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141話─未来から来た援軍

「アンネちん~? もしも~し。ありゃ~、ダメだこれ。壊れちゃって反応ないわ~」


 アンネローゼとの共闘で、死闘の末ゴライアを下したレジェ。相手の顔に刺さったままのつよいこころに呼びかけるも、応答はない。


 仕方がないので、以前マッハワンから送られた基地の座標へと向かおうとする。が、その時。息絶えたはずのゴライアが、目を見開く。


「行か……せぬ! 貴様は、絶対に!」


「ひょえっ!? まだ生きてんの~!? うっはマジMT(まさかの展開)!」


 身体を上下に両断され、確実に死んだはずのゴライア。だが、よく見ると断面部分を紫色の炎が覆い、弱火で燃えている。


「あ、まさか! それ、ソセーの炎じゃ……」


「そうだ……カンパニーが極秘で盗んだ、蘇生の炎……その最後の一つ。オレはあと少しだけ……生きねばならん! 開け、キャスリングゲート!」


 レジェの脚を掴み、アンネローゼとの合流を阻止するゴライア。直後、腹部にゲートが現れ黒い球体が発射された。


 丸いソレは宙に浮かび、真っ二つに割れる。その中から、封印が施された黒い門が現れた。ヴァルツァイトのいる最果ての基地との、直通ポータルだ。


「これで……よし。時が来れば……ポータルが開く。そして、ブロロロ……最後の兵団とヴァルツァイト様が、奴らを蹂躙し……殺す」


「はぁ~? そんなことさせるわけないじゃ~ん。今から歩いて(てくって)アンネちんのとこに」


「行かせぬと言ったはずだ……! オレと一緒に、地中に沈め!」


「あっ、鬼デコ斧ちゃー!」


 ポータルの設置という最も重要な任務を果たし、炎が消えゆく中で最後の力を振り絞り、レジェを道連れにしようとするゴライア。


 相手を引き倒し、もう片方の腕で斧を弾き飛ばす。そして、レジェの上に馬乗りになり、ありったけの魔力を使って自身を重くする。


「おあああ、重い重いおもーい! 沈むー、土に沈むー!」


「ブロロ、ロ……お前が脱出する頃には……決着が、ついているだろう……友の亡骸を……今度は、お前が……抱き、悲しみに……暮れるが、いい……」


「んなわけにいかねーし! 絶対こっから這い出てやっから、あの世で見とけこらー!」


 ゴライアにのし掛かられ、レジェは土の中に埋もれてしまう。手脚を掴まれ、上に乗る亡骸のせいで完全に身動きが取れない。だが、彼女はヘコたれない。


 大切な友とその彼氏を、もう一度守り抜くために。たった一人の、地中脱出劇が幕を開けた。



◇─────────────────────◇



『緊急指令、緊急指令。左翼内の侵入者を排除せよ。繰り返す、クルーは総出で侵入者を排除せよ』


「よっ、とあっ! 随分と手荒な歓迎だね、嬉しくて涙が出ちゃうよ!」


『はっはっはっ、威勢があってけっこうけっこう。だが……実力の方はてんでダメだな!』


 その頃、空中戦艦の内部では侵入を果たしたキルトがクルーを相手に大立ち回りを演じていた。頑強な鎧で相手の攻撃を受け止め、カウンターを叩き込む。


 大乱戦が行われる中、キルトが通ってきた通路からこっそりクルーが現れる。卑怯にも、背後から襲いかかろうとしているのだ。


(しめしめ、あのガキ前から来る奴らに気を取られてるな。今なら不意打ち出来るぞ!)


『キルト、後ろに気を付けろ!』


「なにっ!?」


「ありがと、ルビィお姉ちゃん。ドラグナックル!」


「ぐはあっ!」


 だが、その目論見は失敗に終わる。アーマーとなってキルトを守っているルビィが、敵を見つけて警告したのだ。


 おかげで不意打ちを未然に防ぎ、とんぼ返りして相手を仕留めることが出来た。拳に着いた血を払いながら、キルトは呟く。


「三百年前の闇の眷属も、変わらないなぁ。こういう卑怯なやり方は嫌いなんだよね、僕」


『うむ、正々堂々というのはとても素晴らしいものだ。だがキルト、時として……』


「総員射撃準備! 奴を蜂の巣にしてやれ!」


「ん、攻撃が来る! お姉ちゃん、お説教は後でね!」


 ルビィがくどくど言い出した瞬間、隙ありと見たクルーたちが攻撃を始める。通路に前後六人ずつ三列に並び、クロスボウを構えた。


 三段撃ちによる集中砲火で、キルトを仕留めるつもりなのだ。それを見たキルトは、義手に内蔵されたカードデッキから一枚のカードを取り出す。


「撃てー!」


「そうはいかないよ、それっ!」


『シールドコマンド』


 キルトは赤い盾の絵が描かれたカードを、腕の手の甲側にあるカードリーダーに差し込む。すると、義手から音声が鳴り響く。


 直後、キルトの前に炎が出現し形を変える。竜の鱗を思わせる、真っ赤なカイトシールドを右腕に装着し守りを固めた。


「ドラグスケイルシールド! さあ、どこからでもかかってこい!」


「ふん、ならお望み通り貫いてやる! 死ねぇぇぇぇぇ!!」


 無数の矢が放たれ、キルトに襲いかかる。キルトは身を屈め、盾で己を守る。盾は凄まじい強度を持っているようで、矢を逆に弾き返してしまう。


「くっ、矢が通らない……! だが、じきに別働隊が合流する。そうすれば、挟み撃ちにして仕留められるぞ!」


「それは無理だね、だって……僕、仲間がいるもん」


「は!? なんだ」


「はい、ってわけでー。こっからはアタシも参戦させてもらうわよ! オラァッ!」


「ぐはっ! な、なんだこ……ぎゃばっ!」


 キルトが口笛を吹くと、クロスボウ部隊の背後にポータルが出現する。そこから、黄色いチャイナドレスと赤いヘッドギアに身を包んだ闇の眷属の女が現れた。


 女は真っ赤な髪を結ったツインテールを揺らしながら、クロスボウ部隊に襲いかかる。拳を叩き込まれ、敵は次々と倒されていく。


「このっ、調子に乗るな!」


「っさいわね、さっさと死になさいこの三下!」


『サモン・エンゲージ』


 女は大きく開いたドレスの胸元から、猛牛の絵が描かれた一枚のカードを取り出す。それを、ヘッドギアの右側にあるカードリーダーに差し込んだ。


 すると、突如出現した牛型の鋼鉄像が女を包み込む。生き残っているクロスボウ部隊は、何が起きているのか分からず困惑する。


「なっ、なんだ!? こいつ何をして……うわっ!」


「じゃじゃじゃじゃーん! 待たせたわねキルト、サモンマスターブレイカ、ただいま見参!」


 直後、像が砕け中から女が現れる。黒と白の牛柄をした、胸元が大きく開いたプレートアーマーを身に付けた姿で。


「よっ、待ってましたエヴァちゃん先輩! ……ところで、僕あいつらの目の前に呼んだはずなんだけど。何で後ろに出てきたの?」


「決まってるでしょ、そうじゃないと挟み撃ちに出来ないじゃない」


「ど、どうなってるんだ? お前たちは……一体なにもごはっ!」


「っさいわね、今アタシはキルトとお話してんの。邪魔したら蹴っ飛ばすわよ!」


『エヴァ、もう蹴っとるぞ』


 二人の会話に口を挟んだ闇の眷属の男は、エヴァに蹴り飛ばされ壁のシミとなった。残っている者たちは、恐怖に震えている。


「ひ、ひいぃ……なんだ、なんなんだこいつら!」


「こんな戦い方をする奴ら、カンパニーのデータベースに登録されてないぞ!」


「そりゃそうだよ、だって僕たち三百年後の未来から来たんだもん。僕のご先祖……フィル様とアンネローゼ様を助けるためにね!」


「なに!? 未来から……だと!?」


 キルトの発言に、クロスボウ部隊の生き残りたちは驚愕する。そんな中、もう話は終わりだとばかりにエヴァが動く。


「さて、ちゃっちゃか終わらせるわよキルト。せっかく過去に来たんだから、この時代にしか生息してないモンスターを探して契約しなきゃ!」


「はいはい、分かったよエヴァちゃん先輩。後ろからも敵が来てるって言ってたし……サクッと終わらせていかないとね♪」


 そう言うと、キルトは立ち上がり歩き出す。時間制限を過ぎ、盾が消えた。一旦エンゲージを解かない限り、同じサモンカードは使えない。


 が、もはや壊滅したも同然のクロスボウ部隊が相手であればカードは不要。にじり寄ってくるキルトとエヴァに、闇の眷属たちは恐怖に震える。


「ひ、ひいっ! 来るな、こっちに来るな!」


「近道を教える、だから見逃してぇぇぇ!!」


 もはや戦意などあるわけがなく、命乞いをする者まで現れる始末。が、当然キルトの答えは……。


「んーとね、やだ。だって、人に教えてもらったら自分で考える楽しみがなくなっちゃうもん。それに、罠のあるところに誘導しようって腹積もりかもしれないし」


「そうそう。ってわけで、全員覚悟しときなさい? 纏めて壁と天井と床のシミにしてやるわ!」


『シッシッシッ、エヴァの相手をする奴らは可哀想だな。楽には死ねんぞ、こやつ残虐だからな』


「や、やめて……許し……ああああぁぁぁぁ!!!」


 空中戦艦の中に、哀れな犠牲者たちの断末魔の声が響き渡った。

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり悪足掻きするルークであった(ʘᗩʘ’) でもそんな事よりカナリ重要なワードを言ってたけど(⑉⊙ȏ⊙) フィルとアンネの子孫?!щ(゜ロ゜щ)これトンデモナイ情報になるぞ(٥↼_↼)…
[一言] いやマジで何でもありやんけw
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