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24話─天空の根性合戦!

 一方、地上にて戦っているフィルはと言うと……。


「食らえ、マナリボルブ!」


「ぐああっ!」


「一人で戦うな! 全員で囲んで叩け!」


 カンパニー本社から派遣された軍団を相手に、単独で大立ち回りを繰り広げていた。数の差をものともせず、一気に十人単位の敵を薙ぎ払う。


 そこで、闇の眷属兵たちは十数人で束になり、フィルを取り囲む。今度こそ数の暴力で仕留められる、と思っていたが……。


「ムダなことです。武装展開、漆黒(シュヴァルツ)の刃(シュヴェルト):チェインソーサー!」


「な、なんだ!? 全身から刃が!」


「まずい、全員止まれ! 止ま……ぎゃああ!!」


 自分から攻めるより、相手の自爆を誘うべきと判断したフィルは武装を展開する。その場にしゃがんで背を丸め、全身から駆動する刃を生やす。


 それを見た最前列の兵士は、慌てて急ブレーキをかける。が、後続の兵士たちはそうもいかない。止まれなかった仲間に押し出され、前から順に餌食になっていく。


「包囲の層が薄いのは……あそこですね。死にたくないなら退きなさい、兵士たち! チェインソーサー・タックル!」


「ひえっ! ひ、退け退けぇぇぇ!! ちんたらしてると挽肉にされるぞぉぉぉ!!」


 スプラッターな死に様を見せた仲間を見て、兵士たちは完全に戦意を喪失した。そこにフィルが突っ込んでくるのだから、もう耐えられない。


 挽肉になるのはご免だと、全員矢も盾もたまらず逃げ出していく。木っ端の相手は騎士団でも問題無しと判断し、フィルは先に進む。


「さて、本陣の奥に行きますかね。ポータルゲートを破壊して、増援が来るのを止めないと」


 そう呟き、血塗れの刃を切り離した後フィルは走り出すのだった。



◇─────────────────────◇



「食らエ! フェザーダーツ!」


「そんなもの当たらないわよ! シャトルエスケープ!」


 その頃、アンネローゼは熾烈な空中戦を繰り広げていた。バルーゼの放つ羽根を避けつつ、相手に接近しようとするが……。


「ムダなこトを。メタルフェザーウォール!」


「ああもう、邪魔ぁ! この羽根、ホンット鬱陶しい!」


 バルーゼは宙に浮かぶ羽根の盾を操り、アンネローゼの進路を阻む。相手が止まっている間に突撃し、クチバチで貫こうとする。


 今度はそれをアンネローゼが避け、反撃するより前に遠くに離脱する敵に歯噛みする……という流れが、かれこれ十分は繰り返されていた。


(このままじゃダメね、闇雲に攻撃を繰り返すだけじゃこっちが疲れちゃうわ。かと言って、フィルくんみたいに頭良くないし……いい作戦なんて思い付かないわね)


 進路を邪魔する盾を蹴り飛ばしつつ、アンネローゼは思案する。以前戦ったリバサとは違い、今度の相手には単純な力押しは通用しない。


 有効な作戦を練り、的確に反撃しなければいつまで経っても勝つことは不可能。それを頭では分かっているのだが、中々アイデアが湧かない。


「どうシた、逃げ回ってイルだけデは私にハ勝てぬゾ!」


「うっさいわね、そんなことくらい言われなくても分かってんのよ!」


 盾を遠隔操作で飛ばしつつ、挑発するバルーゼ。アンネローゼは槍を振るい、盾を弾き落としつつ大声で怒鳴る。


 スピードは相手が上、このまま攻防の応酬をしていても勝ち目は薄い。そんな中、アンネローゼはふと()()()()()()()を思い付く。


(! あ、いいこと考えた。これなら、あいつのスピードなんて関係なくぶっ殺せるわ。そうと決まれば、まずは……)


「来ないノか。ならバ、こちらカら」


「まずはその盾を全部吹き飛ばす! バルキリー・ハリケーン!」


 攻撃を放とうとしていたバルーゼの機先を制し、アンネローゼが動く。直立した状態で翼を広げ、身体を横回転させる。


 すると、激しい風の渦が巻き起こり、空を漂っていた盾を遠くへ吹き飛ばしていく。バルーゼは必死に翼を羽ばたかせ、墜落しないよう耐える。


「ぐうっ……!! なんと凄まじイ風だ……! 危うク私マで吹き飛ばサれるとこロだったゾ」


「さあ、これで邪魔な盾はなくなったわ!」


「だガ、それダけで私に勝てルと思うナ! 今度こソお前ヲ貫いてクれる! ビークスピア!」


 全ての盾を吹き飛ばされ、アンネローゼへの妨害を封じられたバルーゼ。が、そんなのは関係ないとばかりに、風が止んだ直後に攻撃を仕掛ける。


 それを見たアンネローゼは、待ってましたとばかりに笑みを浮かべる。槍を突き出し、真っ直ぐバルーゼ目掛けて突進していった。


「待ってたわよ、この時を! アンタに追い付けないなら、真正面からぶつかってやりゃいいのよ!」


「!? お前、正気カ!? そンな槍一本で、我がクチバシに対抗出来るトでも思ってイるのか!」


「出来る! 気合いと根性があれば、どんな不可能だって可能になるのよ!」


 根性論全開なアンネローゼは、急加速して突っ込んでいく。対するバルーゼも、相手の無謀な挑戦を受けて立つことを決めた。


「良かろウ。我がクチバシに貫かれテ死ぬのが好みトあらば、望み通りニしてくレるわ!」


「返り討ちにしてやる! メテオドリルナイナー!」


 クチバシと槍、敵を貫かんと二つの武器がぶつかり合う。互いの意地とプライドを賭けた激戦を制するのは、果たしてどちらか。


「ぐヌぬぬぬぬぬ……!!!」


「おりゃああああああ!!!」


 一歩も退くことなく、一人と一羽は全身全霊を込めて得物を押しつけ合う。そんな中、勝敗を分ける決定的な音が空に響く。


 バルーゼのクチバシが負荷に耐えきれず、亀裂が走ったのだ。予想外の出来事に、バルーゼは目を見開き驚愕する。


「バ、バカな! 我がクチバシはウルの陽鉄製なのダぞ!」


「残念だったわね、こっちの槍はウルの陰陽鉄製なの。アンタのクチバシより、強度は……遙かに上なのよ!」


 自慢の武器に亀裂を入れられ、動揺するバルーゼ。ほんの一瞬、出力が弱まったその時。隙を見逃さなかったアンネローゼが、戦いを制した。


 クチバシを粉々に砕き、アンネローゼは相手の全身を貫く。再起不能に陥ったバルーゼは、全身からバチバチ火花をスパークさせながら墜落していく。


「この私ガ……敗れル、とは……。ホロウバルキリー……見事、なリ!」


「アンタも強かったわ、バルーゼ。気合いと根性が足りてなかったら、私の方が負けてたかもね」


 相手の勝利を讃えながら、バルーゼは人のいない平野に落下して粉々に砕け散った。最期を看取ったアンネローゼは、そう呟いた後敵陣へ向かう。


 シュヴァルカイザーことフィルと合流し、残る敵を殲滅するために。数分後、アンネローゼはかつて敵の陣地だった場所に降り立つ。


「うっわ、凄い惨状。そこかしこで死屍累々なことになってるわね。……惨状に参上……ぷっ、ふふっ」


 自分で自分のジョークに吹き出した後、アンネローゼはあちこちに散らばる死体を避けて奥へ進む。すると、そこには……。


「あ、いた! おーい、フィルくーん!」


「アンネ様! そちらは終わったんですね。無事なようで良かったです」


「ふっふーん、そう簡単には負けないわよ! ……ところで、フィルくんは何やってるの?」


「ポータルゲートを破壊しようとしてるんですが、これが中々頑丈で……ちょっと手間取ってたところなんですよ。よければ手伝ってもらえませんか?」


 陣地の最奥部にて、大きな紫色の球体を攻撃しているフィルがいた。彼曰く、このポータルから闇の眷属たちが現れているのだという。


 これさえ破壊出来れば、援軍が来ることは不可能になり大勢が決する。のだが……シュヴァルカイザーの武装を以てしても、中々壊せないらしい。


「いいわよ、じゃあ……あ! いい作戦閃いちゃった。フィルくん、ちょっと耳貸して」


「? ええ、いいですよ」


「あのね、ごにょごにょごにょ……」


「ふんふん、なるほど。いいですね、じゃあやってみみしょうか!」


 アンネローゼの考えた作戦を聞き、フィルは早速実行することにした。宙に浮き上がり、フィルはアンネローゼの脚を掴む。


 そして、槍を構えたアンネローゼごと身体を縦に回転させる。十分に勢いを付けたところでポータルゲートに向けてアンネローゼをブン投げた。


「いっけー! 合体奥義、漆黒魔砲台(シュヴァパルト)!」


「からの! 戦乙女弾道弾(バルミサイル)!」


 二人のコンビネーション攻撃を受け、ポータルゲートは木っ端微塵に粉砕された。後は、生き残っている敵を殲滅するのみ。


「やったわ、フィルくん! ちょっと目が回ったけど、作戦成功よ!」


「ええ、やりましたね! さあ、この調子で残りの敵もやっつけちゃいましょう!」


「おー!」


 お互いに見つめ合い、二人は笑顔を浮かべた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 膠着状態の場を無理あり流れを掴むために根性論とスペックで賭けに出たか(ʘᗩʘ’) まだまだ戦略としては素人に毛の生えた程度か(´-﹏-`;) その内、鬼の司令官でも来たりして(٥↼_↼)
[一言] >「うっわ、凄い惨状。そこかしこで死屍累々なことになってるわね。……惨状に参上……ぷっ、ふふっ」 お腹痛いw 捩れちゃうw
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