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第九話 「第一次奪取戦争」


 ここからが、まず一つ目の話の佳境だったと思う。

 四葉と椎奈、二人の取捨選択が信託のように僕の目の前に現れたのだ。




 部室に戻るために廊下を歩いていると、彼女が持つラノベの表紙がすらっと目に入った。


「——それで、そのラノベ面白かった?」


「んっ? あ、ああ~~これね」


 頷いて彼女は本の表紙を確認する。


「なんかね、最高かもしれない」


「でしょ、一般文芸とは違う良さがあるよね、こういうのって」


「そうそう、正直私って純文学そんなに好きじゃないんだ。だってあれって言葉遊びしてる感じだし、ストーリーとかにあんまり入り込めないし、なんか言ってしまえば芸術品の様な気がして……それに比べてこのラノベって言うのは物語ちゃんとしてるし、分かりやすいし、なんと言ってもキャラが可愛い‼‼」


 共感を通り越してもはや同調だった。


 それくらいに椎奈の言っていることに同感できたし、なんと言っても嬉しい。あんまり読んだことない人から自分の好きなジャンルがそんな風に思われるのは、いくら自分がその本の作者ではなくても嬉しいものだ。


「ちなみに、誰が一番好き?」


「誰——か、私はやっぱり主人公かな?」


「確かにかっこいいよね、ピンチになると絶対に強くなってくれるし、なんかヒーロー感が半端ない!」


「そこだけじゃないよ、めっちゃ優しいし人間味あるじゃん? こういう小説の主人公って結構おかしな人多いというか、なんか現実世界にいる感じしないんだよね~~」


「ああ~~確かに、泣いたりしてるときとか弱音を吐くシーンなんかうるっときちゃうよね!」


「私なんかまだ、ファントムバレット編までしか読んでいないのに感動しちゃって……特にアインクラッド編じゃあ泣いちゃって……」


「いいやん! 泣けるってことはそのくらい楽しんでるんだから、僕なんかからしたら羨ましいよ」


 すると彼女は不思議そうな瞳で僕を見つめる。


「柚人は、小説で泣いたことないの?」


「——うん」

 

 言い様に迷った。

 うん。それも間違えではない。


 別に物語に感動していないとかそういう感じじゃないけれど、なんか涙だけは不意に出てきたりしない。笑ったりはしちゃうのにな。


「そうなんだ、あんまり感動したことないの?」


「いやいや、そういう感じじゃないんだ。感動はもちろんするし、ここのシーン辛そうだなとか、かっこいいなとか思ったりはするんだけど、涙だけは出ないんだよね……」


「あれかな、入り込めない的な?」


「うう~~ん……半分正解で半分違う……?」


「なんで疑問形なのよ……」


「いや、自分じゃ分からなくて、椎奈。この感情に名前つけてくれよ!」


「そんなの分からない」


「えぇ、じゃあ結局分からずじまいじゃんか」


 全くもってどうでもいい話である。

 ただ、それにしても部室に戻るまでの間で会話は弾んだ。

 

「先輩たち心配してるかな?」


「し、してないんじゃないかな」


「あはは、あんな感じだもんな……」


 そして僕が扉を開くと——


「————んがっ‼‼」


「おせっえええええええええええええええ‼‼ 連絡あるって言ってんでしょうがぁああああああ‼‼‼」


 ——壮絶な叫び声とともに、僕の額に衝撃が走った。

 


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