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第12話「学校祭」4

 その日の放課後。


「じゃあ、クラス委員長よろしく~~」


 担任の吉田先生は面倒くさそうにクラス委員長の斎藤学さいとうまなぶにバトンを渡した。


 返事をして、後ろの方の席から教壇へスタスタと歩いていく斎藤。

 教壇について、そして黒板に文字を書いた。


 そこに書いてあったのは——『学校祭クラス発表案』。


 そう、待ちに待った学生の季節。

 

 人生で立った三度しかない《《あの日》》の——二度目の再来だった。


「——えぇ、今年は二年生にもなって屋台を解禁されました。去年までの縁日やお化け屋敷、それ以外にもちょっとしたアトラクション、そして解禁された屋台と出店。今日は当日にどんなものをするか、その案を決めていこうかなと思いま~す」


 進級から数か月、試験も終わって一学期の最後に差し掛かったこの時期。7月は学校祭、この学校では通称『豊高祭』が開催される。


 そして今、ホームルームと放課後の時間を使って決めているのはクラス発表で何をするかの案決めである。彼も言っていたが今年からは出店、屋台が解禁され、学校祭という物により拍車がかかっている。


 むしろ来年は受援勉強もあるため、今年のうちに楽しんでおきたいと言った皆の気持ちが浮かれている表情からひしひしと伝わってくる。


「それじゃあ、えっと……どうしようかな? 書記も必要かな……まあ、誰でもいいか、うーんとじゃあ副委員長でいいよね? 西島さん、書いてもらってもいい?」


「あ、うんっ!」


 さすがに委員長一人で回すのは不可能なために書記として助っ人を呼んだのがまさか彼女だとは思わなかったが、この場で何かしでかすわけでもないだろう。


 しかし、前を見ると緊張の汗を滴り落とす前沢の姿があった。その周りでちらちらと彼を見る女子がいる。しかも、あの場にいなかった女子も彼を見ていることから察するにおそらく……風の噂となって知れ渡っているようだ。


「お、おい」


 すると、彼は後ろを向いて目を合わせてきた。


「ん?」


 僕はとぼけるように返事を返す。


「ん? じゃねえよ」


「じゃあなんなんだ?」


「とりあえず——この状況はなんだ?」


 あたりを見渡す動作をする前沢、それにつられてこちらを見ていた女子たちはそそくさと視線を元に戻していく。


 一通り見せて満足したのか、もう一度こちらを振り向いてこう言った。


「——な?」


 ——な? とは??


 と、言ってしまうと机に転がっているシャープペンで右手を刺しかねないと判断し、僕は応えた。


「——ん、だろうな」


 僕は同意を示す。


「だろうな? おい柚人、お前は何を言ってるんだ?」


「何がって、何がだよ?」


「この状況だよ……なんで俺はこんなにも注目されてるっ?」


「だって、告白されてただろ」


「振っただろ」


「——いや、みんなの前でしてないじゃん」


 確かにな、と一瞬だけ肯定してしまったが思い出してみるとそうではなかった。あそこにいたのは通行人の後輩たちと僕と前沢、四葉に、そして西島咲の数少ない人数だけ……だったはず。


 まあでも結論として、ここにいる全員がそれを知らなくてもおかしくはない。


「え、まじ?」


「まじだ」


「うそ……」


「焦り過ぎて周りが見えてなかっただけなんじゃないか? 大体、あんな場所まで引っ張っていくからだろ」


「うるせ、あの時は仕方なかったんだ……お前も知ってるだろ、危ない奴だって」


「まあな、前沢から聞いただけだけどね」


「おい、疑ってるのか?」


「いいやべつに」


「じゃあ——っ!」



「おい、そこォ! 静かにしろっ‼‼」



 その瞬間、クラスの後ろで学級日誌を確認している吉田先生の軽い怒号が教室に響いた。


「「すみませんっ‼‼」」


 そして、クラス中が微笑する中。


 僕はふと思った。


 教壇で皆と一緒に明るく笑っている西島の表情が誰かに似ているような気がした。昔、遠い昔だった気がする。


 僕がまだ幼稚園の時、いつも一緒にいた少女にそっくりの笑顔が彼女と重なって薄っすらと見えてしまった。


「——じゃあ、いろいろ案を決めておこうと思うけど案はないか——————」


「大丈夫かっ、おい、大丈夫かっ?」


 斎藤が話し始めると同時に、前沢はこちらを少しだけ向いて話しかけてくる。思い出に浸っていたが、刹那。僕の目は覚めてしまった。




 

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