普通の女の子になりたかった。
恋愛は先に好きになったほうが負けだ。
私は恋をした。
いろんな女の子をもてあそんでいると噂されている彼に興味が湧いた。
昔から私は噂話が嫌いだった。他人の話をするほど余裕はない。
「もしかするとこの人と共通の話題があるかもしれない、向き合ってみよう」と興味が湧く。
八方美人かもしれないが、美人と言っている時点で褒めているじゃないか、、、。
この人を好きにならなければいい。話しかけて噂が本当なのか知ることが出来たらそれでよい。
恋愛は先に好きになったほうが負けだ。
出会いは突然にと言うように、始まるのも突然だった。気づくと返信を待つ可愛い自分がいた。恋する女の子の、この人の中の何人いるか分からないうちの一人になっていた。
悔しいことに、この人は誰にでも優しくする人だった。どんどん沼にはまっていく。周りの「そろそろやめとけ」の忠告も無視。「違う、この人は違う、皆なにも分かっていない。来て欲しい時に来てくれる。声が聞きたい時に電話をしてくれる。いや、違う。自分以外に何人もいるんだ、這い上がらなくては、、、」
だが、それは不可能だった。別の子と遊んでいるのを見たり、友達からの目撃情報を聞いたりする度、羨ましいと思い、その子になりたいと思った私からすれば、沼から這い上がることは、かじかんだ手で針に糸を通すことのように難しかった。
友達の前では笑っていた。失恋?そんなものはしていない、と。
私の音楽のプレイリストは失恋の曲ばかりだ。それらを聞いて一人泣いた。時々思い出を振り返ってさらに泣いた。味覚が無くなり、食べないことが多くなった。どうしたら這い上がれる、
どうしたらキラキラな純粋な恋が出来る、、、
あぁ、そうか、、、どうせこうなるなら自分も相手を騙せばいい、、、
こうして始まった。私のゲームが。
恋愛は先に好きになったほうが負けだ。
この時から「女に生まれたからには可愛くいる」をモットーに、あざとさを勉強した。
ゲームに勝ち続けていくうちに段々自分が分からなくなっていった。
ある日、遊びに誘われた子に「君は天然でやっているのか、わざとなのかが分からない」と言われた。
そんなの自分でも分からない。自然と行動にでてしまう。あざといのなにが悪い。結局、皆あざといのが好きじゃないか、、、。
私はまだゲームの途中だ。白馬に乗った王子様なんて来ない。まだラスボスに会えていない、。
拝啓、私のゲームに参加してくれた勇敢な挑戦者たち。
私の事は忘れてください。
今、隣にいるのが家族でも、友達でも、またはライバルでも、その人たちと笑ってください。
あなたをちゃんと見てくれる人と巡り会えた時、純粋な恋が出来ますように。
また会えない日をお元気で。
追伸:私はとっくにゲームを終わらせたかったです。