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第六話 「真の同志は灯台下暗し」 2

 わわ、わわわわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああよつばぁああああああああああああああああああどうぢよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼‼‼‼‼


 と、過去最大級の悲痛の叫びが心の中で反響して、四葉の恥ずかしさは過去最大になっています。


『なぁ、四葉何してる?』


 隣からゆず……ゆずとの声が聞こえます。

 あんなことをしてしまってはもう、顔なんて向けられない。おかげで、彼が考えていることは何かと考えてしまう。本なんて全く読めた気もしません。


 はぁ……、どうしよ。

 四葉、変態すぎです。


「え? 自分で見ろよ」


 そう、あっちから見てくれさえすれば……。


「いやだ」


 なんて期待は通用しないことは知っています。心を読む機能は人には備わっていないと何時しかの本で読んだ気がしているし、イルカでもないし、それは仕方ない。頭のいい彼なら分かるかもしれない、というのも簡単には言えないのです。


「はぁ……本読んでる」


 こんな、ヤンデレみたいな行動をした四葉を見て、彼はどんなことを思っているのでしょうか。

 

「そうか」


 そんな、気のこもらない一言でした。


「……っ」


 本の端には手汗でにじんだインクが表紙をつたって机にこびり付き、せっかくの本を汚してしまったことに、この時は何も感じてはいませんでした。

 

 授業が終わり、休みになり。

 ポカーンと座りつくしていると半日はあっという間で、いつもなら教科書を読むことに没頭する現代文の授業も今日だけは重みを感じられない。古典の授業も孟子の優れた言葉に共感できず、四葉とゆずとの関係だけが渦巻いていて。


「よっしゃーー、授業終わったぜ柚人」

「ああ、みりゃ分かる」


 二人の声が左耳にすんなりと入ってきて。無意識にゆずとのことを考えてしまう時点でもうだめ……変態です、おまわりさんに行きましょう。


『ここでーーーす! 変態はよつばでええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええす‼‼‼‼』


 と、言えられるほどのメンタルがあれば、彼へ思いを伝えることなんて朝飯前です。


「それで、昼どうする?」

「ああ~、前沢は?」

「質問に質問かよ——っまあ俺は学食行こうかな」

「学食か……うるさいんだよな、あそこ」


 そう、四葉が知っている通りのゆずとはそこで何気なく話していて、コミュ力はあるけど、友達は少なめ。結構静かで細くぼーっとした目をしているのです。

 好きだな……正直言ったらこう。あんなことをしたのもかまってほしいからに決まっています。なんで、あんなにやさしいのでしょうか……まったく。


「いや、あそこならこうは女子を眺められるからな、ぐへへぇ」

「きも、大概にしろよお前は」


 ここならゆずくんを眺められるからな、んへへぇ……。

 ————っあ、やばい、四葉としたことが、あの男と同じレベル。それは嫌です。


「いやいや、お前こそ……って、柚人にはいるもんな別嬪さんが」

「あ、いるのか?」

「同じ家に」


「っ‼‼」


 ううぅ、うぅぅ。

 なんか苦しい、そんな気がします。


「「⁉」」


 ガタっと机を揺らした四葉を見つめる二つの視線、そんな圧に耐えられるわけもなく、小走りで教室を後にしていきました。



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