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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
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足りないのでよろしく!

 逃がしてしまったので、子供達の所に戻る。

 袋から取り出した子供達は、気を失っているが二人とも怪我はなさそうだ。


「う、う~ん……」


 そんな声と共に一番早く目覚めたのは、マグマだ。

 あれだけ弱いと気絶し慣れてるのか、流石に復帰が早い。


「マグマ大丈夫?」


「ああ、平気だ……それよりも、あいつ等は?」


「逃げられちゃった。でも、ちゃんと子供達は救えたよ」


 私が示した子供達を見て、マグマは目を丸くする。


「あれ、誘拐犯だったのかよ。せいぜい引ったくり程度かと思ってたぜ」


 そう言えば、説明してる時間はなかったので、捕まえてほしい理由は伝えていなかった。

 それでも咄嗟に動いてくれるなんて、マグマは優しいな。


「それよりも、ドーナツごめんね」


「ん?……ああ。仕方ないさ」


 私が指し示す先にあるのは誘拐犯に踏まれたクリームドーナツ。

 ぐちゃぐちゃで汚いし、もう食べられそうにない。


「それよりも、あいつ等は結構な手練れだと感じたんだが、お前一人で追い払ったのか?」


「そうだよ。凄いでしょ!」


「お前は強いんだなぁ……

 あんなに強ぇ親に鍛えられたんなら当然か」


 マグマの言う「親」とはクラウスの事だろう。

 このまま親と誤解させておいても良いが、クラウスにバレたら怒られそうだがら一応訂正しておこう。


「一応あれは相方兼、兄ね」


「なんで兄と相方を兼任してるんだよ。漫才でもするのか?」


「それも一回提案したんだけど断られちゃった」


「提案はしたのかよ……」


 あれは会心の出来だったのに、披露する機会がなくて残念だ。


「何にせよ、それだけの実力を持ってるのは凄い事だ。

 俺なんて先輩冒険者なのに、まだまださ」


「確かに弱いもんね」


「ぐっ……」


 弱い事を意外と気にしてるらしいが、それでもマグマにはマグマの強みがある。


「私もまだまだだよ。血が苦手で、魔物の血を見ると力抜けちゃうし。

 それに、冒険者って言うのは弱いから劣ってるって訳じゃないんだよ。それぞれのランクに…………なんだっけ?」


「いや、俺に聞くなよ!

 誰かの受け売りかよ!

 しかも、うろ覚えかよ!」


 格好良く決めようと思ったのに、実に惜しかった。

 でも、まぁ大体は伝えたい事も伝わっただろう。


「とにかく、お互い頑張っていこうねって話!」


「ああ、そうだな」



 ――――――



 そうこうしている内に、子供の一人も目を覚ました。


「あれ?私は……」


「大丈夫か?」


「ひいぃ!」


 起きて直ぐにマグマの強面が覗き込んできたら、誰だって悲鳴をあげる。


「このマグマおじさんは顔怖いけど、優しくて弱いから安心してね。

 私と一緒に、拐われた貴女を救うのを手伝ってくれたの」


「弱いは余計だろ!」


 私の説明で状況を理解したのか、目覚めた女の子は慌てて頭を下げる。


「あの、助けて頂いて、ありがとうございます!」


 見た目からしてまだ六、七歳くらいだろうに、丁寧な態度だ。


「どういたしまして。お名前は?」


「ユウカです」


 ユウカちゃんは幼い事もそうだが、かなり目立つ容姿をしている。

 頭から生えた灰色のケモミミ、間違いなく獣人だ。


「丸い耳……熊かな?」


「いえ、あの……少し違くて――」


「耳から生えてる白い毛が見えないの?

 常識的に考えてコアラでしょ」


 ユウカちゃんの答えを掻っ攫っていったのは、気絶していた筈のもう一人の女の子だ。


「えっと……貴女は――」


「メロディよ。私は、只のメロディ」


 そう答えるメロディは、ユウカちゃんよりも三つ四つ年上に見える。

 綺麗な銀髪に可愛らしい耳。此方は見るからに猫獣人だ。

 その偉そうな態度は、子供だからだろうか。それとも猫だからだろうか。


「それで貴方達、助けてくれたのは感謝しているけれど、この後どうするつもり?」


 メロディの問いに、私とマグマは顔を見合わせる。


「こう言う時って、親御さんの元まで送り届けたりするの?」


「いや、衛兵とか領兵に連絡したりするんじゃ……」


 当然、誘拐犯から子供を救うなんて経験は、私もマグマも初めてだ。

 この後どうすれば良いのかなんてさっぱり分からない。


 どうしようかと議論していると――



 ぐぎゅる~



 可愛らしいお腹の音が鳴り響く。

 ユウカちゃんが顔を真っ赤にしているので、そう言う事だろう。


「じゃあ皆でご飯食べに行こっか」


「でも、私お金持ってなくて……」


「当然、私もよ」


 子供達はお金の事を気にしているが、小さな子供に払わせる程、私もケチじゃない。


「安心して。勿論、奢りだよ――マグマの!」


「俺かよ!」


 私も他人の分まで払える程のお金は渡されていない。

 足りないのだから致し方あるまい。


「よろしくね、先輩☆」

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