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第九話 「第一次奪取戦争」 5


 そして、その夜。

 どういうわけか、本当にどういうわけなのか……。


 僕が短編小説の事と謎に出されてしまった宿題についての愚痴を言いつくした後に、、来週の期末考査に向けての勉強会が決まった。


 それも今週末の土曜日、メンバーは僕と四葉と椎奈の三人。

 

 話の流れでとは言いたくはないが、何故かという疑問は残れど事実そう言う流れで可決されてしまった。


 今日は木曜日、つまりすぐに週末はやってくる。


 どういう心構えで行けばいいのか、それすら掴めていない。

 最後に女子の家に行ったのは何年ぶりだろう……とふと考える。なんとなく、記憶の淵で零れ落ちそうにしている過去を引っ張り出そうとするなら、一番古いのは小学五年生くらいだと思う。


 さすが、どういった顔で女子の家に言ったらいいか……なんて思案しているとノックの音が聞こえた。


 トントントン。


 ドアの震えの弱さからして、美森さんではない。礼儀正しくドアを叩いたのは僕の義妹いもうと、四葉だった。


「どうぞー」


「あ、その」


「どうしたんだ?」


「えっーと……その」


「なんだ?」


「っしゅ、週末の、勉強会で……」


 ドアのそばで頬を赤らめる彼女の用事はそれだった。


 一向に視線を合わせない四葉を見つめるが、それ以上の事柄は出てこない。つまり、聞いてほしいのか。おそらく自分では言いたくないから、うやむやにしているのだろう。


「あ、週末の勉強会のことか、それで、なんかあったのか?」

「それのこ、と、なんだけれど……」



 まったく我ながら成長したことだ。

 視線が泳いでいる四葉に多少の違和感を覚えたが、相槌をして言葉を待つ。

 そして、三秒後。

 唾を飲む四葉は恥ずかしそうにも僕に言った。


「っ……そ、そのっ、明日に四葉ともっ、勉強会しませんかっ!」


 静謐が六畳間ほどの小さな部屋を覆った。

 アニメで見るような「・・・」の間がそこに存在している。

 僕が黙れば黙るほど、四葉は頬の色を紅に変化させる。そんな彼女を目の保養として楽しむのも一興なのかもしれないが、僕はそんなひどいことを考える人間ではない。


「僕と、勉強会?」


「う、うん……」


 瞼が潰れてなくなってしまいそうになるくらい彼女は目を瞑った。おかげで眉間には皺が寄り、自慢の幼馴染……いや義妹いもうとの可愛い顔が台無しであった。


「いい、けど——」


「え、ほんとに!?」


「——でも、それって、普通に……いつでもできないか?」


「っ!」


 ぼ、ぼ、ぼっ!


 頬が赤くなる3コンボがリズムよく決まる。


「じゃ、じゃ、じゃ……!」


「じゃ?」


「そそ、そういうことでええええええ‼‼」


 登場開始から約20秒の出来事。


 ——ただ、そんな風に照れる四葉は凄く可愛かった。


 

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