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138話─飛べ! 駆け巡れ! レジェ!

「キング・ガンドラ、緊急の報告です。この空中戦艦ファクトガインに、敵性反応が接近しています」


「ほう、来おったか。他のチェスナイツを退けてきたか、あるいは初めからワシを狙ったか……敵は何人いる?」


「途中までは、反応が二つありました。しかし、途中で融合して巨大な一つの反応に変わったのをオペレーションシステムが検知しました」


 一方、空中戦艦内部。総司令部に陣取っていたガンドラの元に、自動人形(オートマトン)の兵士が現れ緊急の報告を行う。


 敵が現れたことを聞き、やる気を見せるガンドラだったが……奇妙な内容に怪訝そうな顔を浮かべる。フィルの一味に、そのような能力の持ち主がいないことは把握済みなのだ。


「なんだと? そんな特性を持つ者はシュヴァルカイザーの仲間にはいないはず……ああ、そうか。協力者を送り込んで来たな。それも、我々がデータを所有していな……!?」


『警告、警告。艦内に侵入者あり。クルーはただちに迎撃せよ。繰り返す、艦内に侵入者あり。クルーはただちに迎撃せよ』


 二人が会話をしていると、戦艦が揺れる。直後、アラーム音と共に艦内放送が流れ始めた。ガンドラは慌てることなく、クルーたちに指示を出す。


「艦内に設置した監視用魔水晶の映像を映せ! 敵がどこに侵入したか、座標の情報を共有せよ!」


『はい、敵性反応は左翼部分の外壁を突き破り艦内に侵入した模様です。すでに隔壁を降ろし、該当区画を閉鎖しています』


「でかした。やはり、最後の兵団から一部をこちらに移しておいて正解だったな。ただちに侵入者へ攻撃を行え、データサンプルの回収を怠るなよ!」


『かしこまりました。随時データの収集を行います』


 キングとしての指揮能力を遺憾なく発揮し、侵入者たるキルトを迎撃するガンドラ。空中戦艦の内部で、戦いが始まる。



◇─────────────────────◇



「ブロロロ……ちょこまかと逃げ回るだけか? 威勢よく出てきたわりには……とんだ肩透かしだな、エモーよ!」


「その名前で呼ぶんじゃねえしー。今のうちは、もうエージェント辞めぴっぴなんだから!」


「知ったことではない……だが、礼節を欠くのは我が主義に反する。いいだろう、本名で呼んでやろう……レジェ」


「あんた、こーいうとこで変に律儀だよね~。そゆとこは嫌いじゃないっけどなー」


 その頃、レジェはゴライアと激しい戦いを繰り広げていた。円盤状の盾、ディスクカッター二枚を起用に操り、ゴライアは攻撃を行う。


 対して、レジェは未だダイナモドライバーを起動すらさせずに逃げ回っている。何か思惑があるのだろうと、ゴライアは内心警戒を強めた。


「何もしないのなら……仕留めさせてもらう! ディスクブーメラン!」


「んほいっと! いやねー、こっちも好きで逃げてるわけじゃないんよ~。初回起動だから~、動き回ってエネルギー送んないといけない、みたいな~?」


「そんなことは、オレの知ったことでは……ない! ディスクインパクション!」


 ゴライアは戻ってきたディスクカッターをキャッチし、腕を前方へ大きく伸ばす。マトリョーシカのように、腕の内部に延長用のパーツが入っているのだ。


 レジェの元まで腕を到達させ、二枚の盾で左右から挟み込んで勢いよく叩き潰そうと目論む。まともに食らえば、ぺしゃんこになるだろう。


「ほいさっさ! ざんね~ん、外れでゃーす」


「避けた程度で……図に乗るな、レジェ。そろそろ仕掛けてきたら……どうだ。それとも、臆したか?」


「はー、ビビってなんかねーし。いー具合にダイナモ電池もあったまってきたし~、そろそろやっちゃいましょー! ダイナモドライバー、ぷっとお~ん!」


 逃げに徹していたレジェだったが、ようやく反撃に出る目処が立ったようだ。ローブを脱ぎ捨て、ぴっちりした全身タイツ一丁の姿を晒す。


 そして、腰に装着したダイナモドライバーを起動させる。その様子を、妨害もせずにゴライアは静かに眺めていた。


「そうこなくては……面白くない。抵抗手段のない者を殺しても……オレの手柄にはならん。強い敵を殺してこそ、武勲となるのだ……ブロロロロ」


「ふーん、ざ~んねん。お前はここでうちに殺ぴっぴされるのだ! いくよ、ラグジュアリ・ミッドナイト……オン・エア! いえーい!」


 ダイナモ電池から魔力が溢れ、レジェの身体を包み込む。そして、セーラー服風の青いアーマーへと魔力が変化する。


 アーマーの各部には、ルビーやエメラルド、サファイアといった色とりどりの宝石が取り付けられ輝いている。


「ほう……それが貴様のアーマーか。ブロロロ……随分と派手なものだ」


「かーいーっしょ、うちの鬼デコアーマー。でも、これけじゃー終わらないんだな~。ぺっぺぺ~、鬼デコ斧ちゃー。ふんっ!」


 自分で効果音を口にしながら、レジェは巨大な斧を召喚する。アーマー同様、大量の宝石でデコレーションされていた。


 斧刃は片刃となっており、柄を挟んだ反対側は六角形の鎚頭が取り付けられている。名は体を表すかのような、贅を尽くした一品だ。


「得物は斧、か。面白い、最初の一発は……サービスさせてやる。オレは逃げん、あっと驚くような攻撃を……浴びせてみせろ!」


「ほよ、い~の~? 後で後悔しても、うち知んないかんね~? ニトロニクルブースター、ファイア~☆」


 新生したレジェの実力に興味を持ったゴライアは、あえて攻撃を受けることを決めた。そんな相手に向かって、レジェは斧を構える。


 鎚頭部分に穴が開き、そこから爆炎が吹き出す。急加速しながら、レジェは斧と共にゴライアに襲いかかっていく。


「なにっ!?」


「くっらえ~! ラグジュラリアット・ボンバー!」


「まずい……フンッ!」


 防御力には絶対の自信を持つゴライアだが、この一撃はモロに食らうのは不味いと判断し守りを固める。ディスクカッターを重ね、斧を受け止めた。


 が、ブースターによって加速した斧をレジェが振り抜いたことで、盾は容易く破壊された。ガクンと勢いは落ちたものの、直撃を食らったゴライアの巨体が宙を舞い吹き飛ぶ。


「ぐ……おおっ!?」


「うひょ~、マジやばばばばじゃね~? やっべ、これガチでテンション上がる(あげぽよ)だわ~」


 地面に斧を突き刺し、無理矢理急停止したレジェは大喜びする。ここまでの成果を出せるとは、これっぽっちも思っていなかったのだ。


 一方、吹き飛ばされたゴライアは横たわったまま唖然としていた。まさか、たった一撃でディスクカッターを両方割られるとは夢にも思わず。


 予想外のことに驚愕しつつ……想定よりも遙かに強くなって帰ってきたレジェに、高揚感を覚え武者震いしていた。


「ブロロロロ……まさかこれほどとは! これまで、心のどこかでお前を見下し、侮っていたが……もう、その慢心は捨てよう。レジェ、お前の強さ……実に素晴らしい」


「べーだ、ブロちんに褒められても嬉しくないし~。マジテンション落ちる(さげぽよ)なんすけど~」


 どうせなら、アンネローゼに褒めてもらいたかったと内心拗ねるレジェ。しかし、当のアンネローゼは基地にてフィルの快復を祈っている最中。


 そのことを知らないレジェは、さっさとゴライアを倒してシュヴァルカイザーの基地に行こうと考える。そんな中、ゴライアが立ち上がった。


「ブロロロ……相変わらず、気分の移り変わりが激しい奴だ。だが、戦いはここからが本番だ……ディスクカッターはいくらでも作り出せる。我が守り……まだ健在なり!」


「ふーん。だったら、全部ぶっ壊してやるし! ラグジュアリ・ミッドナイトの力を見せてやんよ! うーらー!」


 地面から斧を引き抜き、頭上に掲げるレジェ。第五のインフィニティ・マキーナ……ラグジュアリ・ミッドナイトの力や如何に?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] マトリョーシカのように、腕の内部に延長用のパーツが入っているのだ。 マトリョーシカは伸びるおもちゃではないですね 作者さんが意図した構造が不明なので何に例えるのが適当かわかりませんが…
[一言] イレーナとナイト戦に謎すぎる謎の助っ人で忘れがちだったレジェなのだ(ʘᗩʘ’) しかし新作アーマーがセーラー服風ブルー(?・・) レジェお前、普段からギャル語だけど社会人だろお前(٥↼_↼…
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