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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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参考にならない

「筋は悪くないが、イメージが甘いな。

 所々に塊が残っている」


「はい、その辺が上手くいかなくて……」


「数多の繋がりを()()()とするから難しいんだ。

 小さな粒同士を反発させ()()()()()様にすれば、かなり負担を減らせる」


「成る程、やってみます!」


 粉砕魔法の訓練は上手く言ってる様で何よりだ。

 やはり明ちゃんイチオシ教師のクラウスの腕に間違いはない。

 それは良いのだが――


「私も何か手伝いを――」


「いや、お前は人に教える知識も余力も無いからな。

 一人で訓練なり新しい魔法の開発なりしてろ」


 除け者である。

 確かに、明ちゃんは粉砕魔法については何も知らないし、まだ一人では魔物と戦えない。

 結局いつも通り。しょんぼりしょぼしょぼだ。



 ――――――



 同じことばかり繰り返す訓練は退屈だ。

 それならば、新しい魔法を開発するとしよう。


 結局クラウス頼りになった昨日のウールウルフ戦を振り返って、足りなかった点を考えてみる。


 まぁ、なんと言っても一番の問題は、結構自信作だった『エアガン』が効かなかった事だ。

 ウールウルフには相性が悪かったとは言え、相性が存在する以上は様々な攻撃手段を用意せねば。

 アカリちゃんはゲームでも、一属性縛りでスリルを楽しむ様なタイプじゃない。


 ただ攻撃となると、なかなか思い付かない。

 今まで戦ってきた魔物やらの中で、参考になる様な攻撃は……


 普通の野生狼、飛び掛かり。

 フールウルフ、飛び掛かり。

 ウールウルフ、飛び掛かり。


「参考にならない!」


 なんで、どいつもこいつも一辺倒なんだよ!

 いや、分かりやすかったからこそ、怪我しなくて済んだのはあるけれども!

 それにしたって、せめて『エアガン』と『エアショットガン』くらいのバリエーションはあれよ!



 鼻をぶつけた事くらいだが、流石にあれから魔法は思い浮かばないし

 ……あ!あったじゃないか他にも!私がダメージ受けた事件!


 あの日、狼やフールウルフに襲われる大元の原因。

 それはシッシーが五月蝿かった事だ。

 あのときに自分で思ったんじゃないか。まるで()()()()だと。


 音は空気の振動。

 それならば、私の得意分野だ。


 イメージするのは洞窟の反響。



『クラップ!』


 空気の下準備は完了!

 後は、手を叩いて音を鳴らすだけ。


(手から放たれる振動を大きく、大きく、大きく!

 ……ってあれ?このままじゃ私も喰らうのでは?)


 (てのひら)が触れ合う直前で気付き、咄嗟に固めた空気で耳を覆う。



 少し強く叩き過ぎたので掌が痛い。


 繋がった掌からは何も聞こえない。

 当然だ。自分で耳を塞いだのだから。


(でも、これだと威力がわからないなぁ)


 威力は確認しておきたい。

 だが知り合いに喰らってもらうのも忍びない。



 さてどうしたものか、と考えていると――



「なんだ今の音は!?」


「魔物だ!魔物に違いない!」


「うわーん!お母さーん!」


 周囲の家や畑から村人が大勢出てきて大騒ぎ。

 中には軽いパニックを起こしてる子供まで居る。


「そ、そんなに五月蝿かったかなぁ……」


「馬鹿うるせぇよ!!!」


 耳を抑えてるクラウスからも叱られてしまった。


 確かに威力はあるが、周囲への影響が大き過ぎる。

 これは基本的に封印かなぁ……



 ――――――



 午後からミソラちゃんは村のお手伝いだそうだ。

 粉砕魔法で収穫した小麦を製粉するらしい。


 それも手伝うよ(クラウスが)と言ったのだが、流石にそこまで手伝わせると報酬を支払わなけば対外的マズいと言われた。

 難しい事はわからないが、お金がないミソラ親子に負担をかける訳にはいかないので、私は自由時間となった。


「自由時間じゃねぇよ。俺が見ててやるから鍛練の続きだ」


 鬼軍曹である。



『プロト!』


 サイズや形の制御も、随分と思い通りになってきた。

 目視できない壁なので、感覚だけでイメージ通りに形成するのは苦労したものだ。


「……前から気になってたんだが、なんで『プロト』って名前なんだ?」


 クラウスは外国語も詳しいと思っていたが、プロトの意味は知らない様だ。

 そういえば(ガン)も知らなかったし、知らないのは単語の難しさとは関係ない理由なんだろうな。


「ならば教えてしんぜよう。

 ()()()ってのはね、()()って意味の言葉なんだよ」


 私のドヤ顔解説に対して、クラウスは暫し間を置いてから告げる。



「それ、()()()()()じゃね?」



「……」


()()()じゃ、()()()()とかそんな意味だろ」




「……そうだよ。()()為の第一段階、つまり()()()()魔法と言う事で『プロト』と名付けたんだよ」


「いや、絶対に咄嗟に考えたよな!

 それにしては真面(まとも)な理由に聞こえるけども!」


 嘘から出た()()

 もうこうなったら、この場で『プロト』の次形態作ってやる。


 プロトの特徴は空気の壁を()()すると言うことだ。

 つまり、それを防御に利用してる間は、当然その場から動けない。


 これには利点もあるが、囲まれると打開出来ずにジリ貧になると言う欠点もある。

 だから今回創るのは、対象と一緒に移動する防御壁。


 もちろん名前はプロテクトに……いや、動くプロテクトなんだから――



『プロ()()()()ト!』



「本当に創りやがった……」


「凄いでしょ!

 魔法をかけた相手と一緒に動くんだよ!」


「……歩く訳じゃないんだからテクテクは違くないか?」


 響きが可愛くて良いじゃないか。

 明ちゃんは格好良いものも好きだが、同じくらい可愛いものだって好きなのだ。


「この魔法は懸命に飼い主を追い掛ける犬みたいな物なの。

 ……そう考えたら攻撃を受けさせるの可哀想になってきた……」


「おいおい……」


 愛着が湧きすぎるのも困りものである。

雑補足

・嘘から出た真面

嘘から出た真をもじった明の造語。

咄嗟の誤魔化しが、思ったよりも筋が通ってる様。

上っ面一枚剥がされる前に、嘘を真にしちゃえばOK。

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