第1話 マズい、ヤバい、エグい
登場人物の描写を加えました
受付と言われて2-5組の教室に凜華と共に入ると、そこには顔面蒼白な花崎咲愛が項垂れていた。
「マズい、ヤバい、エグいって凜華~」
俺達の入室にハッとした咲愛は凜華に泣きついてきた。凜華は驚きと戸惑いの表情をみせている。もちろん俺もそういう顔になっているだろう。
「えっと咲愛さん?、どうしたんですか」
次に咲愛が放った言葉に俺は頭を抱えるしかなかった。
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あれから数日がたち文化祭1日目となった。
この数日は会場設備や備品運搬などで休みなしだったが、頼られることに悪い気はしない。結果的に他クラスや部活の様子をみることができた。
件のカップルコンテストだが、開催時間は12時~14時。中央のステージで行われる1日目の目玉イベントになっている。
現在11:55、そろそろステージにあがるアナウンスが流れる頃だ。
「エントリーNo1 清水凜華さん、橘翔さんペア。
エントリーNo2 花崎咲愛さん、花崎 蓮さんペア。登壇して下さーい!!」
ステージ裏にいた俺達に声がかかる。
これは決して二組ずつ呼び出していく手筈になっているからではない。これで参加者は全員なのだ。
というのも受付最終日までの一週間募集していたらしいのだが、募集を告知するのを忘れていたみたいだ。どうりで凜華に話を聞く前までは全く耳に入って来なかったものだ。
なら延長すればいいと提案してみたのだが、学校側とは綿密に協議していたためずらせないと言われた。
『凜華と君が出てくれるならなんとかなるっしょ?』
教室で項垂れていた咲愛が、俺達をみて安心し調子に乗りはじめた時の言葉だ。多分なんとかなりそうだから、わざわざ延長したくないというのが本音だろう。凜華も運営に絡んでいるし、募集期間の延長は、咲愛が嫌がるほど大変そうだったので渋々それを受け入れることにした。
「翔さんいきますよ」
凜華に袖を引かれて我にかえった。
今おかれた状況から目を背けていたことには言い訳させて欲しい。まず俺、凜華、咲愛、そして咲愛の弟で1年の蓮。この4人で2時間も場をもたせなければならない。
さらに俺と凜華は恋人というていで参加している。花崎姉弟は特別枠としてでているので実際の参加者は俺達だけ。まだ咲愛が参加してくれているからましなのかは分からない。
つまり、この二時間で俺の命は絶えることが決定している。現実逃避した俺をだれが責められるだろうか。
仮設的にたてられた薄い板の向こう側へ出ると、そこには大量の男たちが群がっていた。両側を校舎に挟まれた場所にこれでもかと密集している。校舎の中からも覗いてる奴がちらほら見受けられた。
畜生。神野の野郎、最前列に居やがる。
「こっちの告知は抜かりねぇ」
「そう、せめて開催のお知らせはと思って頑張ったんだよ」
咲愛、お前よくもやってくれたな。ヘラヘラしやがって。
なんで参加者たった2組で堂々と告知できたんだ。
しばし瞑目し状況を把握する。まず目を開けていたくない。
俺はフリルつきの黒いワンピースをきている。胸元は大きく露出しており肩にかかる部分も細い。まぁそこまで抵抗はない。みられても問題ない部分だからな。
凜華は大人っぽい紺のロングワンピースをきて、薄く化粧が塗られた笑顔がまぶしい。緊張はあまりしていなそうだ。
花崎姉弟は色ちがいの明るいブラウスにミニスカートを着ている。
いままで特に注目してこなかったが、咲愛は身長は並み程度で無邪気な顔に肩ほどに切られたショートカットヘアー。痩せ身で綺麗というより可愛い系だろう。一方弟の蓮は姉そっくりで、相違点といえば多少髪が短いぐらいだろうか、かつらはつけていない。こうやってみれば大半の人は女子だと思うはずだ。
俺は女装してるのに凜華とかが男装していないのか、テキトーにルールを決めたのがわかる。それとも狙いがあるのか?
インタビュアーもステージにあがり俺達にマイクを向けてくる。エントリー番号順だとこちらの組が最初だろう。
「それではまず凜華さん、彼氏さんのいいところを教えて下さい」
いきなり踏み込んだのをかましてきたな。部室で告白されてからお互い忙しく、恋人らしいことというか会話すらさほどしていない。そのおかげで結構助かったのだが、今は完全に向かい風だ。
「はい、まずはこの綺麗な肌...えっとですね、とにかくかっこいいんです」
具体性がなさすぎる。俺は場をもたせつつ、凜華と付き合ってるように振る舞う必要があるみたいだ。
「そうですか、では彼氏さんの方からは?」
は?普通同じ質問するかよ。この流れだとおかしくないんだろうが...ていうかこのインタビュアーも企画たてた奴だよな、憎たらしくなってきた。
「これ以上ないほど可愛いところです」
あえて可愛いという恥ずかしくて言いたくない単語をつけたし、凜華もこれで通ったし大丈夫だろ。
「えー先輩それだけー?」
横から花崎蓮が俺を殺しにかかってきたのだった。
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凜華の苗字を清水に変更しています(ヒロインの名前がほぼ同じ作品を見つけてしまいました。作家様すみません)