第1話 そういうノリです
20時更新といいつつ21時に着々と迫っています。すみません。
「い、いつの話ですか?」
「いつだっていいじゃん」
「そういうノリです。恋愛感情とかじゃありませんから」
焦った様子で、顔を赤らめたまま凜華は咲愛に弁解した。咲愛は満面の笑みで俺と凜華を交互に見ている。
表面上は恋人というていだったから、そのような発言があっても自然なはずだ。ノリかどうかと聞かれたら正直謎だが。
「橘はろくに女子と会話も出来ない男だぜ、ないない」
「次はお前の肌を引き裂く」
神野の言ってることは正しいので、あんまり反抗できないのは言わないでおく。
凜華に目を移すと、彼女の顔色が真っ赤から青みがかっていた。せっかく教室では弁解したのに、俺との噂がたてられたら可哀想だ。
噂以前にコンテストに出た時点で後ろから刺されると思っていたが、俺の受け答えを聞いてからは哀れみの視線がさされていた記憶が辛うじてある。
また、一時間をすぎたあたりで限界がきた凜華が、俺と恋愛感情はないことを言ったらしく、凜華自身が気にしないでと話していた。
「なぁ結局なにしにきたんだ?」
会話の途切れを繕うためさっきからはぐらかされていたことをもう一度聞いた。
「それはね、一緒に文化祭回らないかなって」
そういってもらえるのは嬉しいんだがな。
「そんな仲だっけ?」
「いいじゃん別に、参加してくれたお礼だよ」
「じゃぁ奢ってくれるんだな、ありがとう」
「え、奢るのは男の子じゃないの?」
咲愛も蓮も首をかしげている。最悪だこいつら。
「凜華いくぞ、こいつらとは関わりたくない」
「あっはい」
俺は凜華の腕をとってあき教室を飛び出した。
「立場が逆転してしまいました」
「なんか言ったか?」
「いいえ」
凜華の顔色も表情も明るくなり、陰りがなくなっていった。
───
もう日がくれようとしている。どの生徒も片付けを行っていた。階段の踊場から空が染まっていくのがみえる。
地獄から解放されたのは2時過ぎなので、あれから長くは会場を回れなかった。
それでもお化け屋敷や、1日目フィナーレ部分として開催された体育館でのライブなど充分に楽しめた。
歩いている途中で、破れたフランケンシュタインの仮面のやつに捕まって入ったお化け屋敷だが、俺も凜華もホラー耐性があったせいで終始怖がることはなかった。
それどころか、屋敷内でフランケンシュタインは怪物の名前でないとゴーストに説教された。回りでゾンビも聞いてたし、どんな絵面だよ。
「凜華、今日はごめんな。迷惑かけすぎた」
「楽しかったんでプラマイゼロです」
「それなら良かったんだけど」
今日の彼女の笑顔は一段と心にくる。
「そんな自信なさげでしたら、ひとつお願いを聞いてもらいましょうか」
もともと凜華に声をかけられた立場だが、俺の尻拭いをさせてしまったので何かしらお返しすることができれば気が楽だ。
「いつもやってることぐらいなら」
すると凜華は俺と夕陽の間に割み、少しだけ近づいてきた。
「もう少しわたしの彼氏でいてくれませんか?」
「っ...」
そよ風にでも消されそうな凜華の声に俺は何も言えず、階段をかけ下りていく彼女を見ていることしかできなかった。
「そういうノリです」
赤く照らされた彼女はとても眩かった。
少し区切りみたいな部分になってます。次回から新キャラ登場です。
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