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第八話 「救世主女たらし伝説」 2


「何してるの、四葉?」


「あ、あ——うん、読書」


「じゃなくて、なんでここにいるの? 部活始まってるよ?」


 由愛は不思議そうな表情で言った。


 なぜ、少しの時間部活に行かないだけでここまで思われるのかは四葉には分かりません。だって、あの教室行ったら本あんまり読めないし……。


「ゆずと、を待ってて……」


 そう、四葉が待つ理由はこれだけでした

 

 彼と一緒に行くために、ずっとこうして待っている。来るとは思うけれど、いつかは分からない。不安が募る中もページを捲ってどうにか誤魔化していました。


「柚人?」


「う、うん」


「何してるの、あいつ?」


「えっと——図書委員してて」


「図書委員……っ?」


 どうやら知らないようでした。

 

 まさか、柚人が図書委員をしているわけがない! と言わんばかりの驚き顔で四葉の顔を凝視する彼女。


「よ、よつばも分かんないけど、くじ引きでなっちゃって……やむを得ず、てきな? 感じです、ね」


「いや、なんか、柚人がそんなことするキャラには見えなくて」


「でも、一年生の時文化委員やってましたよ」


「うそ、まじ?」


「確か、文化祭で裏方してたような……気が、するような?」


「どっちよ」


「う~~ん、曖昧……」


「まあ、そんなの別にいいわ。早く部活行きましょ」


「で、でも、ゆずとには待ってるって言いました、し」


 そこで、閑散とした教室で私は読み終えたそれを静かに畳みました。


 薄さに驚きながら、新鮮な手触りには若干の興奮を覚える。やっぱり、四葉は小説が好きなのでしょう。


「ん~~、じゃあ寄ろっか」


「……ん」


 コクっと頷き、それから——。



 ————★


 ——四葉と由愛が入り口付近に立ち尽くしていた。どうやら、僕が女子といるところを見て固まっているようだった。


 僕はそんなにも女々しい奴なのだろうか。そんな余計な不安も不執拗に煽る二人は我ながら最高だと思ってしまう。


「……四葉と由愛?」


 僕がそう呟くと、彼女、佐々木由愛はニマぁと微笑んだかと思えば、まるでテレビに映る道化師のように顔色をすり替えて、僕に向かって……いや、ここにいる四人に向けて、こう言った。


「柚人、あんた、まさか……それは浮気ね?」


 それまでに言っていた、何をしているか知らないような素振りはどうやら嘘のよう。僕にはそうわかる。


 ここにいるのが分かったうえで彼女はそう言ってた。おそらく、隣にいる四葉から色々聞いているのだろう。


 ぞわっとした空気感を肌身で感じて、余計に毛穴が収縮する。恐れに加えて不安と緊張が僕の体中をひしめき合っていた。


 絶望というか、失望というか。


 良からぬ結果は見れば分かる通りに、現実はいつも誤解の嵐で、残酷がはびこるものであり、一生言われたくもない言葉第三位である、僕の女たらし伝説が始まったのもここからであった。

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