第九話 「第一次奪取戦争」 12
「い、いいよ~~」
椎奈の合図で僕たちは部屋に入った。
「これ、掃除したのか、本当に……?」
「さっきより汚い気がします……」
隣で苦笑いをして頭を掻く彼女、本が好きで上品な人なのだろうと思っていたのだがどうやら性格は違うようで、部屋は散らかすタイプだったらしい。人間、見た目で判断しちゃいけないと言われる魂胆を今、知った気がする。
「ま、まあっ勉強には差し支えないでしょう! ささ、やりましょ、私、柚人にたくさん聞きたいところあるか——」
「いや、待て」「待ってください」
刹那、僕と四葉の台詞が重なった。
「「これは僕たち——が綺麗にするっ‼‼」」
その瞬間に僕たちの清潔魂がはち切れんばかりに燃え上がった。
炎の呼吸 奥義 煉獄っ‼‼
おい、パくんなお前(筆者)。俺たちの世界でも流行ってるからって書くなバカ。
————☆
なんてたくましい言葉だっただろうか、一瞬でも彼らが英雄か何かに見えてしまった。凄まじい闘志の裏側にある気持ちの魂胆というか、小説で言う「核」の様な何かが燃え上がったようにも捉えることが出来た。
「……ん」
聞いたそばから私は「すん」と頷くことしかできなかった。
——数分後。
驚く間もない、光の速度——そう言っても過言はないだろう。陸上界の王者「ウサイン・ボルト」でさえも度肝抜かれる速さで部屋はみるみると綺麗になっていった。
「——す、すごい」
思わず、言葉が出てしまうほどだった。
先ほどまではその役目を果たさないでいた本棚が今ではぎゅうぎゅうに本を詰められていて、布団の横に散らばっていた漫画は本棚に入りきらなかったという言い訳をするはずもなく、その横に綺麗に揃えられていた。
「これは、これを使えば綺麗になって——」
「ゆずとはこっち綺麗にして、はやく」
「分かってるって、それなら四葉はこっちだ」
そして何より、机の上に無造作に置かれていた筆記用具、申し訳程度に積んである数学と古典の参考書はダンボールの破片で作られたブックストッパーに止められてスタイリッシュに机に置かれている。
まるで、何か。
芸術作品の様な、オブジェであるかの様な、パブロ・ピカソには及ばない、ダビデ像やミロのヴィーナス像の見えない美といった作品には届かないまでも、私から見れば最高傑作に見えていた。
私の部屋が——
「——芸術作品だ」
そして、部屋自体が凄かったのもそうだが二人のコンビネーションの良さにもびっくりしてしまった。付き合って数十年経ってる夫婦のようなリズムの良さ。熟練妻が時短料理を完成させる、そして夫はあっという間の速度で仕事を片付ける——そんな息の合った動きで芸術品を完成させる。
「よし——!」
「——できました‼」
最後の最後まで、その息の良さは途切れることはなかった。
「言葉が出ません……」
「そんなにかな?」
「はい、もはや感動してます」
「四葉的にも、新記録ですねっ!」
「……ん?」
「いや、ここまで綺麗に片づけたことはなかったので……でも、新しい友達のためなら、ここまでやるのは当然のことですっ」
ででーーん‼‼
「よ、四葉ちゃん……あ、あじがどぉーー‼‼」
なぜ、でしょうか。
私はこんなにも優しく逞しい義妹を手に入れることが出来るかもしれない——そんな風に感じてしまったのでしょうか。
この子のために、彼と付き合わなきゃいけない‼‼ そんな風に、最初はライバルか何かだと思っていた四葉ちゃんでさえも手に入れたいという気持ちが爆発してしまった。
「グハあああ‼‼」
「う、ど、どうしたんですか椎奈さん?」
「んんんんんん——‼‼」
気づけば、私は彼女の小さい谷間の中で慰められていました。
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