第2話 わからず屋
謎パートとかしてます、もっと冷静になってから書くべきかもしれない
「...」
休日の晴天下。後ろを走る神野(眼鏡なしver)は死にかけていた。もう呼吸の音すら聞こえない。
だんだん心拍数が上がって限界に達した時、臓器が消えてしまうなんて嘆いていたのも嘘ではないかもしれない。
「もう限界か後輩達」
「声をかける相手が間違いだと気づいてくれました?」
「声をかけてきたのはそちらだろ?」
彼女は俺達を周回遅れにしようとしているところだ。
さすがに周回遅れは嫌だ、という誰しもが感じたことがあるそれの力しか残っていない。
一言話すにも苦しいのに余裕っぽく喋ってみたが、今の状態なんてバレバレだと思う。
足は痛くて高くは上がらない。息も相当あがっていてこのままでは長く持たない。口の渇きなど気にする時間帯もすでに越えた。
こうなったのも昨日が元凶だ。
───
「君たちに少し手を貸してもらいたくてな、まずは走ってくれ」
謎である。理由はあとで聞かせるからとりあえず走れの一点張りだった。
「僕の見立てでは橘はまずまずな才覚の持ち主だ。ぜひ鍛えてやって欲しい。僕は全力でサポートするよ。ではジャージでもドリンクでもとってこよう。あと着替えさせてあげるからね。走った後は体も拭いてあげよう」
「お前も走るんだよ」
「すみません」
余程走りたくなかったみたいだ。こいつ長距離もテストも危ないのか。彼の今後が心配だ、後でしばいてあげよう。
「気になってるんですけど、なんで彼処にいたんですか?」
部室から階段の方を指差して訊いてみた。
「彼処ってあれっぽいと思わんか?」
「あれっぽい?」
「わかります、僕はわかりますよ。ではあれっぽくなるために彼処にいて下さい。僕は帰るので」
いつの間にか荷物を背負った神野が教室を出ようとしていた。
「なるほど今日は用事があったか。前もって連絡しなかった私が悪い。では明日の朝6時に集合だ。私の担任に監督役をしていただくから遅れないように」
彼女は颯爽とソファーから立ち上がると、神野を抜かして出ていった。このソファーに迷わず座る人あんまりいないと思う。
「で、どうする俺達?」
───
結局、謎の恐怖心に逆らえず走っていた。
彼女は運動部なのだろうか、5キロぐらい走ったが余裕そうだ。ていうか彼女のことについて知らなすぎだろ、昨日も名前聞く前に帰ったし。
「そうだな、このあたりまでにしようか。走っても直接的な意味はないしな」
俺を抜かして前方3メールほどの距離で彼女は歩き始めた。
今なんて言ったこの人。走っても意味ないだって、、、この感情であと5キロは余裕そうだ。
「まず、この走った理由を教えて下さい」
走りと怒りによって荒ぶった呼吸をなんとか落ち着かせ、彼女との距離をつめていく。
「体力づくりだ。人を追いかけるのには体力、速度、根性諸々いるからな」
「なぜ体力が欲しいんです?」
「だから相手を驚きで失神させるためにだな、体力は欲しくなると」
彼女は真顔で淡々と話している。
不穏な単語と共に、いまいち噛み合ってない答えしかかえってこない。
「君は察しが悪いようだな。そちらの子はわかっているだろ?」
俺が彼女と肩を並べた時、ふたりで一緒に振り返る。
「...」
大丈夫あいつは死んでいない。燃え尽きて泣いているだけだ。グラウンドに両膝をつき、頭をかかえて号泣していた。惨めすぎる。
「む、君たちふたりとも分かっていなかったのか?失望したぞ」
全く話が見えてこないな、肝心のお仲間は実質死んでるし。
「私は文化祭中、全力でお化け屋敷に入り浸った。君はそんな永遠の繰り返しを行う私のために途中で抜け出し、その仮面を新しくしてくれた。私は感動した。それが今絶望に変わった。さよなら」
元凶はもう少し前だったらしい。
圧倒された俺は、この人の名前もわからずにまた一日を終えた。
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