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第二話 「二度目の歩み1」

「あら、ゆずくん。おはよう」

「お、はようございます……」

「ゆずくん、敬語はやめて?」

「あ、はい……っと、ん、うん。おはよう、みもりさん」

「あはは、仕方ないわよね。ゆっくりでいいわ、慣れないと思うけどゆっくりで、ね?」

「うん、ありがとう……」

「ええ、じゃあご飯どうぞ」


 僕は四葉の隣へ座った。正面には親父が眼鏡をかけて、新聞を見つめながら珈琲をすすっている。違和感のない、いつも通りな光景である。


 ふと右を向けば、いや右下か。小さな妹、四葉がちょうどバタートーストを咥えていた。


「……ふぁむぅ?」


「っ」


 不覚にも噴き出してしまった。


 元幼馴染の義妹がここまで破壊力のある可愛さの持ち主だというのはなぜだか面白かった。ふぁむぅって全く、面白すぎる。そのまま食べ進めていく彼女を見て、僕も一口。


 そして数分後、僕は席を立つ。

 数秒の差で四葉も席を立った。

 洗面所では二人並んで歯を磨き、顔を洗い、髪を整え、そして互いを見つめる。


「どした?」

「ゆずと。かみぐちゃぐちゃです」

「髪?」

 

 コクコクと頷く小さな妹はうっとりとした顔で僕を見て、子猫のように手をこまねいた。


「あ、うん」


 為すがまま、そのまま身を屈めると彼女は蛇口をひねる。ザザザと水を流したのを手によせて、僕の頭へつけていく。優しい手つきで水を馴染み込ませて、仕上げにブラシをかけていく。


「できました」

「おお、すげえ」


 出来は正解を超えていた。

 四葉にこんな特技があるなんて思ってもいなかったから思わず面食らってしまったが、ニコッと微笑む彼女の顔を見れば嬉しそうだったため心はホッとした。


「——ありがとよ」

「う、うん」


 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~☆


「……よし」


 鏡の前で僕は独りでに呟いた。

 

「教科書は、これと、数学……好きだけど授業はつまらないんだよな。先生がなあ」


 愚痴だ、事実、僕の高校の数学教師の面白みのなさと言えば地獄級だ。理系の僕でも、あれならまだ世界史の授業を受けていた方が楽しいくらいだ。


「まあ、今年は違うかもしれないし、期待はしておくかな」


 コンコン。


「いいぞー」


 ガチャ。


「お、四葉、いくか?」

「うん」


 静かに呟く彼女とともに、僕は同棲生活一か月を越えて慣れてしまった家を巣立ちのように一歩外へ出た。


「じゃあ、行ってきます」

「いってきます」

「二人とも、気を付けてね。頑張ってっ!」


 力強くも柔らかい一言に背中を押されて、彼女の隣を歩いた瞬間だった。


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