《21・ミラーマウンテンへ》 ~カイ~
「まず、宰相からの依頼内容だが…」
会話の内容を他の人に聞かれないよう、ギルドからリリィがよく利用しているという静かなカフェに移動し、リリィが『結界』を張った状態でシンが話し始めた。
「危険地帯に行って、陛下の病気を治す薬の材料となる植物を取ってきて欲しい…というものだ。カイとシノブは陛下がご病気というのは怪しいと言っているが、リリィ、どうだろうか?」
「真偽は不明ですが、実の娘であるリーザ姫ですら『陛下はご病気だから』と会わせてもらえないそうです。ただ、陛下も龍の侵攻に関わる様々な問題で心労が重なっておられることと思います…」
「リリィ。様子を、見る、術、は?」
「残念ながら、王城内では呪詛や暗示などにより陛下に害が及ぶのを防ぐため、防御以外の他者に作用する術は使用できないよう結界が張られています。またこの術は気付かれぬよう呪文を唱えて対象者に触れねばなりません」
「ダメ、か…」
「まぁ、その辺の確認は少なくとも今は難しいだろうな。次の目的地はここ『ミラーマウンテン』だ」
シンはテーブルに広げた地図を指差した。
メトロポリスキャッスルからはるか北、危険地帯の中にある。
「ミラーマウンテンまでの移動手段について提案があります。よろしいでしょうか」
リリィの言葉に、僕ら3人は頷く。
「馬車はサンポジションの町までは出ておりますが、その先にもディレイヒルという町があります。この町で馬を借りてディレイヒルまで行った方が早いと思われます。必要あらば馬の手配はこちらで致します。いかがでしょうか」
「私…生きた馬、乗った、こと、ない…」
「私の後ろで掴まってくださっていれば大丈夫ですよ。トライヴァル様には訊くまでもありませんね。カイ…あなたは馬には乗れますか?」
「はい、大丈夫です」
「リリィに任せる」
「では、そのように」
「ディレイヒルの町から目的地までは徒歩で…3、4時間ほどでしょうか」
「そうだな。邪魔が入らなければ、だが」
「シン。薬の、材料は、何?」
「山のてっぺん辺りに咲いている、ほのかに青白く光る花…だそうだ」
「『ミズシャクナゲ』ですね」
「リリィ、知ってるのか?」
「白魔法では多少の薬の知識も必要とします。この国ではあの辺りにしか自生しない貴重な植物です」
「根っこから掘って、土ごと鉢に入れて持って帰って欲しいそうだ…」
「ふむ…さすがにその辺りでは尻尾は出さないですね…」
「多少、真実、も、混ぜ、る。これ、詐術、の、基本」
「手厚い“おもてなし”の用意がされているだろう。みんなそのつもりでいてくれ」
翌朝。リリィが借りてきてくれた3頭の馬に(うち1頭にはリリィとシノブが一緒に)乗り、メトロポリスキャッスルを出発した。
海に面した東側の平原を馬で北上し、その日はディレイヒルで1泊。
馬は宿で預かってもらい、早朝から徒歩で平原をさらに進む。
「皆様。この先…、草が枯れている辺りからは危険地帯です」
「なんか…嫌な感じがするな」
「うん…澱、んで、る、感、じ」
「大地や空気も…龍たちの障気の影響を受けているようですね」
「私たちにも影響が及ばないよう、加護の術をかけておきます」
そして、危険地帯を進む。
途中何度か黒龍に遭遇し戦闘になったけど、午前中のうちにミラーマウンテンにたどり着けた。
しかし…。
ミラーマウンテンに入ってすぐ、僕らの前に立ち塞がった者たちがいた…。




