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第十話 「愛を叫ぶのはまだ早い?」 11

—————☆☆


 僕は少々困っていた。


 もうすでに彼女の作った小説は読み終わっているが、おそらく彼女が期待しているのは読み終わった僕の台詞であるのは確実だし、ここで下手なことは言えない。


 僕は最後の一ページをじっくりと眺めながら、息を飲んでいた。


「……っ」


 ちらりと視線を右にずらすと、四葉が読み終わり他の小説を手にしていた。そんな姿を見て正面に座る椎奈はビクンと音を立てる。


 出会った頃の様なぎこちなさとは少し違ったが、明らかに彼女は緊張していた。


 そしてその緊張は僕にも伝染する。


 やばい、どうしよう……本当にどうしよう。完全にテスト明けで油断していた。今日はゆっくりできると思っていたのに、まさか告白をされるなんて、しかも周りにも人がいて、何よりも小説を通しての告白。


 ——僕には射す術がない。


 四葉のことだってあるのに……いや、なんとなく椎奈が僕のこと好いているのはどことなく分かっていたけれども、やっぱり——いざその時が来ると何もできないのが身に染みて分かってしまった。どちらかと言えば収穫はそっちだ。あまりのプレッシャーに「うん」と返事を言いかねない。


 ——でも、この小説を読んでの感想は少々ある。


 あまりにも僕を美化しすぎだというところに、すこし照れはしたがやっぱりこの小説に登場するような白馬の王子様は僕とは違う。


 「愛しのヒーロー」って僕は、アメコミヒーローの何かなのか? そんな大層な人間じゃない。もっとちっぽけで義妹が出来たら少し動じてしまうようなポンコツだぞ、そう考えれば考えるほど彼女が僕に期待していることは重すぎるなとも感じてしまった。


「……」


 無言が続く。


 目の前に書かれた、受け入れてくれますかの言葉……読めば読むほどどうすればいいか分からない。


 四葉だっているのに……。



 そして、数分後。

 皆が読み終えたことを見計らって彼女はその感想を聞きたいと言い出した。


 これを答えなきゃいけないのは僕だ。

 何よりも、答え方も重要だ。


 椎奈も大切だが、僕には決めている人がいる。

 そんな人を前に下手な断り方はできない。


 緊張に手が震える。

 手汗が握ったズボンの生地に染み込んで、気持ち悪さが増幅する。


 しかし言わねばならない。

 さらに数秒経って僕は口を開いた。


「——ありがとう、うれしいと思う。いや嬉しい、確実に絶対に嬉しいよ、すっごく恥ずかしいし、椎奈、君も恥ずかしいんだと思うけど、なんか……その、ありがと……」


 あまりの緊張に言葉がおかしくなった。


 やばい、これでは告白を受け入れてしまう。でも傷つけたくはない、度すればいいんだ、感想は言った。この小説がどれほどまでにいいものなのかは日本語のおかしさで伝わったはずだろう。


「……それ、日本語おかしいよ?」


 やはり、そうだ。いや、でも……。


 まじまじとは見れなかったが、彼女の瞳も潤んでいた。おそらく今まで人に告白なんてしたことはないのだろう。いやまあ僕もないんだけど、緊張しすぎると泣いてしまいそうなのだけは分かる。


 ——振ってしまえば、傷つけてしまう。


「っあはは、バレた」


 この迷いが僕をどんどんと支配する。

 視線を四葉に向けると、彼女はじっと俯いていた。


 ここで奪い返しに行くような人ではないのは分かってはいるが、あまりにも何もしない彼女に少しだけ苛立ちすら感じた。


「バレバレね」


 やばい、会話が止まる。振らなければいけない、でも傷つけたくない。


 迷い、迷い、迷い。


 負のスパイラル、最悪の迷宮のど真ん中で僕は必死にもがいていた。


 ——しかし、そのはずだった。


 「ありがとう……その、えっと…………いいよ」


 刹那、周りの音は聞こえなくなった。

 嵐の前の静けさの如く、音は何も聞こえない。呼吸の音だけが体内で響き、僕の意識を覚醒させていく。


 ——ん、僕今、なんて言った?


「っえ」


 彼女が驚きを見せた。


 そして僕も驚きを見せた。


「っえ」


 椎奈は頬を赤くする。


 まさか、もしかして……いや、もしかしなくても、僕は今……肯定してしまったか?


 それを理解した瞬間、僕は——————意識を失った。


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