プロローグ 宇宙にて
町のサイレンの音が鳴り響く。
それと同時に地響きが絶え間なく聞こえてくる。
町は火に包まれ復興は不可能ではないかと思われるほどだ。
建物は崩壊、道路は陥没しており何をするにしても危険な状態だ。
そんななか袋小路に追い詰められた女性が1人、瓦礫の上に座り込んでいた。
その腹からは見えてはいけない臓器が見えており、頭からも血が流れている。
既に意識は遠のきかけており、目の前に何がいるかもぼやけてあまり見えていない。
「はぁ、はぁ、はぁ、ここまで…かな。フク、サチ幸せになるのよ…」
そこで女性の意識は途切れてしまった。
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「わぁーーー!姉ちゃん地球が見えるよ!!」
「少し落ち着きなさい。宇宙に来てるんだから見えるのは当たり前でしょ」
22世紀前半、技術力の発展によりAIの能力が向上、それにともない宇宙に関する情報が格段に進んでいた。
それまで行けなかった水星や金星など太陽系の惑星へ到達することができた。
そんななか一つのプロジェクトが打ち立てられた。
題して「チルドレンプロジェクト」
その名の通り子供を宇宙に連れていこうと言うプロジェクトだ。
そして2人の姉弟、フクとサチはそのプロジェクトに選ばれた初めて宇宙に行く中学生だった。
「姉ちゃんはテンション低いなぁ。」
「あんたがテンション高すぎるのよ…。」
2人が話していると奥からひょいと人が出てきた。
「サチのテンションの方が珍しいぞ、大人だって初めて宇宙に来たらフクみたいに大はしゃぎする人だっているぞ」
笑いながら2人に話しかけた
「平田さん!整備は終わったの?」
「うん、なんの問題もなかったぞ」
子どもが宇宙に行くとなる時の人選の問題となったのが誰が子どもを引率するのかということ。
そんなときに白羽の矢が立ったのがこの平田コウであった。
23歳という、若さにして圧倒的な技能と冷静さを持ちかねていたまさに天才と言える存在であった。
そんなコウは子どもとの触れ合い方も上手くこなしており、本当に23歳なのかと疑われるほどであった。
「フクあれが火星だぞ」
「あれが!?なんか地味じゃない?」
「地球と違って水や樹木が存在しないから見比べると劣って見えるよね。」
「あんた授業で習ってないの?」
「姉ちゃんはオレの成績を知ってて言ってるのかな〜?」
「はぁ、そうだったわね」
「まぁ勉強はこれからすればいいさ、そろそろ定期連絡の時間だから僕はまた奥に戻るけど仲良くしててね。」
「「はーい」」
「姉ちゃんはまだ本読んでんの?」
「あんたは暇じゃないの?窓の外を見たって何もないでしょう。」
「まあねー。」
「ちゃんと勉強しなさいね。」
サチが読んでいる本は大人の研究者でも理解し難い分厚い論文であった。
サチは中学3年生にして国内外の学者から一目置かれている存在である。
中学3年生とは思えないその頭脳で大学の研究室を借り、新しい技術を生み出した。
「へへへ、勉強かー」
対してフクは勉強はからっきしだが運動能力において非凡な才能を持っていた。
幼い頃から習っているサッカーでは決勝でハットトリックを決め優勝、またサッカーだけでなくありとあらゆる場面でその運動神経を惜しみなく発揮しており、高校からのスポーツ推薦の数は数えきれないほどに来ている。
「ここから帰ったらもう受験かー、ま、オレはサッカーで高校に行くけどねー」
「スポーツ推薦でもある程度の学力は必要だからね」
「え、まじ?」
「はぁしっかりしなさいよ」
「うん、まぁ頑張るよ…」
「ていうかさー「「聞こえますか!!こちら宇宙ステーション!応答してください!!大丈夫ですか!?」」
急に平田さんの大声が聞こえた。
おそるおそる奥に行くと平田さんが真剣な顔をして画面を操作していた。
「あのー大丈夫?」
「ん、あ、あぁ大丈夫だよ、すまない驚かせてしまったね、もう遅いから君たちはそろそろ寝なさい」
「は、はい」
「平田さん大丈夫かなー?」
「私たちに出来ることなんてないわよ、とにかく平田さんを信じるしかないわ」
「そうだね…」
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「くそどうなってやがる、、、こっちのシステムは平常だ、向こうに何かあったのか?」
画面と格闘しながらコウは真剣な面持ちをしていた。
「アイ、聞こえるか?」
「ハイ、聞コエテオリマス。」
「システムに異常発生、オートモードに移行せよ。問題の根幹を探してくれ。」
「了解、オートモード開始、システムノ異常ヲ検知シマス。」
「頼んだ。」
ため息をつきながら椅子にもたれかかる。
2人を起こすべきか悩みながらコーヒーをすする。
「問題ヲ発見。地球ノ通信機器ノ反応ナシ。恐ラク管制塔ノミデナク世界中デノ通信障害デアルト推測。」
「なるほどな…。今日は徹夜かね。」
1人ごとをつぶやき再び画面へと目線を戻した。
完全な処女作です。何かとおかしなところがあるかと思いますが温かい目で見守ってくださると助かります