第七話 「図書館の少女」3
「じゃあ、今日の放課後から委員会あるからな~~、委員長会は多目的室————で、図書委員は図書室な~~」
ありきたりな授業が終わり、帰りの挨拶ですぐさま仕事が言い渡された僕を前に、この微笑む男は煽るように耳元で囁いた。
「なぁ……、残業頑張ってぇ~~」
こいつ……すぐさま牢屋に頬り投げて餓死でもさせたい気分だ。ニコニコと漫勉の笑みを掲げる彼の顔目がけて渾身の頭突きを放つ、彼の鼻をくしゃくしゃにしようとしたが、それは華麗に交わされてしまう。
「おっ⁉ と、あぶね~~」
「っちぇ」
「ははっ! 朝の予想は大いに外れたな、そんなことしても変わらないんだよっ!」
「てめぇはすんなり交わしやがって」
「まあな、言い訳を考えてきて正解だったな~~、これも準備の差だな!」
「だいたい、確率的には当たらん! じゃんけんよりも低いぞ」
「うーーん、まあ40人じゃんけんよりは高いけどなぁ」
「なめてんのか?」
「もちろん!」
「てめぇ――まじで、ぶっ〇すぞ?」
「ひぃいぃぃいぃーー」
棒読みをする余裕のある前沢を無視することに決め、すぐさま荷物をもって図書室へ向かう。
教室の外で、四葉に待ってるよと言われ、自分の義妹の優しさに感動しつつ、でもやはりあの男の顔が出てきて、階段を上るごとに現実に引き戻されていく。
吐き気のような嫌気とともに、文句は言えない虚しさも隣に添えて図書室へ入っていった。
「……」
さすがは図書室図書委員だった。入るとシーンとしている闇のような雰囲気が一室を包み込んでいる。ここだけは異世界なのではないかと錯覚させるような、教室ではない異様さが鼻に着いた。
五分後、3学年全員が集まり、生徒会図書委員長が始まりの合図を挙げた。
——実に、30分。
一年生は初めてというため、生徒会指導の下の年に数回の会議と学校祭のお手伝いがあると聞かされていて、少々微妙な雰囲気が場を支配したが、その後の上級生の会議した内容は図書室の係決めであった。
貸出窓口の係、新作搬入の係、企画係、新作紹介係、清掃係、図書館の整理整頓係……それぞれ二組ずつで企画係以外は毎週3回の仕事らしい。
どうやら僕は週に三回も図書室へ入り浸らなくてはならないらしい。それが嫌だからと言って企画係には入りたくはないため、もうそれは必然であった。
話し合いの末。
僕が就いたのは整理整頓係だった。
そして何より二人組。
今回は相手がいた。
どうやら僕は2年4組の女子生徒と一緒の作業になるらしい。まあ、ルックスは見るからに文芸少女で、よって変なことを考える必要のないため心の底から安心はしていた。
だが、挨拶を言うとコクっと頷くだけで返答はなかった様子だけを見れば、仲良くなるには、非常に骨が折れそうである。
「じゃあ、よろしく」
「うん……」
委員会が終わった後も図書館に残る少女を横目に僕は四葉の待つ教室へ向かった。
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