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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
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稼ぐのは楽な事じゃない

「一応、お前の冒険者カードを出してくれ」


 これにて一件落着かと思ったが、門番さんはまだ何かあるらしい。

 冒険者カードを出せと言われたクラウスは、多少(いぶか)しみつつも門番さんにカードを渡す。


「先程、作ったばかりだが……何に使うんだ?」


「そのカードに、セイヴィア領兵として魔力を登録しておく。

 もし、お前が犯罪者だと分かった場合は、私が登録した魔力を辿ってお前のカードの場所が全て分かる様になる」


 確かに、樽の中身についてだって、クラウスが嘘ついてたらそれまでだ。

 こんな時の保証にもなるのか。作っておいて良かった、冒険者カード。


「なんかGPSみたいだね」


「G……何だ?」


「それ、後できちんと説明しろよ」


「あぅ!」


 しまった。また、長々と説明させられる。

 GPSとか仕組みも正式名称もよく知らないよ。


「それで……この仕組みを、お前個人が悪用する可能性は無いのか?」


 クラウスも疑り深い。門番さんが悪用する可能性を疑っている様だ。

 確かに悪用すればストーカーとか出来ちゃいそうだけど、この門番さんは大丈夫だろう。


「その可能性は無い。領主レベルの権限が無いと追跡出来ないからな。

 罪を犯すつもりが無いのなら、全く影響はない。安心して良いさ」


 はっはっは!と笑う門番さん、ルールには厳しいが根は愉快な人らしい。


 クラウスのカードへの登録も終わり、検問が無事に済んだ商人さんは、お礼を言いながら去っていった。

 良いことをしてお礼を言われるのは気持ちが良い。



 そして次は私達の番である。

 と言っても大した荷物も持ってない徒歩二人なので、空港の入国審査みたいな質問だけだ。


「それで、二人は外に採集しに行くのかい?」


 先程、クラウスが冒険者カードを作ったばかりと言ったので、目的の見当は付いていたのだろう。


「うん。これから香草を集めに行くんだよ」


「そうかい、気を付けてな。

 香草の生えている草原の辺りになると、()の範囲外だから魔物が出るかもしれないからな」


「鐘?」


 すると丁度、ゴーン!ゴーン!と十一時の()が鳴る。


「これの事さ。これはヒヒイロカネと言う金属で――」


「あ、知ってるよ!魔物除けになるんでしょ」


 うちのシッシーに使われてるのと同じ金属だ。まさか街では魔除けだけでなく時報としても流用しているとは。


「あんたら冒険者登録したばかりなんだろ。

 とにかく魔物には気を付けろよ!」


「はーい」


 門番さんもああ言ってるし、ちゃんと警戒しておこう。

 彼に手を振りながら、私達は草原へと歩き出した。



 ――――――



 草原に着いたので、さっそく香草を集めていく。

 香草と言うだけあって結構臭うので、広い草原でも割りと簡単に見つかる。


「なんかパクチーみたいな匂いだね」


「元々は四代目勇者が、そのパクチーを品種改良して作った物だからな。

 コリアンダー(パクチー)よりも香りが強いと言う意味で《コリ()()()()》と言う名前が付けられた程だ」


 香りが強いので見付けやすいのは良いが、手に匂いがこびりついて結構辛い。

 基本的にパクチーの匂いはそこまで苦手ではないが、コリオーバーは匂いが強すぎる。過ぎたるはなんとやらだ。


「もう帰ろうよ~」


「馬鹿言え、まだ三十分しか経ってないぞ。

 昨日のやる気はどうした。

 さっさと続けろ……『草刈!』」


 クラウスは粉砕魔法と空間魔法の合わせ技かなんかで、触れずに回収しててズルい。


 見つけた物を全て持って帰るのは良くないと言う事で、幾らかはそのまま置いてある為、二人合わせてもまだ八株。

 これでは仕事と言うよりお手伝いレベルだ。稼ぎにもなりはしない。

 だが、この匂いはキツい。せめて鼻栓でもあれば……


「って、あるじゃん!」


 思い出した。私には鼻栓よりも優秀な魔法があった。


『マスク!』


 よ~し、これなら幾らでも探せるぞ!


「匂いで見つけてるんだから、鼻を塞いだらコリオーバーを探せないだろ。諦めろ」


「うぅ……」


 鼻を塞ぐ手段があっても、それを使っちゃいけないとは……

 この依頼、実はなかなかキツい方なのかもしれない。


 仕方なく『マスク』を解除しようとすると、警戒の為に張っていた『感知』に反応がある。


 (くさむら)から音を立てて現れたのは一匹の兎。


(魔物かと思って警戒してたけど、なんだ。可愛い動物じゃないか)


『感知』は動きに反応する。魔物でも動物でも関係ないのだ。

 だから兎を見て動物だと思い、安心して近づこうとすると――


「気を付けろ!ロケットラビットだ」


「ほへ?」


 その瞬間、曲げていた足を一気に伸ばした兎が、猛スピードで私に突っ込んできた。

雑補足

・パクチー

パクチーがタイ語でコリアンダーが英語。

コリアンダーのアンダーはunderではないし、多分そこで区切らない。

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