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217話─一進一退の死闘

「さあ、行くがいいネクロモートたちよ! レジスタンスの魔女たちを攻撃するのだ!」


「了解。エンジンブーストします」


「総員、迎撃準備デース! ディフェンスを固めて返り討ちにするデース!」


「おおおーー!!」


 リミッターを解除し、真の力を発揮したネクロモート軍団と魔女たちがぶつかり合う。両軍の激突を見届けた後、ベルティレムたちは撤退した。


 今回はリセット前提の前哨戦、わざわざ七栄冠自ら戦う必要はないと判断したのだ。彼女らが消えた後、天空の死闘が始まる。


「戦闘再開、敵兵の駆除を続けます」


「スリーマンセルによる殲滅陣を結成、生命反応が消失するまで攻撃せよ」


「くっ、こいつら……いきなり滑らかに喋るようになりやがって!」


「ジュディ、気を付けて! 来るわ!」


 先ほどまでのカタコトな喋り方から、滑らかな……それでいて殺意に満ちた声を出す三部隊のネクロモートたち。勢いよく魔女たちに突撃し、切り崩していく。


「シールドが破られ……きゃああ!!」


「くっ、機動力が上がって……ぐはっ!」


「生命反応、消失。死体を破壊します」


 本来の性能を発揮したネクロモートたちは、魔女が作り出した魔力シールドを槍の一撃で破壊し、そのまま心臓を貫き殺害する。


 ホウキから落ちていく魔女の遺体に、無慈悲な追撃が加えられる。あまりにも酷たらしい生命に対する侮辱行為に、魔女たちは怒りを燃やす。


「あいつら……ただ命を奪うだけならともかく、死体を攻撃するなんて許せない!」


「怖がってる場合じゃない、あんな外道兵器はぶっ壊してやるわ!」


「イエース! あんなバッドウェポン、デストロイするに限りマース! 陣形を再構築してくだサーイ、そのためのタイムはミーが稼ぐデース!」


 部下たちに立て直しの指示を出した後、トゥリは前に出て防御魔法を展開する。球状の結界を作り出し、生存している部下たちを守る。


「盾魔法、オールバイドガーディアン! このディフェンス、ブレイク出来るもんならしてみろデース!」


「強力な魔法障壁の発生を確認。破壊を試みます」


 トゥリの魔法によって、ひとまず右翼部隊は壊滅の危機を免れた。一方、左翼部隊は中央部隊と合流することで、何とか戦線を維持していた。


 リミッターが解除されても、中央部隊を形成するネクロモートたちが狙うのはジェディンとイレーナの二人だけだったのだ。


「死ね、宿敵たちよ!」


「今度は負けぬ……塵になれ!」


「フン、だいぶヴァルツァイトの意識に浸食されてきているな。だが、その分……隙が出来て狩りやすい!」


「あと二十機ほどっすね、これなら楽勝っすよ!」


 かつて敗北を喫した宿敵が相手だとあって、ネクロモートたちは強い敵意をジェディンたちに向け、彼らを執拗に攻撃する。


 そのおかげで中央部隊の魔女たちからは犠牲が出ずに、シゼル率いる左翼部隊への加勢が出来ていた。


「食らうっす! ドレルバレット・ショット!」


「ガグ……!」


「塵になれと言ったな。その言葉、そっくり返してやる。いや、お前たちはキカイだから……スクラップにしてやるが正しいか! デストラクトチェーン!」


「フェイタルエラー発生、機能維持不可……能……」


 本来の性能を発揮しているとはいえ、数多くの修羅場を潜り抜けてきたジェディンとイレーナからすればネクロモートなどおもちゃ同然。


 どれだけの数に囲まれようと、怒りで冷静さを失っている敵など赤子の手を捻るより楽に倒してしまえるのだ。むしろ……。


(急いでこやつらを全滅させて、両翼の加勢に行かなければ。右翼の方は問題ないとして、左翼側がかなり危ない)


 前後から迫ってくるネクロモートの攻撃を避け、同士討ちさせつつジェディンは思考を巡らせる。大規模な防御魔法が使えるトゥリ隊はいいとして、シゼル隊が危機に陥っていたのだ。


「くっ、まずいですシゼル隊長! 敵もスクラムを組んで対応してきてます! このままでは、数の優位を取られてしまいますよ!」


「中央の子たちが加勢に来てくれたから、しばらくは持ち堪えられると思うけど……ちょっとした要因で……ていっ! すぐ逆転され……このっ、邪魔よ!」


 左翼部隊の魔女たちは、左腕に装備した魔導砲を剣に変化させて白兵戦を行っていた。敵の機動力の上昇により、砲撃が当たらなくなってきたからだ。


 懐に潜り込まれたら終わりな砲撃スタイルに比べ、白兵戦の方が多少は勝率も上がってはいる。だが、スペックの違いとスタミナの差で、徐々に追い詰められてきていた。


「くうっ、はあはあ……。厄介ね、こいつら疲れないから……ずっと元気に暴れ回ってるわ」


「クソッ、こっちは体力がそろそろヤバいってのに。何とかして数減らさねえと、ホントに……死ぬぞ、これは」


 四人一組になって、スリーマンセルを組むネクロモートたちを分断しながら各個撃破していく魔女たち。しかし、一人また一人と敗れていく。


 サラやジュディをはじめ、左翼部隊の魔女の大半がかなり疲弊してきている。中央部隊の加勢があるとはいえ、瓦解するのは時間の問題だ。


「やむを得ない、か。イレーナ、ここは俺に任せてお前はシゼルたちの援護に向かえ!」


「ええっ!? 無茶っすよ、いくらジェディンでも一人じゃ……」


「案ずるな、これくらいどうとでも出来る。忘れたのか? 俺は一人じゃないと。デュアルアニマ・オーバークロス! レクイエム・レギオン……オン・エア!」


 右翼部隊は立て直しの最中、とてもではないが救援には行けない。そこで、ジェディンはイレーナを急遽シゼルたちの元に向かわせることを決める。


 まだ中央部隊のネクロモートは十八機残っており、一人で相手にするのは流石に荷が重い。そのことを指摘されると、ジェディンは切り札を使う。


「あ、そっか! ぬいぐるみ軍団を使えば、数の差は埋められるっすもんね!」


「ああ、時を固定されているせいで、死者の魂を入れられないが……それならそれでやりようはある。イレーナは俺を気にせず、彼女たちを助けてやってくれ!」


「あいあい!」


 イレーナはシゼルたちを助けるため、移動を開始する。戦場が混沌とした様相を呈していく中、それを遙か遠くから眺める者がいた。


「……ふむ。彼女たちの殲滅は、現段階では無意味。ここはやはり、敵の防衛拠点に探りを入れるべきですね。ヘカテリーム、ネクロモートに命令を送りなさい」


「分かったわ、魔女長。ネクロモートたちに通達、十機ほど魔女たちを無視して先に進みなさい」


 ルナ・ソサエティの本部に残っていたマーヤとヘカテリーム。彼女ら二人が、千里眼の魔法を使って戦場を注視していた。


 リセットが前提である以上、今敵を壊滅させるのに注力するのは非効率。それよりは、敵の情報を得るために行動した方がいい。


 そう判断したマーヤの指示を受け、ヘカテリームが自身の管理下にあるネクロモートに命令を送信する。


「命令受信、最優先任務の上書きを実行。これより行動を開始します」


「ん!? なんだこいつ、いきなり……あ、逃げてくぞこいつ!」


「いえ、違うわジュディ! あいつ、レジスタンスのアジトに向かってる!」


 ヘカテリームの命令を受けた一部のネクロモートたちが、相手を無視して行動を開始する。突然の離脱に虚を突かれ、取り逃しかけるが……。


「逃がさないっす! 食らえ、心眼一閃撃ち・乱舞!」


「ガゴッ! 胸部コアに致命的ダメージ、機能修復不能……フノウ……」


「へん、ざまーみろっす!」


「イレーナ! ありがと、助かったぜ!」


 そこにイレーナが到着し、怒濤の連射を浴びせかける。決して狙いを外さない一撃が放たれ、ネクロモート十機を撃墜してみせた。


「へへっ、ギリギリ間に合ったってところっすね。ここからはアタイも加勢するっす、みんなで押し返し……!?」


「この空間の歪み……! みんな、もう攻撃する必要はないわ! 時の固定が解除される、リセットされるわ!」


 ここから反撃、とイレーナが意気込んだ瞬間、空間が歪み始める。太陽を覆う結界が明滅し出すのを見たシゼルが、大声で叫ぶ。


「だいぶネクロモートも減ったし、これ以上は無意味だわ。一回リセットして、やり直しましょう」


「よいのですか、ヘカテリーム。リセットの連続使用は、三回が限度なのでしょう?」


「ええ、普段はね。でも、今日は違うわ。カーリーに協力してもらって、魔力をたっぷり蓄えておいたから……今日は四回使えるの」


 ルナ・ソサエティの本部にて、マーヤとヘカテリームはそんな会話を繰り広げる。太陽の魔女の顔には、不敵な笑みが広がっていた。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 少し誤字ってるぞ 魔女たちを口車します、☓、駆逐します、○ 敵兵を苦情し続けます、☓駆除し、○ かな(?・・) [一言] 戦争事態が悲しい物だがこんなのがまだ3回続くのか(ʘᗩʘ…
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