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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第三章 セイヴィア男爵領編
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身の丈に合わないもの

「えっと……はい、これで御二人の魔力は登録出来ました」


「これって、もしカード失くしたら同じ事しなきゃなの?」


 今回は何とも無かったので恐らく平気だろうが、それでももう一度指先を切るとなると少し不安だ。


「いいえ、今の登録で御二人の魔力と名前は、セットで冒険者連合本部にある魔導具(サーバー)に登録されました。

 ですので、次からは白紙のカードに魔力を込めるだけで大丈夫です」


 ネットで会員登録したからログインするだけみたいな感じか。

 私の魔力自体がパスワードってところかな。


「ですが、再発行となると高額なので紛失しない方が良いですよ」


 うげ、お金かかるのか。

 よく見れば募集のペーパーにも《初回登録()無料》って書いてあった。

 まぁ、このカードも普通の紙じゃないし、初回が無料なだけ凄いのだろう。



「このカードも知覚魔法の魔導具か。

 これだけの数を、よく用意出来るな」


「ええ。これらは全て冒険者連合本部の専門部署で作られています。

 運営に欠かせない物なので、連合本部では知覚魔法使いってだけで高給ですよ」


「だってよクラウス」


「近くに寄ったら訪ねてみるか」


 クラウスも結構乗り気だ。

 やはりお金は生きていく上で必要な物たがらね。



 ―――クラウス視点―――



 正直に言えば、別に金など無くても暮らすのは可能だ。


 マジックバッグに貯めてある食料だけで、少なくとも五十年分はある。

 だがそれでも金を稼ごうとしているのは、アカリを甘やかさない為と、もう一つは文化の研究の為だ。


 物価や品質、品物の種類からは、その地域や国の特色が見えてくる。

 それに仕事のノウハウや社会的立場、資料には載っていない様な細かい事は体験してみなければ分からない。

 金は人類文化を研究する上で必要不可欠だ。


 追われる身でなければ、長期でもやってみたい仕事は幾つもあるのだが、それは贅沢な望みだろう。



「それでは最後に、冒険者ランクを決めましょうか」


 冒険者ランク、正に冒険者の社会的地位を表す分かりやすい指標なのだろう。


「あれ?一番下のランクから始めるんじゃないの?」


「冒険者ランクはA~Fまでの六段階ありますが、Dランクまでは他の冒険者からの推薦などで飛び級が可能です。

 勿論、実力が伴っていれば試験を受けてCやBランクに直ぐに上がる事も()()可能です」


 成る程、実力のある者を低い地位で縛り続ける必要は無いからな。

 ()()と言ったのは、自分は実力があると勘違いした者が試験を受けて落ちる例が多かったりするのだろう。


「御二人は各ランクに求められている力がどの様なものか御存知ですか?」


「えっと、確かAランクが《強力な魔物の討伐》で……」


「Bランクは《強力な魔物への対応》だ。

 それにCランクは《対人を想定した護衛と殲滅》だったかな。

 ここまではヴェルに聞いたが、それ以下のランクの話は聞いてないな」


「Dランクは《弱い魔物の討伐》。

 そして、Eランクは《魔物への危険意識》です。

 FランクはEにも満たない子供だったり、単に身分証明書を作りに来た人がなるものですね」


 成る程。冒険者にならずに冒険者カードを作りに来る者も居るのか。

 冒険者連合とは、余程信頼のある組織の様だ。



 ―――明視点―――



「御二人とも《不屈の闘志》からはDランクで推薦されてますね。

 盗賊の件では大活躍だったそうで。

 そんな方が冒険者として活動してくれるのは、ギルドとしては大歓迎ですよ」


 大活躍と言われてパッと思い浮かぶのは、緋による蹂躙だ。

 だが緋が使った力だって私の物だ。私の活躍としたって良いだろう。

 それに私だって『プロテクテクト』張ったり『エアガン』で邪魔したり色々と頑張っていた。

 うん、大丈夫。私も十分に活躍していた。


「問題が無ければ、このままDランクで登録しますが大丈夫ですか?」


「大丈夫!」

「駄目だ!」


 だが、クラウスが()()()止めに入る。

 次に言うことも、だいたい想像出来る。



「こいつは命を奪った事がない」



「……成る程、わかりました

 ではアカリさんはEランクと言う事でよろしいですね?」


「ああ」


 クラウスの言葉でギルマスも直ぐに分かったのだろう、話がポンポンと進んで行ってしまう。

 駄目だ。このままでは()()



「クラウスだけランク高いのズルい!」



 口から飛び出した言葉は、言いたかった事とは()()()()

 だが例え言い直しても、大人達にとっては同じ様に感じる事だろう。


「高ランクを望む人は多いですし、その向上心は素晴らしいです。

 しかし、身の丈に合わないランクは命を落とす事に繋がります」


 ギルマスとして冒険者として、多くの経験から来てるであろうその言葉は重い。


「今回は我慢しろ。ヴェルの言ってた事を忘れたか?」


 そう言えばヴェルも「ランクが低くても劣ってる訳じゃない」と言っていた。

 そらに最初に見せてもらったギルマスのカードも、Bランクだった。


「……わかった」


 私が納得した事で私はEランク、クラウスはDランク冒険者に決定した。



 きっとこれが正しいのだろう。

 たがそれでも、相方と肩を並べられないのは、なんだかとても悲しかった。

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