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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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大人気ない

「うわぁ……」


 野次馬の輪の()から飛び出したクラウス。

 思い切り顔を殴られて吹き飛ばされるリリさん。

 これは流石に決着だろう。


 今回の戦いの感想を述べるのであれば――


「大人気ない」


 この一言に尽きる。


 戦い方が卑怯?そんな事が言いたいのではない。

 白衣で隠して()()()()を使った事だ。


「おい、嬢ちゃん。最後にあいつが使ったの何だ?」


「あー……手品?」


「いや、流石にそれは……

 わかった、秘密なんだな。ならこれ以上詮索しねぇよ」


 ヴェルが引いてくれて助かった。

 空気魔法も珍しいが、空間魔法だって十分に珍しい。

 だが空気魔法と違い、その性質は独特過ぎる。

 その為、他の魔法だと言う誤魔化しは難しい。

 だからこそ、この様に聞かれると困るのだ。


 言わなければ良いだけなのだが、だとしても疑問を持たれるのは面倒くさい。

 気分はさながら、パパラッチに追われる海外スター。

 そう考えたら嫌な気は……するよ。やっぱするよ。



 何が一番の問題って、空間魔法を使()()()()()()()()()のだ。

 龍人の頑丈さでゴリ押して殴り続ければ、先に体力が切れるのはリリさんの方だっただろう。

 なのに、態々『収納』していただろう水入り瓶と『ゲート』を使ったのは、単に()()()()()()からだろう。



「要望通り快勝してきたぞ」


「そんな要望してないし!やり過ぎ!」


 私は模擬戦なんか少しも望んでいない。

 只、護衛をしたかっただけだ。


 クラウスも、やりすぎた事は理解しているのか、口笛で誤魔化す。

 止めろ!普通に上手な演奏をするな!



 ―――ピート視点―――


 倒れているリリの所へ、僕は急いで向かう。


「まさか、ここまで強いとは。

 侮っていたのは此方だった様だね」


「アイツが――痛っ!」


 リリは喋ろうとするが、殴られた所が痛む様だ。


「身体魔法で痛みを軽減しても駄目かい?」


 リリは静かに首を縦に振る。

 これは、骨が砕けているかもしれない。


「ヴェル、治療を頼む!」


「おいおい、そこまでの大怪我かよ」


 慌てたヴェルと、クラウス兄妹が駆けてくる。


「女の子の顔を思い切りぶん殴るのは無神経過ぎ!

 リリさんに謝って!」


「すまん。そんな怪我をさせるつもりは無かったんだが……」


「止めて下さい。戦いを挑んだのは此方です。

 軽率な謝罪は寧ろ侮辱に値します」


 この兄妹は、冒険者の()()に対して、あまりに理解がない。少し強めに注意しておいた方が良いだろう。

 これ以上リリを怒らせて、拗れる様な事になったら依頼主に迷惑がかかる。


「ヴェル、早く『リペア』を」


 僕の指示に従い、ヴェルはリリの頬に手を当てる。



『骨よ、元通り組上がれ――リペア!』



「ありがとよ、ヴェル。ピートも」


 喋れる様になったリリも、随分と落ち着いている。


「今の……修繕魔法か」


 クラウスはヴェルの魔法を一発で見抜いた様だ。

 修繕魔法の知名度は低い。彼は博識なのだろう。

 だが――



「修繕魔法って?」


「粉砕魔法の逆で、繋がりが絶たれた固体を元に戻す魔法だ」


「よく知ってるな、兄ちゃん。

 まぁ、完全に元通りとはいかないから、応急処置みたいな物さ」


「そのままでは軽い衝撃でも崩れかねない。

 身体魔法で血流を操作して、治癒を早めるのが良いだろう」


「おお、その通りだよ。

 兄ちゃんは本当に物識りだな」


「ほえ~」



 (アカリちゃん)の方は普通の子供にしか見えない。

 クラウスの実力ならば、彼女を守りきる自信があるのかもしれないが、盗賊に関しては不確定要素が多い。


「クラウス、本当にアカリちゃんを連れて行くのかい?」


 僕の真剣な問いに対して、クラウスは茶化す様に笑う。


「こいつなら縛って置いていっても、意地だけで付いてくるさ」


「茶化さないでくれ、盗賊が出るんだぞ!」


 僕の怒りを見て、クラウスは今度こそ真剣に答える。


「意外だろうが、こいつはお前が思ってる程に無力じゃない。

 場合によっちゃ戦力にすらなるさ。

 それに、最悪の場合は逃がす事だって出来る」


「私に任せてよ!

 守るのは得意なんだから」


 自信満々なアカリには悪いが、正直なところ戦力になると言う点は全く信用出来ない。

 だが、()()()()と言うクラウスの言葉。それは、リリとの戦いで最後に使用した魔法を指すのだろう。


(なら、あれは予め入れ換わっていた幻影魔法の類いではなく、本当に()()()()に移動した?

 そんな魔法、()()以外に使える者が居るなんて……)


「おい、ピート。考えすぎてリリみたくなってるぞ

 兄ちゃんって戦力が増えるんだ。嬢ちゃん一人を背負うくらい問題ねぇって」


「誰の眉間が皺だらけだって?」


「お、落ち着け。そこまでは言ってねぇよ」


「プッ」


 いつも通りのヴェルとリリの遣り取りに、思わず吹き出してしまう。

 ()()が引退してから初めての依頼だったから、僕も肩に力を入れすぎてたのかもしれない。


「そうだね……二人とも、短い旅だけど、よろしくね」


「ああ」

「うん!」

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