第八話 「救世主女たらし伝説」 14
烏目椎奈という女性は凄く内向的だ。
そう自分で理解している。理解というか……従来の、難しい情報を頑張って解いてみて、分かろうとするのとはちょっと違う。
だって、私のそれは目に見えている。
理解せずとも見えているし、図らずとも知っている。
「……はい」
「……分かりました」
「……ありがとうございます」
ぼそぼそとした根暗のような声。
いや、別に根暗だったからいいのだけれど——むしろ自分にはこちら方がしっくり来てしまう。おかしいのか、それすらも分からないけれど、でも確実に言えることは可愛くなんてない陰な女子だということだ。
聞こえる。
五月蠅い……。
耳障りだ、騒音だ。
周りのクラスメイトの声がこれを読んでいる君には想像もできないくらい大きく、そして激しく聞こえるんだ。
先生に何かを頼まれたときは。
「烏目さん、今日中にこの冊子書いといてね」
「……はい」
友達に誘われたときは。
「あの、体育で一緒に組まない? まだいないしょ?」
「……分かりました」
あぶれた女子が私を誘って、私がその誘いを受け入れる。たがいに利点のあるWINWINの関係。それでいいと思っている、私なんてそんな感じでちょうどいいんだ。
「これ拾ったよ、違う?」
「……ありがとうございます」
これはいい、別にいいけど。
嫌やっぱりなんかヤダ。
——じゃなくて、そんな感じで私は暗い。
でも、一週間前にそれが変わった。




