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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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一つしかない個性

 逃亡生活も今日で三日目。

 空から見る景色は良いのだが、何処を見渡しても、木、林、森!

 要するに領域と大差が無いと言うことだ。

 昼寝をすると落ちてしまうので、本当に時間を持て余している。


「ねぇクラウス~暇~」


「……じゃあ地上の木々の合間を縫って進むか?

 退屈しないだろ?」


「それは絶対嫌!」


 私が何故こんなにも怯えてるかと言えば、以前に高速移動で木に服を引っ掛けて、破いてしまった事があるからだ。

 領域に居る時は、服が破れてもテイラーに頼めば直せた。

 だが、今は逃亡中。頼れる相手は全くのゼロ。

 人間の国の正確な場所もわからない今は、着る服を減らす訳にはいかない。


「ここで遊びを提供して、それに疲れて寝られても困る。

 暇なら今晩泊まる洞窟でも探してろ」


「むぅ……」


「仕方ねぇな……」


 溜め息を吐くと、クラウスは咳払いをして声を()()()()()


「あー、アカリ隊員に告ぐ!

 至急、我々の拠点となる場所を捜索せよ!

 良いか、これは最重要任務である。心してかかれ!」


 これは、上官命令(ごっこ遊び)だ!

 クラウスから持ち掛けてかれるなんて珍しい。


「了解であります!」


 私は嬉しくなって、敬礼をする。今は『蜃気動』で透明化してるので誰にも見てもらえないが……

 こう言うのは気持ちが大事だからね。


 よーし、任務を遂行(楽しくロール)するぞ~!



 ――――――



「クラウス隊長!

 該当エリアに洞窟らしき物は発見出来ませんでした!」


「そうか、ご苦労。

 ……それにしても、ここまで見つからないか」


 あれから一時間。

 定期的に報告している内容も、ほぼ同一のものだ。

 辺りも暗くなってきて、そろそろ目視での捜索は厳しくなってきた。


「隊長、如何致しましょう?」


「そうだな……崖ならあるか?」


「それならば左舷に確認しております!」


「よし、なら今日はそこにしよう」


 目標の崖に接近すると、並行して発動していた魔法を切り『フライ』で優雅に降り立つ。

 本当はスーパーヒーロー着地をしたいのだが、あれは膝を痛めると誰かが言っていたので止めておくとしよう。


 見上げた崖は遠くから確認した時よりも遥かに迫力がある。

 登ろうとしてもスタミナゲージが足りなくなりそうだ。


「それで、この崖でどうするの?

 もしかして「洞窟が無いなら掘れば良いじゃない」的な話?」


 クラウスが使えるのは空間魔法と熱魔法、私が使えるのは空気魔法。

 どれもこれも自由度が高くて優秀な魔法だが、流石に崖相手には分が悪い。

 なので、今のは実に明ちゃんらしさ満点のジョークであったのだが――


「その通りだ」


「え?」


 クラウスは不敵に笑うと、崖に手を当てて魔法を唱える


『開通!』


 するとクラウスが触れていた近くの壁が、突然砂になった様に崩れ落ち何処かに消えていく。

 後に残ったのは直径三メートル程の広さで、奥まで続いている空洞。

 人はそれを洞窟と呼ぶ。


「え、今何したの?」


「粉砕魔法で一定の範囲を砂に換え、後は空間魔法で砂を別の場所に――」


「いや、待てぃ!

 クラウスの魔法適性って空間魔法と熱魔法だけじゃないの!?」


 さらっと驚愕の事実を言われたのだけれども。

 粉砕魔法って何さね。

 今まで一度も使った事なかったでしょうに。


「違うぞ。昨日使った『分析』だって知覚魔法だし、高速移動には身体魔法だって使ってる。他にも……」


「待って待って待って!

 え?適性ってそんなに沢山あるものなの?」


「普通はそうだ。その点で言えば、お前はかなり珍しいな。

 適性が一つしか無いなんて、他にはフールウルフくらいなもんだぞ」


「フ、フール……」


 恐らくそれは魔物の名前だろう。

 どう考えても、ろくな魔物じゃない。

 フール(愚者)て……もう少しマシな名前あげてよ。


「まぁ、フールウルフが使うのは身体魔法だがな。

 只でさえ珍しい空気魔法使いで、且つ他の魔法の適性が無い生き物なんて、この世界でお前だけだろうな」


 あまり嬉しくない太鼓判を押されてしまった。

 フールウルフ、お互い強く生きていこうぜ……

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