第2話 全校集会の終結
「こいつ...」
中村の手のひらの上だったのか。いったいいつからバレた?
「零先輩、校長先生...告げ口でもしました?」
俺の横に静かにいる二人に向かって声をかける。異様に静かだから後ろめたいことでもしていそうだ。しかし、二人は首を横にふった。
なぜか今、俺が首謀者みたいになってないか?
「翔、多分お二人は何もしてない。俺がお前の様子が変だったから会長に伝えただけだ」
様子が変だからって、全校集会で問題をおこす人はそうそういないはずだぞ。なんで勘づかれることになるんだ。
まず、俺の様子を指摘したのは整列したあとだ。そのまま体育館に並び、生徒はその場で待機となる。伝える暇なんてないに決まっている。
「そこで場違いな議論をしている橘君でよかったかな?、中村君の言う告げ口なんて冗談のうちさ」
楓が議論の内容に口出ししてきた。
「翔さぁ、お前らが厄介事を起こすって知ってたら管理室に見張りでもつけるよ。勿論、体育館の隅に隠れていたそこの先輩にも帰ってもらう」
確かに途中までは好き勝手できていたな。
「そして俺が生徒会の者でも、始めは列に並んでいた」
去年の引き継ぎ時には、生徒会に参加している生徒全員がはじめから端のほうで個別に集合していた記憶がある。
「俺が会長に言ったのは、翔は好きにしていいですよってことだけ」
「そんなのいつ伝えたんだよ」
「俺も最初は自分のクラスにいたんだぜ、会長も同じだ」
そこは理解できが、俺から中村が離れていた時間なんてほぼないと思うし、楓とはクラスが違うため離れている。暗く、五月蝿いあの空間で情報を伝えるなんて不可能に思える。
「ははーん。さては、俺がなんで生徒会補佐になったか分かってないだろ」
中村は顔をのけぞってどや顔をかましていた。正直、彼がなぜ生徒会補佐になったかなど検討もつかない。
「翔さ、さっきお前に似つかわしくない声あげたじゃん。静かにしよーってやつな。あんときの俺の力をみてなかったのか?」
中村が協力してくれたお陰で、素早く異様な静けさをつくることができた。そのこと以外わからない。
「そう、俺の声が最強だったってわけだ」
なるほど、いや分からないぞ。声がいいのは分かったが。
「そういうことだ。生徒会はなにかと読み上げが多い。そこで、中村君の声のよさをかってボクが勧誘した。あの時にボクにだけ声を届けるような技量もあるしね」
話は繋がったが、いまいち腑に落ちないところである。
「好きにしていいって言われても、誰かを押し潰していいもんなんですか?」
何気に、中村は俺のことを自由に扱っても問題ないと判断し、紹介している。
「ボクも肩が凝っていてね。誰かを尻に敷きたかったんだよ」
楓も会話がなりたたないタイプなのか。彼女の発言だけでも整合性がとれてない。
楓はこちらに向けていた視線を体育館全体に向けて、
「すまない、みんなに時間をとらせてしまったね。もうすぐ閉会の時間だ、好きに帰ってくれ」
先生方が言い出す直前でいうのが上手い。カンカンになった先生が息を吸った瞬間に言うもんだから、余計に怒りをためさせてる。普通に無責任な内容だし。
「そこにいる全員ちょっとこい。校長、お前もだ!」
生徒指導部担当とかだった先生から怒鳴られた。当たり前だろうな。校長も零先輩に逆らえない時点で、多くの人になめられていそうだ。いったいどんな弱みでも握られているのだろうか、妙な親近感がわいた。
こうして終えた今日の全校集会は、いつもよりとても短く感じた。説教はくそ長かったけど。
第2話ここまでです
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