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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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ガンばらないと

 ゴウンゴウン


 水を回す魔導具の音が響く。

 やぁ洗濯機君、数日ぶりだね。


「まぁ、その……なんだ。気分は良くなったか?」


「お陰様で随分と……」


 あの時、全てを察して咄嗟に避けたクラウスは、私の後ろに回って(しばら)く背中を擦ってくれた。

 私のセーラー服は汚れたので現在洗濯中だ。


「悪かったな。正直ここまで耐性が無いとは思わなかった」


「馴れてくしかないんでしょ?

 次は吐かない様に頑張るからさ」


 私は腕に力瘤を作ってみせる。

 確かにグロテスクなのは苦手だが、今回のは他にも要因が重なったから起きた不幸な事故だ。

 食事の直後に動き回った後だったり、フールウルフがCMで見たゾンビ映画の動きに似ていたりと。

 だから、もうあんな無様はさらさない。


 カーン!


 シッシーも応援してくれている様だ。

 さっきは直ぐに起こしてあげられなくて、ごめんね。


 カーン!



「その姿勢は良いが、そんな急には変われないだろう」


 最近クラウスには助けてもらってばかりなので、このままではいけない。

 明ちゃんは、人を助ける側の人間でありたいのだ。


 そしてクラウスは忘れているが、明ちゃんは日々進歩する生き物なのだ。


「既に一つは対策思い付いてるよ」


 天才の私に抜かりはない。

 気分が悪くなった大きな原因の一つは()()だ。


 だからイメージするのは、鼻と口を覆い、呼吸に必要なものだけを通す魔法。


 名付けて――



『マスク!』



「これで臭いは平気になったよ!」


「成る程『()()()』か。

 確かに嗅上皮を覆えばそれだけで済むのは良いな」


 きゅーじょーひ?

 何言ってるかわからないけど、明ちゃんの魔法に感心してるみたいだからヨシ!


 カーン!


「あとは、出血させずに相手に攻撃する様な魔法も作っておけ」


 これも非常に重要だ。正直、私は異世界を甘く見ていた。

 最低限の攻撃手段はないと一生クラウスの足手まといだ。

 それに、安全に迎撃出来る様になれば戦闘中の緊張感も軽減するだろう。


「空気を固めてぶつける様なのとか?」


「そうだな。その辺りが無難だろう」


 そうなると空気大砲とかが良いかなぁ……

 只、トラざえもん(国民的アニメ)秘匿道具(超科学兵器)そのままは流石に格好悪い。

 それに、弾が大きすぎると使い勝手もイマイチだ。



(血が出ない、小さい弾、空気、格好いい………閃いた!)



 私は親指を立て、伸ばした人差し指を真っ直ぐ標的の木に向ける。


『エアガン!』


 私の指先から放たれた空気の弾によって、樹皮の一部が弾け飛ぶ。

 これなら、鎧を着てる様な相手じゃなければ十分戦えるだろう。


「威力はまだ要調整だけど、良い感じでしょ?」


「あ、あぁ。

 ……幾つか疑問があるんだが、聞いても良いか?」


 何故クラウスは、そんなに微妙な顔をしているのだろう。


 ……そうか!魔法世界の住人だからエアガンを知らないのか。

 それならば仕方ない。私が教えてあげるとするか。


「なんでも聞きたまえよ」


「まず、人差し指は照準を合わせてるんだよな?」


「勿論」


 何も知らないクラウス君でも、これは理解出来た様だ。

 まぁクラウスに足りないのは多少の知識だけだからね。

 賢いクラウスならこの程度を理解するのは造作もないのだろう。


「じゃあ、何故撃った後で、その人差し指を上向けるんだ?」


「……撃った反動?」


「反動あるのか?」


「いや、実際には無いけど……あれやらないと()()()()が無いって言うか……

 う~ん……言うなれば、必然?」


 指で作った銃は、発射後に銃身が上に向くものだ。

 それはもう人間の本能の一つと言っても過言ではないだろう。

 例え指マシンガンだったとしても、最後の一発の後には必ず銃身は上に向く筈だ。


 エア煙草でも口から離したら息を吐く。

 エアパソコンでもエンターキーを押したら右手は「ッターン!」と跳ね上げる。


 そうこれは()()としか言い様の無い動作なのだ。


「……突っ込んでも無駄そうだから、次の質問な。

 さっきも言った通り人差し指の理由はわかるんだが、何故親指も上がる?」


 これは、非常に難しい質問だ。

 生憎、私は銃の構造については詳しくない。

 マシンガンやライフル等の大まかな区分はなんとなく知っている程度だ。

 だが、相方(漫才系刑事ドラマ)でも神山くん(主人公の相方)が銃を構えた時に、立てた親指で何かしていた。

 つまり、この親指には何か大事な役割があるのだ。


 だから、私の説明はこうだ。


「多分、ここに何かがある……」


「ねぇよ何も。あるのは謎だよ」


 銃を知らないクラウスに伝わらないのはもどかしい。

 もう最初から説明するとしよう。


「もともと銃って言う金属の弾を撃ち出す兵器があって、エアガンはそれを真似たものなの」


「成る程、金属の代わりに空気を撃ち出すからエアガンって事か」


「いや、それは違う」


「違うのかよ!」


 エアガンで撃つのはビービー弾だ。

 ……そう言えば、あれは何故ビービー弾と言うのだろうか。

 もしかしたら、当たると痛くてビービー泣き出すからビービー弾なのかもしれない。


 ここにはビービーと言うよりギャーギャー五月蝿(うるさ)い人も居るが……


「今の話から推測したら普通そう思うだろうよ!

 だとしたら何だよ!エアガンから飛び出す弾はいったい何なんだよ!」

毎回毎回、明ちゃんが謎を謎のまま放置し過ぎるので、今回から大雑把な補足を書いておきます。


・嗅上皮

鼻の中にある細胞。

匂いを感じとるセンサーの様なもの。


・撃鉄

明ちゃんの親指が求めていた何か。

拳銃を撃つ前には、これを起こす動作が必要。

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