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140話─親友同士の共同戦線!

 シュヴァルカイザーの基地、三階。テーブルマウンテンの外周に沿って、いびつなリング状の部屋が存在している。


 基地に近付く外敵を退けるための迎撃兵器がしまわれており、岸壁にある覗き穴から外へ攻撃出来るようになっているのだ。


「さぁ~て、ちゃっちゃか殺っちゃいましょ! えっと、ボタンはどれかな」


「ドノ兵器ヲ使イマスカ? 今ナラドレデモ選ビタイ放題デス」


 ミサイルをぶっ放し、ゴライアを退かせたアンネローゼ。次にどんな兵器による攻撃を浴びせてやろうかと、コントロールパネルを眺める。


 つよいこころの言葉にしばし考え込んでいたが、やがて一つのボタンを押した。これが一番レジェの助けになるだろう、と直感で判断したのだ。


「よーし、行きなさいフィギュアーミー! レジェのサポートをするのよ!」


 ボタンが押された直後、テーブルマウンテン頂上にある岩がズレ、穴から大きな筒が発射される。オートで設定された座標に向け、勢いよく飛んでいく。


「ブロロロ……オレとしたことが油断していた。基地から攻撃されるとはな」


『フン、これでもうアンタに勝ち目はないわよ! 待ってなさい、今とびっきりの援軍をこっちに送ってんだから!』


「なるほど……あの筒だな」


「お~、なんか来てるし!」


 たった数分で、戦闘現場に支援が届く。体勢を立て直して戻ってきたゴライアは、飛来してくる筒を見上げ……ディスクカッターをブン投げた。


「なら……撃墜してしまえばいい! ディスクブーメラン!」


『はぁー!? ちょっと、何してくれてんのよ! せっかくの援軍なんだから到着させなさいよ!』


「愚か者め……わざわざ、そんなことをするメリットがオレにあるとでも?」


「ですよね~。……はれ? なんか降ってきてる~」


 ディスクカッターの直撃を食らい、筒は爆散してしまった。せっかくの支援を台無しにされ、アンネローゼは抗議する。


 が、ゴライアからすれば知ったことではない。反撃に出ようとしたその時、小さいナニカが降ってくることにレジェが気付く。


「ガッチャンコ! フィギュアーミー見参!」


「けーんざーん!」


「わー、ばちくそかーいー! なーにあれ、すんごいイケてる~!」


「あ、よかったー……筒は爆発しちゃったけど、中にいた連中は無事だったのね!」


 降ってきたのは、手のひらサイズの人形だった。それも、ただの人形ではない。完全武装した兵士の格好をした、戦闘支援用の兵器人形なのだ。


 彼らフィギュアーミーが入っていた筒自体は撃墜されたものの、中にいた彼らは無事脱出出来たらしい。パラシュートを開き、続々降下してくる。


「ブロロロ……なんだこれは? こんな人形で……オレを倒せるとでも思っているのか?」


『へん、見た目で侮ってると痛い目見るわよ! フィギュアーミー、敵はそのデカブツよ! 弱点の背中をチクチク攻撃してやりなさーい!』


「イエス、マム! お前たち、上官殿のご命令だ! 総員突撃!」


「イエッサー、とつげーき!」


「ぐうっ、纏わり付くな鬱陶しい!」


 アンネローゼの指示を受け、人形の兵隊はゴライア目がけて突撃していく。相手の身体をよじ登り、手にしている槍でプスプス刺す。


 分厚い鎧のおかげで傷みなどまるでないが、鬱陶しいこと極まりない。ゴライアはフィギュアーミーを振り払うのに必死で、まともに動けなくなる。


『レジェ、今よ! あいつの後ろに回り込んでブチ割ってやりなさい!』


「はいはーい、お任せ~! フルパワーで行っちゃうっしょ~!」


「チッ、不味い……! こうなれば……奥の手を使うしかない! イクスパントローラー!」


『! レジェ、気を付けて! アイツ何かしてくるつもりよ!』


 全身フィギュアーミーまみれになったゴライアは、足の裏に出現させたローラーを使い蛇行しながら後退する。


 振り落とされまいと、兵士たちは必死にゴライアの身体にしがみ付く。三枚目のディスクカッターを呼び出し、ゴライアは動きを止めた。


「大技で仕留める……どんな妨害も、もはや無意味! 八つ裂きになれ……ディスクエンド・トルネイド!」


「おはっ!? なんか回り出し……おおおっ、吸い込まれるんですけど~!」


 二枚のディスクカッターを胴体と融合させ、自らを巨大な丸ノコギリへ変えたゴライア。そのまま猛烈な速度でスピンし始める。


 凄まじい吸引力が生まれ、周囲にあるもの全てがゴライアに引き寄せられいく。当然、接触すれば二枚のディスクカッターに切り刻まれるだろう。


『くおおお、なんのこれしき! まだまだ迎撃兵器はたくさんあるのよ、片っ端からぶつけてぶっ潰してやるわ!』


「ブロロロ、ムダなことだ。この回転が続く限り、誰も……オレを倒すことは出来ん!」


 レジェは斧を地面に突き刺し、現場を中継しているつよいこころは必死に羽ばたいて吸引に抵抗する。フィギュアーミーは、すでに八つ裂きにされ全滅してしまった。


 アンネローゼは片っ端からミサイルを放ち、ゴライアを爆殺しようとするが……ディスクカッターに触れた瞬間、爆風もろとも消えてしまう。


『はぁー!? 何その技、ちょっとズルいんじゃないの!?』


「ククク、ズルい……だと? 愚かな、戦いに卑怯も何もない。あるのは……勝利か、敗北か。二つの結末と、そこに至る過程のみ!」


 何とかしてダメージを与えようと、躍起になってミサイルを放ち続けるアンネローゼ。が、二十を超えそうになった辺りでシステムロックがかかる。


『短時間デミサイルを撃チ過ギデス! コレ以上ハ発射台ノクールタイムガ必要ニナリマス!』


「もう、肝心な時に! ……こうなったら、こっちも最後の手段を使うしかないわね」


 迎撃兵器の使用も封じられ、打つ手がなくなったアンネローゼ。ゴライアの回転さえ止めることが出来れば……まだ勝機はある。


 そう考え、彼女は捨て身の策を取る。現場にいるつよいこころに内心謝りつつ、突撃命令を下した。


『つよいこころ、突撃よ! どうにかしてアイツを怯ませるの! そうすれば、回転を止められるはず!』


「だったら、うちも協力する~! ラグジュアリ・シェル!」


 レジェは片腕を斧から離し、アーマーの腹部に埋め込んであるダイヤモンドを引っ剥がす。それをつよいこころに投げ与えると、変化が起こる。


 半透明になったダイヤモンドがつよいこころを取り込み、強固な外殻となったのだ。これで、ディスクカッターを防ぎながら一撃を叩き込めるだろう。


『ありがとう、レジェ! さあ、行くわよつよいこころ! 後で博士に修理してもらうからね、ごめんね!』


「いっけ~、アンネちんと虫さ~ん!」


「ブロロロ、ムダな足掻きを! ならば、こちらから切り刻みに行ってやろう!」


 つよいこころが飛んでくるのを見たゴライアは、ローラーを使いスピンしながら前進する。これを止められなければ、レジェは死ぬ。


 もう二度と、友を死なせはしない。強い決意を込めて、アンネローゼは叫ぶ。


「アンタなんかに……レジェを死なせない! 大切な友だちが死ぬのは! 一回だけで十分なのよ!」


「ならば……二度目の別れを味わわせてやる! 砕け散るがよいわ!」


 ディスクカッターから発せられる魔力によって、回転する刃に吸い込まれていくつよいこころ。ダイヤモンドごと切り裂かれる……そう思われた。


 だが、カッターが両断出来たのは外殻である宝石だけ。つよいこころは上に飛び、ゴライアの顔面に角を叩き込む。狙うは、相手の目だ。


『ウオラアアアアア!!』


「ぐっ……ごおおお!! おのれ、目を……!」


「回転止まった! 今が大チャンス……みたいな~!」


 左目を貫かれ、激しい痛みによって動きを止めるゴライア。その機を逃さず、レジェは斧を引き抜きブースターを全開にする。


 急制動で相手の背後に回り込み、全魔力を斧に注ぎ込む。狙うは一点、ディスクカッターに守られた背中の亀裂だ。


「これで終わりっしょ~! ラグジュランデッド・ブレイカー!」


「再始動が……間に合わ……!」


「っしぇいやぁぁぁぁ!!」


「ぐ……がはっ!」


『やったね、レジェ! これで……コイツも……終わ、り……』


 全力を込めて斧をブン回し、ゴライアに叩き付けるレジェ。ディスクカッターごと鎧を破壊し、中にいる本体を真っ二つに両断してみせた。


 ゴライアの巨体が崩れ、仰向けに倒れる。限界を超えたつよいこころは、機能を停止し基地との通信が途絶えた。


「ふいー。これにて決着、みたいな~? 大金星ってやつ~? いぇーい!」


 斧を振り上げ、レジェは勝利を祝うのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] やれやれ(ʘᗩʘ’)援護、援護でバカスカ色々撃ったけど博士が何と言うやら(↼_↼) 倒したと思った瞬間が危ういのは古くからフラグと言うのだよ(⌐■-■)
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