニカはそのまま屋敷の中を歩かされ、やがて一つの扉の前に着いた。


 開けられた扉の中を見てビアンカは唖然とした。


 広いホールの手前には幾つもの檻が並んでいて、その中に一人ずつ閉じ込められていた。


 入れられているのはどれも見目麗しい女の子と男の子がいた。


 檻には番号がつけられていて、手前の二つが空だった。


「さあ、お前達も入るんだ」


 ビアンカとモニカは抵抗も虚しく、別々の檻の中に入れられた。


「私達をどうするんですか?」


 ビアンカが目の前のロサリオ院長に手を伸ばそうとしたが、ロサリオ院長はひょいとその手を避けた。


「これからオークションが開かれるんだ。さて、お前達は一体いくらで売れるかな?」


 ロサリオ院長の言葉にビアンカは愕然とした。


 まさか、人身売買のオークションがあるなんて、にわかには信じられなかった。


 だが、実際にこうして檻に入れられている以上、嘘ではないのだろう。


 やがて、ホールの向こうに並べられたテーブルに仮面を着けた人々が着席し始めた。


 男性のみならず、女性までもいる。


 人々が着席し終わったのを見計らって、この屋敷の主人が声を張り上げた。


「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。お気に入りは見つかりましたかな? それではオークションを始めましょう。それでは、一番から」


 一番の檻に入れられている女の子が檻から出されたが、すぐに後ろ手に手枷を付けられていた。


 テーブルの前の中央に二人の男に挟まれて立たされる。


「では参りましょう。まずは一万ゼニーから」


 屋敷の主人に続いて、二万、三万…とせり上がっていく。


 このお金が本人の手に渡るのならまだしも、他の人の懐に入るのだ。


 だが、ビアンカにはどうする事も出来ない。


 オークションはどんどん進み、やがてビアンカの番になった。


 檻から出された瞬間、後ろ手に手枷が付けられる。


 たとえ振り切って逃げたとしても、走れないし、すぐに捕まるのがオチだ。


 売られた先でどうにか逃げる隙を探した方がいいだろうか?


 だが、大金をはたいて買うのだから、おいそれと逃げられないように閉じ込められるだろう。


 ビアンカはそのまま、中央に立たされ競りが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ