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第四話 「友達なんだけどうざい2」

 まあ、クラスの面前で彼女を辱めて殴られては僕も何も言えない。

 そう、彼、前沢は今さっき西島さんに殴られたのだった。


 しかし、彼女の瞳は僕にとっては綺麗に見えた。あの冷酷な瞳を見てもそう思えてしまうのなら、もしかすると、いやもしかしなくてもMなのかもしれない。


 ——まあ、非常に心外だけど。


「お、ま……」


 そして、僕の目の前で机に突っ伏している前沢はとても惨めだった。悲しきもかな、嬉し気もかな。それぞれの感情が渦巻いている。比率に大幅な差があるけれどね。


「ばか」


 僕はそう呟いた時、同時に反対側に座る女子たちが軽蔑の目をさらに強める。これだから男子は、なんて言われてしまうのも自明の理だろう。


――――――――――――――――――――――☆


  

 授業が終わり、僕が席を立つと前沢が声を掛けてきた。


「なあ、お前って四葉さんと兄妹なんだろ?」

「ん? あ、まあそうだが」

「いや、そのな、おうちとかって一緒?」

「う、うん」

「おお、おおおお‼‼」

「な、なんだよ?」

「今日、行かせろ」

「……は?」

「だから、行かせろ」


 10分後。


「ゆ、柚人、なんで?」

「あ、ああ、まあな、友達というかなんと言うかなっ? そのま

「っと、俺は君の兄の——って義兄だっ!?」


 と、僕の言葉を遮った途端。数時間前に見たあの一面の真紅色のお花畑が再び現れた。今度の今度は反対側、つまり左頬に向かって、拳ではなく平手が到達していた。


 刹那。


 射撃音のような乾いた破裂音が校門あたりに響いた。

 このリス、家畜よりもひどい扱いをされる僕の友達第一号は可哀想にも思えるが、こいつ相当のMである。僕の義妹の可愛い一撃など、鬼に豆鉄砲的な戦力差だ。


「……いっててて、左がやばい……まあ、でもこれもありだなっ」

「おまえ……さすがに、引くぞ」

「ゆずと、四葉先帰ります」

「えっ? お、おう」

「ちょっとまてよ~~、そこは俺と一緒に!?」

「ヴヴヴヴヴッ」


 そこにあるのは猛獣に縋る僕の友達。

 まあ、僕から見れば小さすぎて可愛い子猫の様ではあるが、ここはそういう設定にしとかないとMの面子も持たない。


「いやあ、な?」


 顔を両手で抑えながらこちらを向く前沢、その声にビクんと肩を上下させた僕の義妹はなぜだが走って帰っていく。


「四葉!」

「おい、こっち」


 僕の呼びかけなど届いていなく、代わりの返しがこ奴だというのはかなり悲しい。友よりも妹、彼女よりも妹だ。


「なんだ?」

「いやあ、一緒に家に住んでいればなんかあるだろ?」

「べつに、なんもないぞ?」

「白を切るな、俺の目は暗闇すらも理解できる最高級な瞳からできているんだ。そんな嘘、見逃さないぜ」


 ドヤ顔を見せる前沢、一同こう思うだろう。

 殴りたい、と。


「そんな事ねえって」

「まさか! 風呂くらいははいったりするんじゃないのか?」

「ない」

「じゃあ、廊下で押し倒すとか!?」

「ない」

「なら、脱衣所でばったり!?」

「ない」


 まあ、数年前なら同意のもとで裸を見せ合っていただろう。隠さずとも幼馴染だ。一緒にお風呂に入るイベントなど、イベントなんて言えるほどの大層なモノでもない。むしろ、ありすぎて普通だ。幼馴染の第七法則に入る定番中の定番だと思っているくらいだ。


「っち、やっぱり行くぞ。強行突破してでも行って暴いてやる!」

「……はぁ、はいはい、すぐに帰れ」


 そこからは地獄であった。


 押しかけた前沢による強烈なアプローチに四葉も引くことはなく、むしろ対抗に対抗をまつり縫いしたくらいの頑丈さでの死闘が始まり、結局は四葉の圧勝。おかげで、負けを知らない前沢は強行突破を試みようとしてきたのだ。


 災厄的に最悪的に、衝撃的な結果がそこには存在していた。




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[一言] 前沢くんがうざすぎてここでギブアップ
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