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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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お前の方じゃないか?

第一章の忘れ物。

 長かった一日も漸く終わる。

 途中一回寝()()()とは言え、早起きして動き回って頭も使ったのだ。

 それはもうグッスリと眠れそうだ。


 気持ちよく伸びをして、いざ布団に入ろうとすると、クラウスと視線が合った。

 それだけならば直ぐに視線を外して「おやすみなさい」コース一直線なのだが、何故かクラウスは此方を凝視してくる。


 取り敢えず胸を庇う様に、手を交差させて体を捻る。


「何見てるの」


「やめろ、別にお前の体に興味は――いや、あるのか」


「あるの!?」


 あの研究一筋で生物の本能すら残ってなさそうなクラウスの台詞とは思えない。

 今日一番の衝撃と言っても過言ではない。


 だが、これも仕方のない事か。

 明ちゃんがあまりにも魅力的過ぎるのがいけないのだ。

 あぁ、明ちゃんってば罪な女……


 自分の頬に手を当て、天を仰ぎ見る。

 ……ちょっと洞窟だったので天は見えないけれども。

 月明かりで照らされたりしてたら美少女力増し増しだっただろうから、ある意味これで良かったのかもしれない。


「欲しいんだよ」



「――お前のデータが」


「はい、解散。お疲れ様でしたー」


 いや、もう流石にわかってたよ。

 第一クラウスにそんな事言われても、別にときめかないし。

 それにクラウスが本気で誰かにそんな甘ったるい台詞吐いてたら、状態異常(バッドステータス)疑うわ。

 ……この世界にサキュバスとか居たりしないよね?大丈夫だよね?

 まぁそれは今考えても仕方ない。



「……で、そのデータは何に必要なの?」


 律儀に許可を求めたって事は、私が嫌がるのを理解しているのだろう。

 それでも尚聞くってことは、きっと必要なことなのだろうけど、流石に理由は気になる。



「お前が、本当に人間か調べてみようと思ってな」



 今日一番の衝撃が軽く更新された。



 ――――――



「……え?クラウスは私を人間じゃないと思ってる訳?」


「あぁ」


 その淀みのない返事に私の困惑は増すばかり。


(ど、どういう事だ?

 私はれっきとした人間だ。

 両親が実は地球人に成り済ました宇宙人でした!ってパターンであれば私は知る由も無いが、クラウスも突然そんな妄言を吐く訳もないし……)


「なんでそう思ったの?」


「切欠は、今日のお前の言葉だ」


 私の言葉?私そんな人間離れした様な事言ったっけ?


「言っただろ。「思い込みの可能性あるんじゃないの?」ってな」


 それは結界を抜ける時に確かに私が言った言葉だ。

 だが、それがどうして人間じゃないって話に繋がるのか、


「まず神託ってのは()()や映像なんかではなく、もっと直接的に頭で理解出来る様に送られてくるんだ。

 じゃなきゃ五歳の子供が「貴方はこんな魔法使えますよ~」って言われたって理解できず忘れる可能性もある。

 それに『龍と人との絆の証』なんて聞いて、それが竜人を指す言葉だって一発でわかるか?」


 確かに、私も女神様の言葉はわかりにくいなぁと思っていた。

 寧ろわかりにくいと思ったが故に言葉の穴を見つけたのだ。

 ん?……()()の穴?


「……え、待って、じゃあ「竜人だけが通れると()()()()()()」と私が()()()()()()って事?」


「そうなるな」


 物凄くややこしいが、要するに()()()()をしていたのは私一人だけだったと言う事だ。

 竜人しか通れないと言う部分にはきちんと()()があったのだから。

 私の推理御披露目タイムはクラウスからすれば、私が見当違いな事を言ってるだけの時間だった訳だ。


「だから、あの時は言葉通り試してみる()()のつもりだったんだが、本当に通れてしまった」


 クラウスからすれば嬉しい誤算だったって事か。


「……あれ?それなら、どうして私達は結界を通れたの?」


「お前、一度刺されて死んだって言ったよな?」


「え?……あぁ、うん」


 突然話が飛んだので、理解するのに時間がかかった。

 恐らくこれも関係ある話なのだろう。


「でも傷や汚れの類いは一切なく、この世界に来たんだよな?」


「そうだけど、その辺は女神様パワーで軽く治したんじゃない?」


「治したのか()()()()()のかは今はどうでも良い。

 重要なのは、()()()()()()()()「女神様パワー」なるものが存在するって事だ」


 成る程……私にもなんとなく話の流れがわかってきたぞ。



「お前は確かにニホンに暮らす普通の人間として()()()()()


 だが、私は一度()()()


「この世界に来たお前は以前と()()()()()姿をしていた」


 だが、一度死んだのだから確かに生まれ()()()()



「だからお前は()()()()()()()――」


「――私は以前と同じく()()()()()()()()()と」



 クラウスが導きだした答えは、今日なんて小さな枠には収まらない、生きてきた中で一番の衝撃であった。




「お前、今は()()なんじゃないか?」

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