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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第二章 フルート村編
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腐らない袋

「おかわり!」


 カーン!


 元気一杯な私と鹿威しの声が響き渡る。

 ……鹿威しって種族名で呼び続けるのもなんだな。


「よし、今からお前はシッシーと呼ぼう」


 カーン!!


「遂に名前まで……」


 クラウスは複雑な表情だ。命名権が欲しかったのかな?

 でもそれはそれとして、カレーを装う動作は止まらない所が実にクラウスらしい。



 二杯目でもカレーは相変わらず美味しい。

 今日は沢山疲れたので、ここから更に二杯くらいはいけそうだ。


 こんな洞窟の中でも美味しい料理が食べられる。

 温度や鮮度まで記録して保存しておけるマジックバッグに改めて感謝の意を示そう。


「それにしても、カレーなんていつの間に作ってたの?」


 これは本当にちょっとした雑談だった。

 普段クラウスとずっと一緒ではないとは言え、同じ家に住んでるのだ。

 料理の匂いに敏感な明ちゃんが、カレーを作ってる匂いに気付かないなんて不思議だなと感じた。只それだけだったのだが……



「これは……十年前に作った奴だな」



 ん?十年……?


 私の聞き間違えかな?

 二日目とかそういう次元じゃない時間の単位が聞こえた気がするんだけど……


「昔から、いざというときに備えて色んな物をマジックバッグに備蓄しているからな。

 カレーもその一つだ」


 それは素直に尊敬するし、実際助かってるんだけど……

 十年前のカレーって言われると、なんだかなぁ



 ヴィンテージものって言えば、まだ美味しそう?


 カーン……


 ……駄目か。まぁでも問題なく美味しいんだから、それで良しとするか。



「だが、まさか本当に備蓄品を使う日が来るとは。

 主に天災への備えだったたんだが……あぁ、そう言えばお前は()()美少女だったな」


()()!天才美少女!

 誰が美しきカラミティよ!

 誰が華麗なるディザスターよ!

 誰が咲き誇るカタストロフィーよ!」


「なんで今だけ語彙力ぶっ飛んでんだよ。

 周囲に多大な影響を及ぼすって意味なら、間違いじゃないと思うんだがな」


 カーン!


 そこ!オチが着いたみたいに鳴らないの!



 ――――――



 なんだかんだで結局五杯も平らげてしまった。

 レトロだろうがヴィンテージだろうが、美味しいものは美味しいのだ。


(……そう言えば体重増えたんだった)


 不安になってお腹を触るが……まぁ許容範囲だろう。

 今日は頭も体もかなり使ったし。

 それに沢山食べる事は大事だ。何故なら明ちゃんはまだまだ成長期なのだからね!


 カーン!


 何?男子ならともかく女子の成長期はとっくに終わってるんじゃないかって?

 ……その程度個人差の範囲よ!

 それに、血は全身に巡ってるんだから、お腹と二の腕にしか栄養が行かない筈がないのよ!

 心臓があるんだから胸にだって届くでしょ!


 カーン……


 何?その「ポジティブなのは良いことですね……」みたいな反応。

 そんな五月蝿いシッシーは消音モードにしてやる!


 カ、カーン!


 まぁ、普通にご飯食べ終わったので消すだけなんですけども。


 カーン!



「……鹿威しとじゃれてる奴なんて初めてみたわ」


「シッシーね」


「あ、はい」


 もう考える事を放棄したかの様に、マジックバッグに鍋をしまうクラウス。


 ん?そう言えば――


「そのマジックバッグに使われてる『収納』って空間魔法なんだよね?」


「あぁそうだ。これも俺が作った魔導具だからな」


「ならなんで直接『収納』しないの?」


 普段クラウスは何を取り出すにもマジックバッグからだ。

 魔導具は確かに便利だが、正直自分で使える魔法は自分で使った方が早い。


「そう言えば説明してなかったな。

 そうだな……まぁ、要するに()()だよ」


「圧縮?」


「一時的に記録する『探知』とかと違って『収納』は半永久的に記録が残り続けるんだ。

 記録を置いておくのにもを多少負担がかかるからな。

 あまり沢山の物を入れてると、他の魔法を使う余裕なんて無くなるからな」


 う~ん……スマホとかも、ストレージが一杯だと動作にも影響及ぼすとか聞いた事あるな。

 それと似たような物と解釈すれば良さそうだ。


「大半の物はマジックバッグに入れておいて、俺はそのマジックバッグを『収納』する。

 俺は小さなの負担だけで大量の物を持ち運べるって寸法だ」


 今度は……USBを読み込むだけ?クラウドに保存?……う~ん、なんかしっくりこない。

 まぁ、その方が楽なんだなって解ればそれで良いか。

 詳しい原理なんか知らなくても生きていける。


 材料は知らなくても、お肉は食えるって奴だね。

 ……あのインスタント食品のお肉は、確か大豆だったんだっけか。


「因みにマジックバッグの中にも、滅多に使わない物を詰めた別のマジックバッグが入ってたりする。

 こう言うのマトリョーシカって言うんだったか?」


 勇者は外国の民芸品まで伝えているのか。

 これ赤べこも普通に通じそうだな……要らないけど。



「便利だから良いけど、なんか狡いね空間魔法」


「空間魔法使いで魔導具も作れる俺の特権だ。

 ……それに空気魔法も大概な性能してるぞ?」


 考えてみれば、火を起こして水を作り、電気を蓄え風を吹かす。

 空を飛べるし壁にも出来て、挙げ句は幻影に透明化。


 ……うん。空気魔法使いで良かった。

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