第2話 戦闘勃発
痛いセリフがでます、御注意下さい
「ボクは君をとめなきゃならない。君がどんな理由で朽ち果ててしまったか知らないが、全力で成仏させてやるから!」
あれ?この人と打ち合わせしてましたっけ。勘でしかないが、彼女は本気でやってるのだろう。なんとも哀れな生徒会長だ。
「くっ、ここに貴様がいるとは。致し方あるまい...翔、来い!」
いきなり何言うんだ零先輩、戻れ!
今になって思い出した。零先輩の勢いが強すぎてほとんど頭に残っていなかったが、ホラー映画が好きといっていたら他のジャンルも勧められ見たらしい。
この展開と臭いセリフからすぐ分かる。
名前を覚えてもらってるのに若干の嬉しさはあるが、この状況どうしてくれるんだ。
「彼女は翔くんの助けを求めています。わたしのことは大丈夫。早く助けにいってあげて」
凜華がのってきた。流れだけみて、考えなしに喋ってるだろ。
「翔、後ろの敵は俺に任せろ。早く行け!」
中村と気が合うとはこういうところだ。しかし、弄られる当事者になると嫌なもんだな。
『人生で一番言ってみたいセリフ』といえば多くの人がこれを想起するだろう。
「一度言ってみたかったんだよなぁ」
だろうな。彼の考えはだいたい読める。
「くそ、翔がくるまでの時間をかせぐしかないか」
零先輩、マイクに向かって話すのやめて下さい。痛すぎます。このままではますます面倒なことになりそうだ。
こうなったら自棄になるしかない。
「俺は橘翔、ここにいるぞ!」
さっきまで話し声が巻き起こっていた体育館が、俺の発言のタイミングで急に静かになった。そう、俺の言葉で静かになったのではなく、話すタイミングでなぜか静かになりやがった。
「主人公ぽいぞー、頑張れー」
中村うるせぇ。全校生という後ろの敵を相手しろよ。
ほとんどの人から注目を浴びてしまった。仕方ない、ステージにいくしかないか。体育館の照明は消えているので、薄暗い中を慎重に歩いて行く。絶対かっこよくない。
光に照らされた場所を目指す、いつまで暗くしておくつもりなんだ。
体育館の北端に着くと、ステージ横から階段を使って登壇する。中央から飛び乗ろうかと思ったが、誰かに笑われそうだったのでやめた。
「随分悠長な登場じゃないか」
近くで彼女を見たことによりはっきり分かった。生徒会選挙で一番目立ってた人だ。名前は確か羽衣石楓。変わった苗字に芯が強そうな顔立ち、そして演説でのハキハキした物言いは寝ている者全員を起こしていた。かくいう俺もその一人。
「すまない翔、相手が悪かった。ただちに離脱の用意を」
「その必要はありませんよ。彼女とは今に敵ではなくなる」
ピンチ時の脱出手段、相手と手を組もう作戦だ。いい感じに話をもっていって、新生徒会長のお祝い演出だったことにしなければ。
「ボクは貴様らみたいな下道と馴れ合う気はない。さっさと謝罪しこの場を立ち去れ」
この堅物が。本当に素でやってるんだよな。零先輩と関わるとろくな人と会えなそうだ。彼女自身は映画好きな常識人っぽいが。いや、映画好きの度がすぎる。
「零先輩、謝りましょう。ちょっとやりすぎました」
「私はまだ殺りたりない」
「やめて下さい」
彼女は不満そうな顔をしている。その血糊がついた顔でやられると美人でもかわいくない。
「このままだと強行手段に出る」
楓が俺達を睨み付けてきていた。何するんだろう、気になる。
「ぜひとも、御身が使う強行手段とやらを拝見してみたいですね」
しまった。これまで絡んできた人達が全員こんな感じだったから調子にのった。『お前もかよ』みたいな視線が飛んできている。
「光栄に思うがいい、ボクの最強の『尻に敷く』が体験できるんだからな」
いまいちパッとしない必殺技名が聞こえてきたのだった。
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