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空気が読めない空気魔法使い  作者: 西獅子氏
第一章 龍の領域編
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同じじゃない

「気安く触らないで頂けるかしら?」


「……急にどうしたのだ巫女殿?」


 私のツンとした態度に、クラウディアは引き攣った笑みを浮かべて問いかける。

 もしかしたら怒らせたかもしれない。


「うはっ!団長に楯突くなんて大物っすよこれは」


「……只の馬鹿」


 サラとウルの反応を見るに、里の人からすると相当不味い事だったらしい。

 それにしても「只の馬鹿」って……巫女への態度それで良いの?

 タツヤ君は割りと敬意持って接してくれてたと思うんだけどな。空気魔法使いへの意識も人に因るのかもしれない。



「ごめん遊ばせ。

 けれど、(わたくし)は女神より遣わされた巫女です。

 それにしては無礼な振る舞いが多いのではなくって?」


 だが例え怒らせていても、もうこの手に賭けるしかない。

 論理的な説得を放棄して我が儘を叶える!


(名付けて!お嬢様の命令は、ぜった~い大作戦!)


 さて、三人の反応はと言うと――


「これが本性と言う訳か……」


「……面倒臭い」


「そうっすか?私は結構好きっすよ」


 サラにだけは何故か気に入られた。

 正直演じてる私ですら、割りと相手にしたくないと思う程なのに。


 取り敢えず、相手の目的を再確認する。


「それで?貴女方は(わたくし)を里に招きたいと?」


「ああそうだ。巫女殿が里に来れば――」



「嫌ですわ」



 私の即答に再び固まるクラウディア。


「……何?」


(わたくし)を招待するんでしたら、手土産の一つでも持参するのが当然ですわ。なのに、貴女は手ぶら。

 これでは、(わたくし)を軽んじてる様に感じますわ」


「巫女殿、我々は――」


「しかしですわ!どうしても歓迎会を開きたいと言うのなら仕方ありません。参加して差し上げましょう。

 それこそが高貴なる者の務め(ノブレスオブリージュ)ですから」


 相手に反論を許さず捲し立てる。

 これは会話ではない。一方的な要求なのだ!



「……わかった。では巫女殿を歓迎する宴を開かせよう」


 よし!なんとかなったみたいだ。

 流石は演技派女優の明ちゃんだね。


「それでは、一度クラウスの家へ戻って相応しい服装に着替えてきますわ」


「服ならテイラーの所の方が良いんじゃないっすか?」


 サラの的確な指摘に固まる私。


(こやつ、阿呆キャラっぽい喋り方して意外と鋭い!)


「お、お黙り!(わたくし)には(わたくし)のやり方がごさいますのよ!

 供も必要ありませんわ!」


 こうなったらゴリ押しじゃあ~。

 押し通す。押し通すったら押し通す!


「もう好きにしろ。

 ……再びここに迎えに来れば良いか?」


「そうですわね。五時間後くらいで良いかしら?」


「長くないか?」


 龍人の飛行速度を考えたら、そう感じてもおかしくない。


「あら、レディの身嗜みに時間がかかるのは当然ですわ。

 当然ご理解頂けますわよね?」


 本当は自転車での往復時間を考えたギリギリだが、それを説明すると「なら送っていく」と言われかねないので言えない。


「……我慢だ……相手は世間知らずでも巫女……」


「あの団長が耐えてるっす!」


「……珍しい」


 普段はそんなに短気なのか。

 この人と普段接してるタツヤ君は大変そうだな。


「……ふぅ、また五時間後に会おう」


 クラウディアはそれだけ言うと、クラウスと同じ赤い龍になって飛び立つ。

 ウルとサラもそれに続き、残されたのは私一人だ。


「上手くいったけど時間がない。急いで戻らなきゃ」


 私は猛スピードで自転車を漕ぎ出した。



 ―――クラウス視点―――


 シャワーを止め、タオルで髪を拭く。

 随分と頭は冷えた。


「……物理的な冷却も効くもんだな」


 あいつを追い出してから、もうすぐ三時間が経つ。

 きっともうテイラーの家に着いているだろう。


 事情を聞いたテイラーは俺に怒るだろうか、それともあいつを叱るだろうか。

 ……わからないな。そういえばテイラーとこんなに話す様になったのもあいつが来てからだしな。

 どういった人物かはお互い知っていたが、表面上の遣り取りだけだった。

 それが今じゃ頼る相手だもんな。これもあいつのお陰か。


 いつもの作業着と白衣を着ながら考える。


 それにしても、何故あいつはあんなに怒ったんだろうか。

 健康管理は必要な事で、それを俺が行ってたんだから、感謝こそされど怒られる理由など無い。

 しかも「蜥蜴」なんて龍人に対して最大級の侮辱の言葉を使う程――


「いや、違う。

 あいつがそんな事を知ってる筈がないのか」


 あいつは龍人じゃない、そんな当たり前の事が抜けていた。

 互いの常識は違う、だからこそメモまで持たせていたと言うのに。

 ……記憶力には自信があったんだがな。



「……何が不味かったんだ?」


 あいつが怒った理由を考えようと思えば幾らかは思い付くが、俺には理解できないものばかりだ。

 明確に()()と言える発言は思い当たらない。


「なんにせよ俺は必要以上に怒り過ぎた。一度話し合わなきゃな」


 早速テイラーの家に『ゲート』を開こうとした瞬間、玄関の扉が叩かれる音が聞こえた。


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