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275話─記憶の刺客を打ち倒せ!

 新たに現れた巨大ドローンの奥から、またしても運搬用ドローンの群れが出現する。だが、その程度で挫けるアンネローゼたちではない。


「挟み撃ちか……フン、こんなシチュエーションなど飽きるほど体験してきたわ。今回は殲滅速度を優先させてもらう、オボロにローグ、貴君らは我輩に続け。ドローンどもを滅するぞ」


「御意。されど、あの敵をアンネローゼ殿たち二人に任せて大丈夫か?」


「問題ない、二人は強い。信じて背を預けるのが、今我らのすべきこと。さあ、行くぞ。遅れるな!」


「っつーわけで、そっちは任せたぜ!」


 兜に内蔵された小型ミサイルを起動させつつ、クラヴリンはオボロとローグを連れてドローンの群れに突撃していく。


 彼らが時間を稼いでいる間に、アンネローゼとレジェはアルギドゥスもどきと戦う。それぞれの得物、槍と斧が乱舞し敵を粉砕する。


「そりゃっ! 再生するそばから粉砕すれば、いつか追いつかなくなって死ぬっしょ! ウチってばマジてんさ~い! やばたんピーナッツ!」


「何度も言わせるな。お前たちでは私を倒せない。私はフィルの記憶から作られた存在……お前たちの攻撃は全て把握している。どれだけ攻撃しようが」


「っさいわね! さっきから何度も言われて聞き飽きたわよその台詞! 本当に死なないのか試してやるわ!」


 いい加減アルギドゥスもどきが鬱陶しくなってきたアンネローゼは、レジェの攻撃の隙をカバーするように槍を突き刺し敵を攻撃する。


 再生速度さえ上回ってしまえば、相手を倒すのは容易……そう考えていた。だが、アンネローゼとレジェの攻撃に合わせて相手は再生速度を上げてくる。


「ウッソ~、治るスピード上がってる~!?」


「これが、お前たちが私に勝てぬ理由だ。お前たちの攻撃を把握し、その威力に合わせて再生速度と精度を向上させる。そうすれば、敗北などないのだ」


 フィルから与えられた記憶によって作られたアルギドゥスもどきは、アンネローゼたちがどんな攻撃を行い、それによって何が起こるかを知っている。


 ゆえに、それぞれの攻撃に対応した速度に再生能力を調整することで勝つつもりなのだ。そんな相手に、アンネローゼは……。


「ふぅん……。なら、こっちにも考えがあるわ。流石のフィルくんでも……使われる頻度の少ない攻撃までは、細部まで覚えてないでしょ! 紫の薔薇よ、輝け! スプラッシュポイズン!」


「なっ……ぐうっ!」


 ローズガーディアンを掲げ、紫色の薔薇に込められた力を解き放つアンネローゼ。紫と白の薔薇は、それぞれ毒と浄化の力を持つため使いどころが難しい。


 これまでほとんど使用することがなかったため、開発者であるフィルもその効果を忘れているだろう……ならば、相手も同じはず。


 そう考えて放った猛毒の波が、アルギドゥスもどきに直撃する。レジェにも毒液がかかるが、頑強なマキーナフレームのおかげで全く効いていない。


「ぐうっ、なんだこれは……。身体が、思うように動かん……!」


「ふっ、やっぱりね。いくらフィルくんでも、ほとんど使ってない技まで覚えてる余裕なんてないもの。さあ、これで形勢ぎゃくて……あっつ!?」


「おー、わりぃわりぃ。そっちにレーザー行ったわ、当たっ……おぶっ!」


「っけんじゃないわよローグ! 肩に掠ったじゃないの!」


 毒液に浸食され、再生速度が著しく落ちるアルギドゥスもどき。ここが勝機だと、一転攻勢に出ようとするアンネローゼ。


 その時、背後からドローンの放ったレーザーが肩を擦る。ローグが止めきれず、攻撃を通してしまったようだ。


 ローグに盾をブン投げて制裁を下した後、アンネローゼは改めて相手への攻撃を行う。翼を広げ、加速しながら体当たりを叩き込む。


「食らいなさい! シャトルフープコンビネーション!」


「くっ、離せ!」


「やなこった! レジェ、スタンバイしてて! コイツの首を刎ねてやるわよ!」


「ら~じゃ!」


 久しぶりにラグナロクに頼らない戦法を用い、アルギドゥスに逆襲を開始するアンネローゼ。一方、ドローンを相手にしているクラヴリンたちも獅子奮迅の活躍を見せている。


「食らうがいい! ホーストランゾナス!」


「おお、すげぇ。兜の中からミサイルが出てきやがつた。お前どんな手品使ってんだ?」


「企業秘密、ということにしておこう。流石にドローン相手では、騎士道うんぬんとは言っていられん。今回は大盤振る舞いしてやろう!」


 ドローン相手なら騎士道精神を重んじる必要もないと、普段は封印している小型ミサイルをバカバカ撃ちまくるクラヴリン。仕組みの解明に興味津々なローグから距離を取りつつ、ドローンを破壊していく。


 そうして、敵の数も減り……残るは巨大な二脚型ドローンのみとなった。あと少しで決着がつく、と思っていたその時。


「こうなれば……最後の手段だ!」


「あ!? ちょっと、逃げんじゃないわよ!」


 このままでは敗北すると悟ったアルギドゥスもどきは、身体をブロックに分解してアンネローゼの攻撃から逃れた。


 そのままドローンの方に向かい、ブロックを融合させて自らをドローンと融合させる。そうして、一行を踏み潰そうと脚を振り上げる。


『このドローンと融合すれば、並大抵の攻撃では傷付かぬ! さあ、全員踏み潰し』


「九頭流剣技、参ノ型……地ずり昇竜斬!」


『なっ、脚が!?』


「舐めてくれるな、それがしたちはこれまで数多の修羅場を潜り抜けてきた。今更、たかがドローンなぞに苦戦すると思ったか!」


 そのまま脚を振り下ろし、クラヴリンを踏み潰そうとする……が、そうは問屋が下ろさなかった。オボロが反撃を放ち、ドローンの右脚を切り裂いたのだ。


「そういうこった、ミカボシとの戦いを生き延びた俺たちの力、見くびるなよ! 怪盗七ツ道具、NO.6! 魔砲銃ラガーダイン! こいつでもう片方の脚を吹っ飛ばしてやるぜ!」


『ぐっ、おのれ! ならば……脚をパージするのみ!』


 続いて、一丁の拳銃を呼び出したローグが追撃を叩き込む。凄まじい威力の弾丸が放たれ、無事だった左脚を破壊する。


 バランスを保てなくなりドローンが転倒しかける中で、アルギドゥスもどきは両脚を捨て空中にドローンを浮かべる。


『これで反撃の準備は出来た。後は……』


「させないっての! さっき逃げた分、ドギツいのブチかますから! 赤い薔薇よ、輝け! フラムシパルメテオ!」


『ぐっ!』


「ウチも続くよ~! ラグジュラリアット・ボンバー!」


 ローグへブン投げたローズガーディアンを手元に呼び戻し、赤い薔薇の力を使って全身に炎を纏うアンネローゼ。


 そのままドローンに体当たりを叩き込み、バランスを崩してダメージを与える。そこに、トドメを放つべくレジェが駆け出す。


「そ~りゃああああ!!」


『がはっ! 私が、負けるとは……。いいだろう、あくまで諦めぬというのならその目で直接見るがいい。今のフィルの姿を。そして……拒絶されるが、い……い……』


 レジェの必殺技を食らい、アルギドゥスもどきが憑依したドローンは真っ二つに両断される。こうなっては再生も出来ないようで、捨て台詞を残して墜落し……爆発した。


「上等よ、何がなんでもフィルくんのところに行くわ。拒絶されたっていい、無理矢理引きずってでも連れて帰るだけだから」


「……終わったな。だいぶ時間を使ってしまった、急ぐとしよう。またドローンが襲ってこないとも限らないからな」


「ええ、行きましょ!」


 アルギドゥスもどきとドローン軍団を下し、アンネローゼたちは倉庫魔界の最奥部へ進む。二時間後、ついに一行はゴッドランド・キーが保管されている倉庫にたどり着いた。


「ここだ、金庫を取り出したいが……パスワードが分からないことにはな……」


「なら、俺に任せろ。少しずつ浮かんできたぜ、オリジナルの記憶が。……一つ聞いとくが、間違えていい回数に制限はあるのか?」


「いや、特にはないが……」


「よっし、なら総当たりでパスワードを打ち込んでやる! どれがどの金庫のパスワードまでかは記憶があやふやなんでな、気合いと根性で探し出してやるぜ!」


 倉庫魔界に長時間滞在したことで、オリジナルの記憶をある程度受け継いだローグ。パスワードは分かったが、どれがどの金庫に対応するものかは残念ながらまだ不明瞭なようだ。


 とはいえ、そこまで記憶がハッキリするのを待つ時間は惜しい。そこで、総当たりで正しいパスワードを探すことに。


「そんじゃ行くぜ、必ず当たりを見つけてやる。怪盗の意地でな!」


 果たして、金庫を開けることは出来るのか。それとも……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 復活しても厭味ったらしい奴よ(ʘᗩʘ’) ガキが聞かん坊になったなら引きずってでも連れ戻すのも教育じゃい(⑉⊙ȏ⊙)
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