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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ある伯爵令嬢の話

作者: どんC

胸糞な話です。流産とか死産とか出てきます。苦手な人はそっと閉じてください。

 私がシェラッテン侯爵に嫁いだのは学園を卒業して直ぐだった。

 ガスコイン伯爵令嬢であった私とルフレード・シェラッテンとは、彼が10歳、私が8歳の時に婚約を交わした。

 親同士も仲が良かったので何事もなく結婚式は行われて。

 私は皆に祝福され、とても幸せだった。

 問題はその後に起きる。

 私は二度流産する。

 その時は義両親もルフレード様も慰めてくれた。

 だから……

 今度こそ、可愛い我が子をこの手に抱くのだと。

 私は赤ちゃんを産むことを夢見た。

 外交官の両親からも、訪問中の国から励ましの手紙を貰った。


 だが……


「ああ……生まれたのね……私の赤ちゃんを見せて……? どうしたの?」


 赤ちゃんは産声を上げなかった。

 私は顔色を変える。

 産婆は何も言わない。

 ただ黙って赤子を抱いている。


「まさか……まさか……お願い‼ お願い‼ 赤ちゃんを抱かせて‼」


 おずおずと渡された私の赤ちゃん。

 でも私が抱いたのは冷たくなった我が子。

 しかも、その子は人の姿をしていなかった。


「いやぁぁぁぁぁ!」


「何だ‼ この化け物は‼」


 夫は私を責めた。


「お前の穢れた血筋のせいだ‼ 我がシェラッテン家にこんな出来損ないの嫁は要らない‼」


 彼の両親も私を責める。


「出来損ない‼」


「まともな子も産めぬのか‼」


 鬼の様な形相で、彼の両親も責め立て。


 その日から……


 夫は家に帰る事は無かった。

 半年して私達は離婚する。

 私は鞄一つで、侯爵家を追い出された。

 3年間の結婚生活は悪夢で幕を閉じる。


 ガスコイン伯爵家は父の弟が継いでいた。

 父は外交官で外国に居ることが多かったし。

 女の私しか子供が居なかったので叔父がガスコイン家を継いだのだ。

 叔父は妻を病で亡くしていて、数年後に男爵家の未亡人と再婚していた。

 二人には息子と娘がいた。連れ子同士の結婚。

 叔母の連れ子はユリアと言う名前で、何かと私に嫌味を言う娘だった。

 ユリアは私を嘲った。

 まともに子供も産めぬのかと。

 叔父は家に居ることを勧めたが。

 従兄の妻が産んだ赤ん坊と一緒に居るのが耐えられなかった。

 赤ちゃんを抱く、幸せそうな従兄とその妻。

 絵に描いたような幸せな家族。

 私が手に入れるはずだった幸せな家庭。


 それに……


「私ルフレード様にプロポーズされたの」


 私達が結婚する前から二人は逢瀬を楽しんでいたとユリアは笑いながら言う。


「『こんな事なら先にユリアと結婚していればよかった』とルフレードが言ってたわ。貴方とは血が繋がっていないから。私は元気でまともな赤ちゃんを産めるわ」


 幸せそうにお腹を撫でる。

 結婚前からの夫の不倫。


 ああ……


 ああ……


 ああ……


 溢れる涙を止める事が出来ない。





 気が付いたら最近開発された魔石汽車に乗っていた。

 手には侯爵家を出る時に持っていた鞄が一つ。

 三日後、私は隣の国に居た。

 馬車で山を越えると1週間かかるが、トンネルだと数時間だ。

 便利になったものだわ。

 その町に着いた時、私はだいぶ落ち着いてきた。


 着いた町は活気にあふれていた。

 これからどうしようかと喫茶店に入って新聞を読んでいたら。

 ちょうど家庭教師の募集が載っていた。

 幸い私は四ヶ国語を読み書きできたし、ピアノや刺繡も得意だったから応募する。

 訪ねた屋敷は大きく、騎士団長の娘さんだった。

 騎士団長の名は エドガー・マダラスと言って若い男性で奥様を早くに亡くされたそうで。

 娘さんの名はライマと言い、今年5歳になる。


「あの……私推薦状は持っていないんです。でも四ヶ国語を読み書き出来ますし、ピアノと刺繡も出来ます」


 あいにく推薦状は持っていなかったが、書斎に置いてある四ヶ国語の本を読み、ピアノを弾いたら採用された。

 家庭教師の他に手紙の翻訳も頼まれることになる。

 何でも実家が商家で外国の注文も受けている。

 手紙の翻訳をこれまでは彼がしていたが、今年騎士団長になった為忙しくなり。

 翻訳の仕事が出来なくなって、翻訳してくれる人を探していたそうだ。

 勿論翻訳代は別に出すそうで。

 私は快く承諾した。

 ライマは父親と同じライトブラウンの髪にエメラルドの瞳の可愛い子供だった。


 ああ……


 私もこんな可愛い子供が欲しかった。

 ライマとは直ぐに仲良くなり十数年が過ぎた。




 ~~~*~~~~*~~~~




 ある日港町にある夫の商家を訪ねた時だった。


「アンナリーゼ」


 ふいに名を呼ばれ振り返る。


「ルフレード・シェラッテン……様?」


 そこに前の夫がいた。

 豊かな金髪は禿げあがり、でっぷりとお腹が出ていたが。

 瞳の色だけは変わらず薄い水色で氷の色だった。

 別人の様になっていたが、夫に間違いなかった。


「お母様、この方はどなた?」


 すっかりレディになった娘が尋ねる。

 15歳になったライマはすっかり美少女になっていた。


「お母様? その子は?」


 彼が眉を顰める。


「お久しぶりですね。私も再婚したのです。シェラッテン様も私の従妹と再婚したのでしたね。おめでとうございます。生憎、私は国を出ておりましたので、お祝いの品も送っておりませんでしたね。最近、従兄の手紙で知りましたわ」


 私はニコニコしながら彼に語りかける。

 ライマは彼に優雅に挨拶すると。


「シェラッテン様、お母様と離縁してくださってありがとうございます。貴方と離婚したから、お母様はこの国に来て下さった。そしてお父様と出会って結婚して。本当に素敵な結婚式でしたのよ。お母様の結婚式には、お母様の御両親も来てくださって。私はこんなに素敵なお母様を持つ事が出来ました。幸せですわ。ああ。流石に結婚式に前の夫を呼ぶ必要はありませんものね。それにあの時期はシェラッテン様の奥様が妊娠していた頃でしたし。結婚式に出席は無理でしたね。ああ、奥様はお母様とは血の繋がらない従姉妹でしたね。お子さんは二人? いえ、三人かしら? ずいぶん大きく成っているんでしょうね。弟達と年が近いですわね。男の子ですか? それとも女の子ですか? (うち)は男の子二人と女の子一人です。本当に男の子ってやんちゃで困っておりますわ。でもそこが可愛いんですけどね。妹はお母様に似て少し人見知りしますが、そこがまた可愛いんですのよ」


「ちょっと待ってくれ。子供? 養子を貰ったのか?」


「あら? 嫌ですわ。お母様が産んだ、正真正銘血の繋がった弟妹ですわよ」


 ライマは何頓珍漢な事を言ってんだこの男は、と言う冷たい視線を向ける。


「アンナリーゼが子供を産んだ? いや彼女は、子供が出来ない体では……」


「あら……嫌ですわ。お母様は三人も私に弟妹を産んでくださったのよ。どの子も可愛いんですのよ」


 ライマの姉馬鹿が炸裂する。


「三人も……」


「あっ‼ お父様♡」


 ライマは手を振る。


 背の高い男が彼に似た双子の男の子を連れて来る。

 その後ろから乳母らしい女が幼女を抱っこしていた。

 その子はアンナリーゼにそっくりで周りに愛嬌を振りまいている。


「ヴィンドリンとカウゼルで今年6歳になるんですの。乳母が抱いているのがイザリスですわ。3歳です。私の自慢の弟妹ですの」


 ライマはうふふと笑う。


「? 彼は?」


 騎士服を着た逞しい男が尋ねる。

 エドガー・マダラス将軍だ。

 護衛の者達もいる。


「お母様の昔の知り合いですわ。それよりも早く予約しているレストランに行きましょう。お父様、私お腹がペコペコです」


 ライマは父親に甘える。


「そうだな。ドレスは気に入ったのがあったかい?」


「どれも素敵なドレスでした。流石王妃様のお気に入りの店です。あれもこれも迷って、時間がかかってしまいました。でもお母様はセンスが良くて良いアドバイスを頂きましたわ」


 ライマはクルリと振り返るとルフレードを見た。


「それではシェラッテン様。御機嫌よう。良い旅を」


 アンナリーゼは軽くルフレードに頭を下げた。

 アンナリーゼの瞳にはもはや、ルフレードは映っていない。

 彼女の瞳は愛する夫と子供達しか見ていなかった。


「あ……アンナリーゼ……」


 ルフレードは手を伸ばす。

 無くした幸せを掴もうとするように。

 だが、彼の前を数人の男がふさぐ。

 護衛の男達だ。


「シェラッテン様……他国でお見苦しい真似はしないように。国にご帰国なさいませ。奥方と愛人が待っておられますよ」


 ぼそりと護衛の騎士が囁く。

 そう彼らは知っている。

 ルフレードがこの国にやって来る前から。

 妻ユリアが4回も流産と死産を繰り返した事も。

 ユリアが彼や彼の両親に責められて自殺した事も。

 3人いる愛人のうち誰も彼の子を産まなかった事も。

 新しく迎えた妻も子供を産めなかった。

 彼の親に孫孫と責め立てられて、うんざりして旅に出たことも。

 アンナリーゼがこの国に居ることは、彼女の従兄から聞いていたのだろう。


「……」


 パタリと彼の手が落ちる。

 彼の代でシェラッテン侯爵家は絶えるだろう。

 狂ったように孫を望む両親、他の男の子供を押しつけて来る愛人、どんどんおかしくなる三番目の妻。

 どうしてこうなった?

 何がいけなかった?




「私と結婚してください」


 エドガーにプロポーズされた時、アンナリーゼは震える声で尋ねた。


「エドガー様、私は子供を産むことができません」


 アンナリーゼは正直に前の夫と子供が出来なかった事を話した。

 エドガー様は優しく微笑むと。


「私はあなたと人生を送りたい」


 と言って下さいました。

 私はプロポーズを受け入れエドガー様と結婚し。

 子供にも恵まれてとても幸せだ。

 ライマも第三王子と婚約した。

 愛する夫と子供達に囲まれて、私は幸せを嚙み締める。






              ~ Fin ~





 ***************************

 2021/7/22 『小説家になろう』 どんC

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     ~ 登場人物紹介 ~


 ★ アンナリーゼ・マダラス 

 元ガスコイン伯爵令嬢。優秀。

 ルフレード・シェラッテン侯爵と18歳の時結婚する。2回の流産と死産をしたため離婚される。

 ガスコイン伯爵家を継いだ従兄の館を訪れるが。

 そこで、血の繋がらない従妹と元夫の不倫を知り思わず館を飛び出す。

 隣の国に向かい、今の夫の娘の家庭教師となりプロポーズされる。

 産めなかった子供の代わりにライマを可愛がる。

 エドガーとの間に子供が三人いる。

 畑より種が悪かったようだ。


 ★ ルフレード・シェラッテン

 アンナリーゼと離婚してユリアと結婚する。

 だが、彼女も子供を産む事は無かった。

 三回結婚して3人愛人がいる。

 いい加減種が悪いと気づけよ。


 ★ ユリア・シェラッテン

 アンナリーゼの血の繋がらない従妹。

 優秀なアンナリーゼを妬んでいた。

 自分なら健康な子供が産めるとルフレードと彼の両親に売り込み結婚する。

 種が悪すぎたので子供が出来なかった。

 ルフレードと彼の両親に責め立てられて首を括るが、世間では病死となっている。


 ★ ドーナル・ガスコイン

 アンナリーゼの従兄。ユリアとルフレードの不倫は知らなかった。

 後でそのことを知りシェラッテン家と距離を置く。

 アンナリーゼとは仲が良かった。

 猟友会でアンナリーゼが隣の国に居ることを漏らしてしまう。

 悪い人では無いが、細やかな気遣いが出来ない。


 ★ エドガー・マダラス

 アンナリーゼが出会った時は副団長だった。

 家は裕福な商会。体の弱かった妻に先立たれ、アンナリーゼと再婚する。

 後に将軍になる。

 アンナリーゼと子供達に囲まれて幸せな家庭を築く。


 ★ ライマ・マダラス

 アンナリーゼの義理の娘。アンナリーゼに懐いている。

 エドガーと前妻の子供。

 弟と妹が出来て喜んでいる。

 第三王子と婚約した。


 ★ ヴィンドリン(6歳)カウゼル(6歳)イザリス(3歳)

 アンナリーゼの子供。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 前書きに胸糞な話とあったのでどうなることかと思いつつ読みましたが、アンナリーゼがちゃんと幸せになるお話で良かったです。 ライマも可愛いですね。(*´▽`*)❀
[一言] 次男、三男あたりなら家を気にせず女遊びできる才能、と言い換えてもいい体質()だな。
[良い点] ハッピーエンドで良かったです [気になる点] 某ヤーナムの住人っぽいネーミング 肉片にならなくて良かった [一言] ありがとう 太陽万歳
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