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第11話 「我が純愛の妹を前に」 1

 失ったかと思えば、そこには先と同じ情景が浮かんでいて、目の前には頬を林檎のように赤く染め上げた烏目椎奈が呆然と立っていた。


 いや、ん……?

 我ながら今の状況を掴むことが出来ない。僕は今、なんか言ったのか?


 ——返事。


 返事を言ったのか?

 僕には決めている人がいて……それは、四葉で……。


 でも、椎奈の小説を読んで……告白されて……ん、された……?


 しかし、しかしだ。


 そんな想像も記憶巡りもする必要すらないくらいには分かっていた。

 

 とてつもないほどに——————嫌な雰囲気は感じていた。


 死ぬ間際には時間が止まって感じるらしいがきっと、それと同じような感覚を僕は肌身に受けているのだと思う。そんな止まってしまった景色の中には蹲るように俯く四葉も映っていた。


 でもやはり、声が出ない。

 いや、かける言葉がない。


 瞬間的に歪んだ皆の表情が視界を埋め尽くすかのように、カメラで撮った一枚のように固まって僕の方を凝視している。


 四葉のことが好きであることは皆は知らない……だが、そうでなくともその雰囲気を感じ取ってはいたと思う。僕と四葉の関係を知っていたのは詩音先輩だけだったが、もしもそうじゃないなら僕が四葉のことがより好きに見えるはずだ。


 そんな過去の思い出を照らし合わせて驚いた顔をしているのか、それともあまりにめでたくてびっくりしているのか……どっちなのだろうか?


「……え、あ、その」


 そんな静寂を彼女は切り裂いた。


「あっ、ん、うん」


 思わず声が出た。


「わた、私の事、すき……?」


 好き——じゃない。


 ——と否定など僕にはできなかった。


 たとえ、そうじゃなくても。


 事実であり、真実であり、虚偽でもある。


 いや、これからも万に一つたりともそれを否定はできないだろう。軽いはずみで放ってしまった一言はこの事実をとうに作り変えてしまったのだから、ここで騙すような真似はできない。


「あ、あぁ……」


 そこで、肯定でも否定でも捉えられるように変に表情を固めてポリポリと頭を書きながら言った。


「照れてる……」

「ああ、同感だ……共感性羞恥だ」

「それってゆきっちだけじゃないかな?」


 先輩方三人も唖然とした様子だった。


 無理もない、珍しくつっこみをかました崎島花梨を入れなければ恋愛経験なんて皆無な先輩二人だ。ましては部長なんて四葉が————じゃない。


「よ、よ……」


 ……つば。

 この名前が口からは出なった。

 あまりにも不自然で、傷つけてしまうことは僕も分かっている。


 もうどうしようもない。


 そんな結果を前に僕はもう一度、意識を失った。



 さぁ、告白へ。


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